明るい幻を見せてくれそうな歌心を持つ作品たち

坂本慎太郎 『ナマで踊ろう』 zelone(2014)

有機的なグルーヴと淡いサイケ感が共存した、独自のポップスを鳴らすキセルと坂本。本作について坂本がよく口にしている〈フィリピン・パブのハコバンを仲の良い友達と飲みながら見てる感じ〉というのは、恐らくユーミンの流れる札幌のバーと通じるものがあるはず。 *金子

 

アナ 『イメージと出来事』 SECOND ROYAL(2014)

クラブ・ミュージック寄りの作風だった過去の作品から一転、ゲスト・ミュージシャンと共に生演奏主体で作り上げた、ソウル・フィーリングたっぷりのポップスが揃った良作。中学時代からの付き合いという大久保潤也と大内篤は、もはや兄弟同然の関係か。 *金子

 

フォーク × ソウルな歌を紡ぐ次世代のシンガー・ソングライターといえば、今年ついに正式なCDデビューを果たしたこの人が筆頭だろう。かつては〈SUKIMA〉の立ち位置だったキセルの存在は、トクマルシューゴなどを経由していまも若手に影響を与え続けている。 *金子

 

アナログフィッシュ 『最近のぼくら』 felicity(2014)

生感と打ち込み感の同居したループ主体のリズムに加え、一見穏やかな言葉とメロディーの裏側から現代に対する違和感、〈気持ちの悪さ〉が透けて見えるところも似ている。キセルと同じく2人のソングライターを擁する彼らもまた、今年で結成15周年を迎えた。 *金子

 

あだち麗三郎 『6月のパルティータ』 Magical Doughnut(2014)

〈時間の流れがサラッとしてる〉というよりは場面展開の連続で時間の経過を忘れさせる、といった風情の一枚。けれど夢心地な音像や穏やかなアコースティック曲はもちろん、トロピカリズモ × ソフト・ロック然とした楽曲も、いまのキセルならハマるような気が。 *土田

 

高田漣 『アンサンブル』 スピードスター(2013)

昨年公開の映画「箱入り息子の恋」の主題歌では細野晴臣と共演した兄。同曲も収録された本作には、斉藤和義や岸田繁、はっぴいえんど周辺や高田渡(の歌詞)などキセルとそのルーツにまつわる人脈が集結。『明るい幻』にも通じる人肌のバンド・アンサンブルを堪能できる。 *土田

 

MARTER 『SONGS OF FOUR SEASONS』 Jazzy Sport(2014)

柔和な歌声がキセルとも重なるシンガー・ソングライター。ビートメイカーとしてもジェイムズ・ブレイクと並べて賞される彼だが、最新作の全体的な印象は、フォーキーな親密さに包まれたソウル・ミュージック集。『明るい幻』同様、仄かにミナスの匂いも。 *土田

 

やけのはら 『SUNNY NEW LIFE』 felicity(2013)

足取り軽く繰り出される主役のラップに辻村兄弟のほんわかしたハーモニーが映える“RELAXIN'”を含む本作は、日常に潜む違和感を飄々と吐露しつつ、〈光〉や〈未来〉へさりげなく目を向けているという点で『明るい幻』と共通。ややこもった音像もキセルのアナログ感とフィット。 *土田