漫画『惡の華』で脚光を浴びた押見修造の初期作品が初の映画化。毛が薄いことに悩む男子と毛深いことに悩む女子が「剃毛」を通じて倒錯した恋愛の扉を開いてしまう。この感じは塩田明彦監督の傑作『月光の囁き』に似ているが本作との大きな違いは男女関係にサドマゾが成立していない点。女子の毛を剃るという未知の領域に足を踏み込んだことで精神的にも暴走してしまうのは、あくまで男子。「剃毛」というテーマから、こちらが勝手に想像してしまうフェティシズムな展開を気持ちよく覆してくれる松居大悟監督の演出の潔さ。そしてなにより、主演の須賀健太刈谷友衣子の表現力、演技力に脱帽。