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【SANABAGUNのSANABA談】Vol.1 小杉隼太(ベース)が選ぶSANABA盤3枚!

いま注目のストリートなバンドのメンバーが自身のターニングポイントとなったアルバムを紹介!

【SANABAGUNのSANABA談】Vol.1 小杉隼太(ベース)が選ぶSANABA盤3枚!

渋谷のストリートを拠点にライヴを繰り広げている巷で噂のジャズ/ヒップホップ・バンド、SANABAGUN。スキルも確かなプレイヤーたちが鳴らすジャズやファンク、ブレイクビーツにラップ&ヴォーカルを乗せたクール極まりない彼らの音楽は、いったいいかにして生まれたのか――それを炙り出すべく、サナバの構成員に自身の滋養となっているアーティストの作品をカメラの前で紹介してもらうことにしました! 高岩遼氏(ヴォーカル)、岩間俊樹氏(MC)のフロントコンビを進行役に、個性豊かなメンバーが毎月登場しますよ。また、こちらの映像はSANABAGUNの映像コンテンツを担う川村静哉氏が手掛けてくれます!

そして記念すべき本連載第1回は、バンドの裏ボス(?)であるベーシスト兼コンマス(コンサート・マスター)の小杉隼太。初回から大盤振る舞いで、前・中・後編の3本仕立てでお届け! さらに初回からまさかの展開で大変恐れ入りますが、2015年からメンバーの名前が変わり……というかステージネームから本名に変更になっているものの、こちらの映像が昨年中に収録されたもののため、前名義で進行しておりますこと、ご了承ください……(泣)。また映像では盛り込めなかった彼らの解説コメントもテキストに起こしておりますので、そちらも併せてご覧いただければと!

 


 

【前編】

 

高岩遼「ではご紹介を!」

小杉隼太RHファクター『Hard Groove』。ロイ・ハーグローヴというトランぺッターのプロジェクトなんですけど、俺らの大パイセンですよ。元は生粋のジャズマンで、ビバップもやる。最初はスウィング(・ジャズ)で頭角を現したんだけど」

THE RH FACTOR Hard Groove Verve(2003)

高岩「彼はバッパーだったんですかね?」

小杉「元はバッパーですよね。ディアンジェロエリカ・バドゥJ・ディラとかと同世代で、コラボもよくしていたんだけど、このアルバムでもエリカ・バドゥコモンディアンジェロミシェル・ンデゲオチェロ、あとアンソニー・ハミルトンも参加している。もう最強なんだよね」

高岩アンソニー・ハミルトンが参加してるの? あのすきっ歯の? 俺、中学の時めっちゃ聴いてた」

【参考動画】RHファクターの2003年作『Hard Groove』収録曲
アンソニー・ハミルトンが参加した“Kwah/Home”

 

小杉「たぶん〈ふざけんなよ〉ってなるんだよね、これ最初に出すと」

高岩「サナバのメンバーがね。サナバ的にプッシュしたい一枚なんだよね」

小杉「ベースは俺の大好きなピノ・パラディーノ先生。この人は全ジャンルいけるからね」

高岩「ピノさんはどういうところから入ったんですか?」

小杉ジョン・メイヤーでしょ、ジョン・メイヤー・トリオ。あらゆるジャンルで活躍してるってところが好きで、俺がプレベ(プレジション・ベース)を使ってるのもピノさんの影響だし」

【参考動画】ジョン・メイヤー・トリオの2005年のライヴ映像

 

高岩「じゃあRHファクターはピノさんがいるからこそ好きってところもある?」

小杉「それは、ない! ピノさんは関係なくこのアルバムは最高。このなかでいちばん好きな曲かけてもいい? “Pastor ‘T’”っていう曲なんだけど」

【参考音源】RHファクターの2003年作『Hard Groove』収録曲“Pastor 'T'”

 

小杉「この感じを使いたいんだよ、サナバに。これ、1曲なんだけど3曲が繋がっているような構成で」

高岩「曲間がないんだ」

小杉「そうそう。これのめっちゃおもしろいところが、ベースの話なんだけど、エレキ・ベースのピノ・パラディーノに加えて、レジー・ワシントンていうウッド・ベースの人が参加してる。つまりベースが2人いるんだよね」

高岩「ウッド・ベースは基本バスドラに合わせてるの? へぇ~、おもしろいね」

小杉「で、ピノさんはバスドラに対してプッシュしてるの。ベーシストにはこの曲がオススメ。イヤフォンで聴いたほうがいいね。このRHファクターの『Hard Groove』は最近のジャズの本(『Jazz The New Chapter』のことです)に取り上げられていて、日本盤が安く再リリースされてます」

