2012年に一旦活動を休止したYUIが、その名を〈yui〉と改め、尊敬するプレイヤーと共に結成したFLOWER FLOWER。yui(ヴォーカル/ギター)以外のメンバーは、mura☆jun(キーボード)、mafumafu(ベース)、sacchan(ドラムス)。いずれもセッション・ミュージシャンとして、錚々たる面々と共演を重ねてきた達人だ。

FLOWER FLOWER ソニー(2014)

 2013年の結成以降は各地のイヴェントで名を馳せていたが、このフル・アルバム『実』が初のフィジカル音源。冒頭の“願い”は6分超のミディアムで、残響音たっぷりの白昼夢的な空間に楔を打つようなピアノが印象的なナンバー。続く“神様”ではディストーション・ギターが荒れ狂い、かと思えばアンビエントなブリッジが挿まれたりと、自由度の高いサウンドに驚く。作/編曲はyuiの弾き語りをバンドでアレンジしたものやスタジオでのセッションを元にしており、ストリングスとアコギが静けさを強調する“水滴”、シューゲイザー調の“ひかり”、ニューウェイヴィーなひねくれ感をポスト・ロック経由で表現したような“席を立つ”など、これまで以上に多様。yuiのソロは彼女のギターを主とした比較的シンプルなギター・ロックだったが、本作の豊かな彩りと偶発性はこの4人ならではだ。

【参考動画】FLOWER FLOWERのファースト・アルバム『実』
収録曲“素晴らしい世界”のライヴ映像

 

 作詞はyuiが担当。ここでの彼女は新しい物語に胸を躍らせつつ、喪失や翳り、歪さや憤りを隠さない。かつての健気な恋の歌も彼女の一面ではあったが、ともすれば醒めた目線でヒヤリとする言葉も投げかけてきたことを思えば、今作は安易に〈ダークサイドの表出〉では片付けられないだろう。青春の痛みに向き合い、成長しようともがき、アイデンティティーを見い出していく──スタイルは変われど、言葉の根底にある率直さやリアリティーは彼女の不変の魅力。バンドという表現方法を得たことで、またここから大輪の花を咲かせるはずだ。

【参考動画】 FLOWER FLOWERのファースト・アルバム『実』
初回生産限定盤に付属するDVDのダイジェスト映像

 

 

▼関連作品

左から、YUIのベスト盤『GREEN GARDEN POP』『ORANGE GARDEN POP』(共にソニー)
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