柴田南雄 柴田南雄著作集 第1巻 国書刊行会(2014)

 国書刊行会から『柴田南雄著作集』全三巻が刊行されつつある。すでにご覧になった方もいらっしゃるかもしれないが、この場でも編者として紹介文を書かせていただけることになった。お読みいただければ幸いです。

 柴田南雄(1916-1996)は作曲家だったけれども、音楽学者、音楽批評家として多くの著作を残した。著作のなかのいくつかは現在も文庫として再刊されているものもあるものの、手にはいらないものも多い。そこで計画されたのがこの著作集である。

 第1巻はまず「西洋音楽史 第4 印象派以後」と上・中・下からなる「西洋音楽の歴史」を合本とした。西洋音楽史などすでに大量にあるわけだし、1960年代に書かれたものなどいささか古びているのではないかとの意見もあろう。だが、中世から1960年代までの通史をひとりでこれだけの分量で、かつこの列島という位置を意識しながら書いた人物はいなかった。たしかにその後の研究成果が反映されていないこともあるにはある。だが、そのうえで、ひとつの大きなながれとしてとらえられた歴史という意味では、ここにあることはしっかりととらえておくべき基本のなかの基本であることに変わりない。

【参考動画】柴田南雄の作曲による“追分節考”を収録したアルバム『追分節考』 試聴動画

 

 第2巻では20世紀の作曲家論を中心にしつつ、現在入手が困難な『音楽の骸骨のはなし』と『楽のない話』、単行本未収録の文章を集め、第3巻は数あるレコード評から選りすぐったものを集める予定となっている。前者が作曲家が同時代の同業者=作曲家のやっていることへの関心を自分なりに分析し、さらにはこの列島に20世紀に生をうけているところから過去へと遡行したり、そこに残っているものを思考したりしたものを集めたものだとすれば、第3巻は、その視点を「西洋クラシック音楽」の作曲と、その実現された音楽(=レコード)をどう聴くのかを、より広い人びとへと語ったものだ。

 2016年には生誕100年を迎える故人が、いまに生きる人たちがまだ充分に消化しきれていないしごとを残した、その遺産を確認する機会=場として著作集が役立つなら、うれしいのだが。なお、CD/DVD『柴田南雄とその時代』も3巻で完結したことも忘れずにおこう。本書と併せて手にとっていただきたい。