前作『The Division Bell』発表後、旧友ロジャー・ウォーターズとの和解、初期を支えたシド・バレット、そして全時代を通じて音楽的支柱であったリック・ライトの死……と、波乱続きだったピンク・フロイド。これは前作時のセッションをフィル・マンザネラやユースの手を借りながら再構築した、20年ぶりの新作にしてラスト・アルバムだ。ということで、引き続きインスト中心でアンビエント色が強め。デヴィッド・ギルモアらしい浮遊感のあるスライド・ギターと、ニック・メイスンの叩くしなやかなビート、リックの詩的情緒溢れる鍵盤が合わさり、筆舌に尽くし難い美しき音絵巻が広がっていく。最終曲の荘厳なバラードが流れた瞬間、涙で前が見えなくなった。ピンク・フロイドよ、永遠なれ。