INTERVIEW

一柳慧 新作“交響曲第9番”も作曲した東京都交響楽団の名シリーズ〈日本管弦楽の名曲とその源流〉プロデューサーに聞く

(C)KohOkabe

 

 東京都交響楽団は1987年から現代日本作品をとりあげるシリーズを組んできた。2006年からはプロデューサー制をとり、「日本管弦楽の名曲とその源流」という、海外の作品も組み合わせながらのプログラムに移行、2006から2011年までは別宮貞雄、2012年からは一柳慧がプロデュースをおこなってきた。だが、このシリーズも来年2015年1月で幕をひく。この機会に、委嘱作品《交響曲第9番「ディアスポラ」》を初演するとともに、シベリウスルトスワフスキの作品で一夜を組むとともに、プロデューサーを退任される一柳氏にはなしをうかがうことになった。

――別宮さんから一柳さんへとプロデュースが移って、プログラミングがずいぶん変わりましたね。

 「もちろんそれぞれの好み、というのもあるんですが、別宮さんはオーソドックスに日本の作曲家とそれにつながる外国の作曲家ということでやってこられました。亡くなっていらっしゃる方のものが多かったので、私の場合はまだ生存している作曲家を対象にしました。生の演奏を聴けるというのは作曲家にとって悦ばしいことですし、そういう経験も蓄積してもらいたいと。また、成熟した作曲家だけでなく、可能性があり、どういう風に成長してくるかまだ未知数な方も含めて対象にしたいと思っていたのです」

――それぞれの作曲家を2、3曲ずつプログラミングする場合、つながりをどう考えていくかというのがあるか、と。

 「日本人の作曲家に焦点をあてている催しですので、日本人を中心にして、そこからどういうつながりが作れるか、ですね。今回はかなり歴然としています。とりあげたのはフィンランドとポーランドの作曲家で、日本と同じ小国です。この両国の人達は大国に挟まれて、かなり厳しい境遇や、過酷で厳しい状況のもとで生活してきた。自分の領土をべつの国の軍隊が行ったり来たりされる、そんなことを想像しただけで、大変過酷な状況だというのはわかります。そういう小国でもすばらしい作曲家を輩出し、そしてそれらの作曲家と、今の時代や社会と関係のある問題につなげた構成にした、といったらいいかもしれません」

――シベリウスが入っていてちょっと意外でした。

 「シベリウスの《夜の騎行と日の出》は、あまり演奏されていません。そしてこの曲は、シベリウスの中ではもっとも民族音楽的要素が少ないコスモポリタンな作品なんです」

【参考動画】東京都交響楽団の演奏によるブルックナー作曲“交響曲第2番”

 

――ルトスワフスキの作品は1970年に書かれています。

 「私は1970年代前半にポーランドに行っています。このとき、ポーランド人たちと話をしてみて、もう第二次大戦から30年以上経っているのにまだその重圧を引きずっているのをつよく感じました。もっとも苦労したひとりがこのルトスワフスキ。彼は父親がそういう環境下で射殺されています。昨年2013年はこの素晴らしい作曲家の生誕100年にあたってもいました。日本ではほとんどコンサートもなかったようですけれど。ですから、今回はどちらかというと大国のもので上からの目線ではないプログラムにしたいと思ったわけです」

――そこに『交響曲第9番「ディアスポラ」』が入るわけですね。この《9番》は上記の二作とつながりがあると考えてよろしいのでしょうか。

 「私は子供の時でしたが、第二次大戦を経験しています。立場は違いますがそれが小さい国が虐げられた状況と通底している。戦争で受けた人たちの精神的なダメージというのはとても大きい。高齢になった今、そのことが第9交響曲を書く動機につながっています」

――かつての一柳さんを知っていると、『シンフォニー/交響曲』を書くことがそもそもないだろうと思っていたわけですが。

 「最初に交響曲とつけたのは、『ベルリン連詩』(1988)です。それより前に交響曲とつけたものはない。だけど、一番最初からかなり自己流で日本の連歌とか連句をベースにした日本的なコンセプトで交響曲が書けたので、もう一回、交響曲の在り方全体を現代の視点から考えられたら、という気がしてきました。そうしたら、その後たまたまお話をいただいたりしたことが重なって、ここまで書き進めることができました。今度の『第9番』もやや変則的な構成になっています。4楽章ですけど、1楽章が一番シンプルで短く、その後2楽章、3楽章と進むにつれてだんだん長くなってきて最後の楽章にきて次元が変わり大きく変質を起こします。

――だんだん長くなる、というのは……

 「音楽がモダニズムから、ポスト・モダニズムな状況になるにつれて、次第に音楽の輪郭や本質が見失われてきたことを、時代や社会と私の語法である空間的観点からの問いかけの結果です」

―― 一柳さんが考えていらっしゃる“空間性”を体感するのはやはりコンサート会場でこそ、でしょう。その意味でもぜひ会場に足を運んでいただきたいものですね。

 

LIVE INFORMATION

《日本管弦楽の名曲とその源流19》「第782回 定期演奏会Aシリーズ」
シュネーベル、カーゲル、川島――機智とユーモア、そして伝説への敬意

○2015/1/15(木)19:00開演 会場:東京文化会館
出演:下野竜也(指揮)
曲目:川島素晴:室内管弦楽のためのエチュード(新作を含む6曲版初演)(2001-14)/シュネーベル:シューベルト・ファンタジー(1978/89)日本初演/カーゲル:ブロークン・コード(2000-01)日本初演

《日本管弦楽の名曲とその源流20》「第783回 定期演奏会Bシリーズ」
一柳慧の「第9交響曲」初演で締めくくるシリーズ最終回

○2015/1/23(金)19:00開演 会場:サントリーホール
出演:ハンヌ・リントゥ(指揮)ピーター・ウィスペルウェイ(vc)
曲目:シベリウス:交響詩《夜の騎行と日の出》op.55/ルトスワフスキ:チェロ協奏曲(1970)/一柳 慧:交響曲第9番(都響委嘱作品・世界初演)

※両日ともプレトークあり(18:35~18:50)

www.tmso.or.jp/

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