岩間俊樹「でもベーシストって……正直俺まだよくわからないんですよ」

小杉「……じゃお前なに聴くの?」

岩間「僕ですか? 僕はあの……(ゴソゴソかばんを探る)」

小杉「ないよ、基本今回は俺だけ紹介する形だよね?」

高岩「今回1回目なんですけど、岩間がちょっと趣旨をわかってなくてですね……」

岩間「今回ご紹介するのは友川かずきの……」

 

【中編】

 

高岩「とりあえず今回の連載の流れなんですけど、視聴者の皆さんにサナバのメンバーが(お気に入りの)アルバムを紹介していくという企画なんですが、岩間俊樹はゴリゴリのラッパーで、ヒップホップ好きで、いろんな音楽を知ってるんですけど、少し他のバンド・メンバーとのズレが今後の課題になってきています。もちろん皆さんに向けて(この連載は)お届けしていくんですが、それと同時に岩間俊樹にも届けたい(笑)」

小杉「まあこれを機にね、俺らの聴いてる音楽を(岩間にも)知ってもらうっていう」

高岩「SANABAGUNの、岩間俊樹にも届けたい……」

小杉「書かないけどサブタイトルにね(笑)」

高岩「では2枚目行きましょう!」

小杉ローリン・ヒルの大ヒット・アルバム『The Miseducation Of Lauryn Hill』です」

LAURYN HILL The Miseducation Of Lauryn Hill Ruffhouse/Columbia(1998)

高岩「はーい、きましたね」

小杉「これ、曲と曲の繋ぎがカッコイイんだよね。14曲入りなんだけど、実際は14曲じゃなくて20何曲あって」

高岩「実質的に」

小杉「アルバムの構成が素晴らしい。繋ぎがカッコイイから、気付いたらアルバム終わってる、みたいな。やたらインタルードが多いけどそれが物凄くいい、物語のようで。これにディアンジェロが参加してるんだわ。ディアンジェロが好きなんだ、オレ」

【参考音源】ローリン・ヒルの98年作『The Miseducation Of Lauryn Hill』収録曲
ディアンジェロが参加した“Nothing Even Matters”

 

高岩「で、ローリン・ヒルを選んだ理由は?」

小杉「ローリン・ヒルを初めて知ったのは映画『天使にラブソングを2』なんだよね」

高岩「ああ出てるよね。〈♪Joyful, Joyful. Lord, We adore thee~〉!」

小杉「(苦笑)。ちょっとヘタじゃない? ハハハハハ(笑)」

高岩「俺、ベートーヴェンそんな好きじゃないし。あれ(“Joyful Joyful”)ベートーヴェンの曲だよね? そうでしょ?」

【参考動画】映画「天使にラブソングを 2」よりローリン・ヒルによる“Joyful Joyful”歌唱シーン

 

小杉「そうなの? まあそれで最初知ったんだけど、もうやっぱラスタだよね」

高岩「そうだね」

小杉「“To Zion”って曲がマジで良くて。俺バビロン大っ嫌いだから、マジで!」

高岩「僕らみんな嫌いだからね」

小杉「じゃあその“To Zion”を聴いてみましょうか、5曲目」

岩間「また5曲目ですか(前回も5曲目)?」

小杉「あ、そうだね!」

岩間「〈5曲目〉好きなの?」

小杉「え、そうなのかな……? いや、違う!」

【参考動画】ローリン・ヒルの98年作『The Miseducation Of Lauryn Hill』収録曲“To Zion” ライヴ映像

 

高岩「あ~良いですね。僕もこれはよく聴きましたね。あと“Doo Wop(That Thing)”っていう曲が相当ヒットしたらしい」

【参考動画】ローリン・ヒルの98年作『The Miseducation Of Laryn Hill』収録曲
“Doo-Wop(That Thing)”

 

小杉「あ、そうなんだ。シンガーでありラップもするあたりは、遼に通じるとこがあるなと思って選んでみました」

※ここでドリンクの買い出しにパシられていたEdy(サックス)が買い物を終えて帰還……

高岩「……いまEdyをパシったでしょ?」

岩間「お酒呑みたくなっちゃって」

高岩「でも隼太くんはお酒が呑めないんです」

岩間「最近呑めるようになったんだよね」

小杉「ちょっとね、ちょっとだけね」

高岩「なんかウィスキーが好きだとか」

小杉「ウィスキーだったら呑める。チャポチャポになっちゃうとダメなんだよね。ビールとか……」

高岩「ジャポジャコ……」

小杉「……ジャコ・パストリアスでーす!」

高岩小杉「イェーイ!」

 

