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【ろっくおん!】第30回 Part.1―今月のレポート盤:THE KANE GANG 『The Bad And Lowdown World Of The Kane Gang』

ロック好きの大学生が集まって放課後タイムにダラダラおしゃべり!  専攻科目よりも皆さんロック史の研究に夢中なようですね!!

 吹きすさぶ乾いた北風に冬の到来を感じるある日の放課後。ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。留年の噂も流れる4年生の子安が、今日も入り浸っているようですが……。

 

【今月のレポート盤】

THE KANE GANG The Bad And Lowdown World Of The Kane Gang Kitchenware/Cherry Red(1985)

 

逸見朝彦「おはようございます! おや、先輩方、良いところに居合わせましたね!」

鮫洲 哲「〈おや〉じゃねえよ! 部室にいて何が悪いんだっつうの!」

逸見「いやいや、そういうことじゃなくて、実は部員の皆さんに紹介したいバンドがい……」

子安翔平「逸見は相も変わらず元気やな~。俺なんか、寒くて就活する気も起こらんで」

鮫洲「先輩、それはマジでシャレにならないっすよ!」

子安「冗談や! 冬じゃなくてもやる気にならんからな、ガハハ!」

逸見「ちょっと、僕の話を遮って勝手に盛り上がらないでください。このCD、超マイナーっぽいんで先輩方も知らないと思いますけど、最高なんですよ!」

子安ケイン・ギャングが85年に出したデビュー作『The Bad And Lowdown World Of The Kane Gang』やないか」

鮫洲スタイル・カウンシルシンプリー・レッドと並ぶ、80年代UKブルーアイド・ソウルの3人組っしょ!」

逸見「ズコーッ! 知っていたんですね」

鮫洲「おいおい、ロッ研をなめんなよ、1年坊主!」

子安「まあ、オリジナル・アルバム2枚はずっと廃盤やったし、スタカンらに比べると知名度も低いから、世間的にはほぼ忘れられていたグループやけどな」

鮫洲「俺はプリファブ・スプラウト経由で知ったんすよ。同じキッチンウェアに所属し、互いのデビュー前から親しく交流していたって小耳に挿んで!」

子安「メンバーのデヴィッド・ブリューイズは、初期のプリファブ作品にも参加していたはずやで……って、何や逸見、必死にスマホと睨めっこして」

【参考動画】デヴィッド・ブリューイズが関わったプリファブ・スプラウトの84年作『Swoon』収録曲
“Cruel” パフォーマンス映像

 

逸見「い、いえ、雑色さんからLINEが入ったので……。と、ところで、いくら先輩方でも解散後のメンバーの動向までは追ってないですよね?」

鮫洲「そこまでは知らねえっつうの」

逸見「えっへん! デヴィッドは2004年に弟のピートと共にフィールド・ミュージックを結成して……」

【参考動画】フィールド・ミュージックの2007年作『Tones Of Town』収録曲“In Context”

 

子安「それってカイザー・チーフスフューチャーヘッズの面々も絡んでいたバンドやないか!」

逸見「そうです。しかもデヴィッドはスクール・オブ・ランゲージ名義でソロ活動もしていて、6年ぶりの新作も今年出したばかりです」

【参考動画】スクール・オブ・ランゲージの2014年作『Old Fears』収録曲“Dress Up”

 

鮫洲「おお! それタワレコで買ったぞ!」

逸見「驚くのはまだ早いです。(スマホをチラ見しながら)ヴォーカル担当だったマーティン・ブラマーはプロデューサーやソングライターとして活躍中で、マーク・オーウェンジョシュ・クムラの作品にも関わっているんです」

【参考動画】マーティン・ブラマーが関わったジョシュ・クムラの2013年作
『Good Things Come To Those Who Don't Wait』収録曲“The Answer”

 

鮫洲「へ~、スゲエな。てか、逸見の付け焼刃っぽい説明が妙に腹立つ!」

子安「すっかり過去の人たちやと思っていたけど、第一線で活躍しているんやな! 久々にケイン・ギャングを聴きたくなってきたわ」

逸見「じゃあ、このCDを流しましょう! ついでにお茶も煎れますね!」

子安「うは~、最新リマスターの3枚組とは気合いの入ったリイシュー盤やな。流石はチェリー・レッド、イイ仕事するで。デモやリミックスから成るDisc-2に、84年の未発表ライヴ音源を丸ごと収録したDisc-3って……凄すぎるやん!」

鮫洲「改めて聴くと、サザン・ソウルを英国流に昇華したアーバンな雰囲気が、ヤバイくらいカッコイイっすね」

子安「つうか、シンセを多用したブラコン風のサウンドに、ほんのりネオアコ的なポップネスを加味したようなこの感じって、いまの時代にジャストやんか!」

逸見「程良く黒くて、キラキラした音の雰囲気は、カインドネスブラッド・オレンジが好きならまったく違和感なく聴けますよね。あ、これはネットを参考にした意見じゃないですよ」

鮫洲「つうことは、やっぱりさっきスマホで必死に調べてたな!?」

逸見「あ、あれは雑色さんからのLINEですってば!」

子安「いや、雑色は逸見のことをウザイって言ってたから、そりゃ嘘やな」

逸見「え、影でそんなことを……」

 30年も前の音楽が新鮮に聴けるというのは素敵なことですが、やはり流行とは繰り返すものなのでしょうね。それはさておき、子安が留年を繰り返さないことを願います。【つづく】

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