古今東西、音楽のプレスリリースには〈ヴァラエティーに富んだ〉や〈多彩な背景がある〉といった多様性に関する表現をよく見かける。彼らもそうだ。

 「このバンドの音楽の多様性というのは、メンバーのミュージシャンとしての、そして人間としての多様性を反映したものなんだ。要するに、多様性こそが僕たちの本質だ、と。逆に、僕たちが何かひとつのことだけをやろうとしたら、それは嘘になってしまう」。

 音楽を型にハメようとせず、自分たちのフォーマットのなかで可能な限りのことを試し、実験の余地を残している。

 「7人いればいくらでも可能性はあるし、人々が僕たちの音楽をどう呼ぼうとも——それは〈生のダブステップ〉でも〈ベース・ミュージックを軸とするソウル・ミュージック〉でも何だっていいんだけど——そうやって僕たち7人を結びつける何らかのコアになるアイデアがいくつもあるんだ」。

SUBMOTION ORCHESTRA Alium Counter/BEAT(2014)

 2009年にUKのリーズで結成された7人組、サブモーション・オーケストラが、『Finest Hour』『Fragments』に続く、2年ぶりのサード・アルバム『Alium』を完成させた。今回、彼らはニンジャ・チューン傘下のカウンターへと移籍。作曲も手掛けるドラマーのトミー・エヴァンスが応えてくれた。

 「このバンドを始めた頃の僕たちは〈もしもニンジャ・チューンみたいなレーベルと契約できたら〉みたいな調子だったからね(笑)。こうしてファミリーの一部になれたのは素晴らしいよ」。となると、今後はファミリーとのコラボ実現も期待できそうだ。「フィーチャリングやコラボの側面は前進しているんだろうし、今後自分たちとしてももっと真剣に取り組んでいきたいと思う。乞うご期待ってところだよ」。

 メンバーはリーズで音楽のレッスンを受け、多くのバンドに参加。トミーは「一種の万能選手ってところだね」というラックスピンことドン・ハワードとセッションを重ねていく。ジェイムズ・ブレイクも参考にしたという、〈教会で生演奏のダブステップを〉との依頼から行われたライヴが結成のキッカケになった話は、いまや語り草。

 「僕たちはまだバンドとしての可能性を探っている過程にあるんじゃないかな。だから、自分たち自身をある意味まだ発展途上のバンドとして捉えているっていう。まだ完成したユニットじゃない。それは間違いないね」。

 しっとりとオーガニックに響き渡り、壮大な世界が広がる彼らの新しい『Alium』は、繊細に解釈されたジャズやダブステップと呼応しつつ、ダウンテンポにあるような豊かな創造性を感じさせるほか、そこには多彩なアイデアが封じ込められている。女性シンガー、ルビー・ウッドのヴォーカルがより一層の美しさを引き出してくれる。

 「僕たちのバンドはアコースティックとエレクトロニック、その境界線をうまくブレさせていると思う。エレクトロニックな要素もあるけど、ライヴではインプロヴィゼーションをかなり混ぜているし、そこからおもしろいミクスチャーが生まれているんじゃないかな」。

 彼らの生業は楽器を演奏すること。バンドという形態を維持するのも自然なことであり、演奏すること自体に喜びを感じているようだ。またそこからバンドに新たな閃きが誕生するという。

 「根本の要素といえば、やはりジャズになる。というのも、全員ジャズを学んできたしね。だから、僕たちにとってもっとも深い理解がある音楽はジャズだね。僕たちの演奏の仕方にしても、やっぱりジャズが拠りどころになっているわけで……ただ、おもしろいのは、結果として生まれた音楽はジャズとは似ても似つかない。あるいは、ジャズと並んで僕たちが影響されたUKサウンドシステム・ダブともまったく違って聴こえるという。そこは興味深いよ」。

 

 

サブモーション・オーケストラ

ルビー・ウッド(ヴォーカル)、ドン・ハワード(シンセサイザー)、トミー・エヴァンス(ドラムス)、ダニー・テンプルマン(パーカッション)、タズ・モディ(キーボード)、ボビー・ベトー(トランペット)、クリス・ハーグリーヴス(ベース)から成るリーズの7人組。2009年に活動をスタートし、2010年にランキングから初の音源集『Submotion EP』をリリースする。エクセプショナルと契約して2011年にファースト・アルバム『Finest Hour』、翌年に2作目『Fragments』をそれぞれ発表。並行して〈グラストンベリー〉〈べスティヴァル〉などのフェスにも出演を果たした。今年に入ってカウンターに移籍し、ニュー・アルバム『Alium』(Counter/BEAT)をリリースする。