ゴージャスな面々が顔を揃えたクラムボン結成20周年記念の前哨戦となるトリビュート・アルバム『Why not Clammbon!?』。カヴァーする機会が与えられたことにただただ喜びを感じているような各々の演奏に耳を傾けていると、3人がみんなからどれだけ愛されているかを痛感させられ、しまいにはこの世界にクラムボンを嫌いな人なんているのか?なんて思いに駆られてしまう。こんなに幸せな空気に包まれたトリビュート盤もそうはないよな、とつくづく思わされる次第。 

VARIOUS ARTISTS Why not Clammbon!? コロムビア(2014)

 96年に動きはじめたクラムボンは、99年3月にシングル“はなれ ばなれ”でメジャー・デビュー。ベン・フォールズ・ファイヴに対抗しうる日本のピアノ・ロック・バンドが登場したと大いに歓迎を受けることに。そんな彼らの20年を振り返ると、固定観念に縛られることなく自由な精神を保ち続けながら、独自の色合いを持ったポップソング作りに専念する3人の姿が思い浮かぶ。時にエクスペリメンタルな方向に舵を切ったりしつつも、あくまでもナチュラルでオーガニックなポップ・ミュージックであることからブレることなく、チャーミングで美しくてエクレクティックな音世界をずっと築き続けてきたのである。原田郁子ミト伊藤大助のそれぞれが活発に課外活動を行い、数多くの客演仕事を行っていることもよく知られている事実だろう。そんな彼らのフットワークの軽さは間違いなくバンドに風通しの良さをもたらし、絶妙なトライアングルを維持することを可能としているが、その点に関してたくさんの同業者からリスペクトを集めていることも記しておきたい。

 2010年発表の『2010』以来となるオリジナル・アルバムの到着が気になったりするけど、のんびり構えて待つのも悪くないって……と言い聞かせるもうひとりの自分がいたりもする。何よりもこの冬は、クラムボン愛に満たされた、愛さずにいられないトリビュート盤がそばにあるじゃないか。クラムボンの新しい音楽が待つ楽しい未来のことを想像しながら、ゆっくりと堪能しようと思う。

 

 

▼関連作品

左から、クラムボンの全ミュージック・ヴィデオを収録した映像作品「clammbon music V 集」、2010年作『2010』(共にコロムビア)、ベスト・アルバム『クラムボン -ワーナーベスト』(ワーナー)、『clammbon -columbia best』(コロムビア)
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