佐野元春 『VISITORS』 エピック(1984)

“SOMEDAY”の大ヒットを受けて83年に渡米し、NYでの長期生活中に吸収したヒップホップやエレクトロ・ファンクと日本語詞や生演奏の融合をいち早く実践した一枚。当時の音楽シーンに影響を与えたビートと言葉の実験は時を経たいまも聴く者を触発する。 *小野田

 

UA 『AMETORA』 スピードスター(1998)

クラブ・ミュージックに根差したファースト・アルバム『11』を経て、生音に軸足を移した2作目。朝本浩文が手掛けた“ミルクティー”のほか、ラテン~ブラジリアン、ジャズなど、折衷的な音楽性が旅情感とソウルフルなヴォーカルでまとめられている。 *小野田

 

VARIOUS ARTISTS 『HIGH MUSIC ~from legendary master tapes of HOT-CHA』 ミュージックマイン(2005)

菊地成孔がアブノーマルな詞世界で作家性を提示したAhh! Folly Jet“ハッピーバースデー”は“Orphans”の発想元のひとつ。彼らとceroは無国籍なモダン・ポップという音の面でも共通項が。 *土田

 

小沢健二 『Eclectic』 ユニバーサル(2002)

当時、NY在住だった彼がネオ・ソウルに触発され、ベッドルーム感覚を内包した打ち込みと名うての現地ミュージシャンによって制作した4作目。そのミステリアスな音楽世界は、日本人らしい折衷性と実験的な言語表現を浮き彫りにしている。 *小野田

 

flex life 『黒い秘密』 エピック(2003)

情感豊かな青木里枝の歌声とジャズ~ソウルを下敷きにしたオーガニックなアンサンブルで甘美な音世界を築いた男女デュオの初フル作。後に届けられたベスト盤が『mellow groove』と冠されていたことにも納得の、ナイトライフ・ミュージックがここに。 *土田

 

BENNY SINGS 『Benny... At Home』 Sonar Kollectiv(2007)

“Orphans”のアレンジの参考盤として挙がったのは、モッキーの口笛ソング“Birds Of A Feather”と本作。ヒップホップ経由のソフト・ロックとでも言うべき〈歌とグルーヴ〉との洒脱な距離感は、これまでのceroと地続きにあるものだ。 *土田

 

MARTER 『Songs of Four Seasons』 Jazzy Sport(2014)

歌と演奏、作曲、アレンジ、プロデュースを一手に手掛ける山内将輝がJazzy Sportに移籍しての2作目。R&Bとエレクトロニック・ミュージック、英語と日本語、打ち込みと生楽器を自在に行き来する、研ぎ澄まされた柔軟性はceroと共通。 *小野田

 

入江陽 『仕事』 Pヴァイン(2015)

“Yellow Magas”以降のceroがたびたび言及しているロバート・グラスパー以降のビート感覚とソウル・ミュージックの咀嚼の仕方において、いまもっとも近似性を感じさせるシンガー・ソングライター。シュールさと歪さを〈ポップ〉へと仕立て上げる随一の手腕を持っている。 *土田