【後編】

 

小杉「これは『Legendary Demo & Live Tracks』っていう、デビュー前のデモや未発表のライヴ音源とかが収録されていて、かつてあった〈ADLIB〉というジャズ雑誌の編集長だった松下(佳男)さんが選曲しているアルバム。松下さんはジャコが好きすぎて、1年に1回くらいジャコの特集してたんだけど(笑)、これまでにジャコの本も多く手掛けている人です。ジャコのベーシストとしての魅力というとなかなか難しいけど、ベース・プレイというよりハートの部分が大きい。よくテクニカルと言われるけど、いまじゃテクニックの面でジャコより上手い人はいくらでもいると思うんだよね。もちろんすごい上手いけど、俺はジャコのテクニカルと言われる理由がよくわからない――ちなみにジャコがソロで出したあの天才的なアルバム(76年のソロ・デビュー作『Jaco Pastorius』)は俺らの歳より下の時だからね」

JACO PASTORIUS Legendary Demo & Live Tracks ビクター(2008)

高岩「いくつの時なの?」

小杉「23歳くらい(*実際は24 歳です)」

高岩「へ~。彼はアカデミックに音楽を学んだ人なの?」

小杉「学校には行ってないんだけど、いろんな人に(識者に)付いて回って、教えてもらったらすぐにビッグバンドの曲を書けるようになったりするような……ホント天才なんだよね」

高岩「ビッグバンド譜も書くの!?」

小杉「書く書く。じゃあそのビッグバンド曲を聴いてみる?」

高岩「(岩間に)聞いてる? お前にも伝えようとしているわけだよ」

岩間「ジャコでしょ?……聴こうよ」

一同:苦笑

岩間「これも5曲目ですか?」

小杉「これは……フフ、7曲目です(笑)」

【参考音源】ジャコ・パストリアスに未発表音源集『Legendary Demo & Live Tracks』
収録曲“Mr. Fone Bone"

 

小杉「この人、カリプソが好きで、スティールパンとかを入れるのがジャコのビッグバンド・アレンジの特徴かな」

高岩「そうなんだ、いいね、この感じ」

小杉「俺のなかで、ジャコの魅力はパイオニアたる発想力、晩年にビッグバンドをやっていた時の指揮者のようなベース・ライン、それが作曲家としての魅力に通じてます。俺、〈PUNK JAZZ〉ってタトゥーを入れてるんだけど、この言葉はウェザー・リポート(ジャコが所属していたフュージョン・バンド)の曲名。さっき話した〈ADLIB〉の元編集長・松下さんが書いた『ワード・オブ・マウス ジャコ・パストリアス魂の言葉』という本に載っているジャコのインタヴューで、〈あなたの音楽は何ですか?〉という質問にジャコが〈PUNK JAZZ〉って答えていて、それがカッコ良くって憧れて入れた(笑)。ちなみに息子のフェリックス・パストリアスはマジでブッ飛んでる。上手さもブッ飛んでる!」

【参考動画】イェロージャケッツのメンバーとして自身のこれまでを語るフェリックス・パストリアス。
お父さんの話も出てきます

 

高岩「1回目ということで、どんな雰囲気でお届けしようかなと思ったんですが、いかんせんこんな感じになっちゃいましたっていうところで……第1回はSANABAGUNのベース/コンサート・マスターの小杉隼太くんがお届けしました!」

 

PROFILE:SANABAGUN


 

 

高岩遼(ヴォーカル)、岩間俊樹(MC)、隅垣元佐(ギター)、小杉隼太(ベース)、高橋紘一(トランペット)、谷本大河(サックス)、櫻打泰平(キーボード)、沢村一平(ドラムス)から成る8人組。2013年に結成。渋谷のストリートを中心としたライヴで話題を集める。2014年にGAGLEと共演を果たしたのをはじめ、じわじわと評判を広げて同年にファースト・アルバム『Son of a Gun』(Pヴァイン)をリリース。アルバムの発売記念ライヴをMOTION BLUE YOKOHAMAで行うなど、スケールを拡大しながら活動中。最新情報はバンドのTwitterでチェックを!

【参考動画】SANABAGUNの2014年作『Son of a Gun』収録曲“M・S”

 

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