4人組のインスト・バンドのSawagiは、そのユニット名や、エレクトロ以降のダンサブルな音楽性が流行していた2009年というデビュー時期も関係して、〈ダンス・ロック〉という文脈で語られることが多かった。しかし、実際のところ彼らは前身のKARAKURI時代から〈ダンス〉に特化していたわけではなく、〈歌えるインスト〉であることだけを軸に、さまざまなジャンルの音楽を掛け合わせて、オリジナリティーの高い楽曲を作り続けてきたのだ。その資質はドリーム・ポップ寄りの前作『Punch Games』でも示されていたが、今回のニュー・アルバム『Starts to think?』によって、より露になったと言えよう。

Sawagi Starts to think? SOPHORI FIELD(2015)

 「ウワーッて盛り上がれるライヴももちろん好きなんですけど、それだけだと〈盛り上がらなかったら楽しくない〉みたいな雰囲気になってしまうんですよね。なので、そういうところからは徐々に離れて、もっと自分らのなかのこだわりとか空気感みたいなものを曲に詰め込みたいと思うようになったんです」(nico、ドラムス)。

 「感動の仕方っていろいろあると思うんですよね。楽しい、悲しい、嬉しい、そういういろんな感動を味わえるような音楽を作りたいと思ったんです。例えば、ダーティー・プロジェクターズのライヴとかって、ウワーッて盛り上がるわけじゃないですけど、音楽が凄すぎて感動するみたいな感じじゃないですか? ああいうことをライヴでも音源でもできるようになりたいと思って」(コイチ、キーボード)。

 フィジカルな昂揚感だけではなく、身体の内側から湧き上がる〈熱い胸騒ぎ〉を求め、彼らが本作で重視したのは、人間的な温かみ。その結果として、ローズや生楽器の割合が増えて、鍵盤とギターが緻密に絡み合いながらメロディーを紡ぎ、往年のプログレッシヴ・ロックにも通じるような重厚さを醸し出している。

 「本物のローズを使うとカヴァーできる帯域が広いので、ウォームなんだけど激しかったり、そのなかにキラキラした部分を残せたりもして、表現の幅が広がるんですよね」(コイチ)。

 「今回いままであんまりやってないユニゾンとかもやってますけど、普段のスタジオでは生のローズを使ってないから、実際レコーディングで使ってみると、意外と合わなかったりもして。なので、シンセと巧く使い分けながら、聴いたことのない感じをめざしました」(観音、ギター)。

 フェラ・クティのような土着的なビートに、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのハードさを足したという“fuss uppers”、ゴルジェジュークのドラム・パターンと、クラシカルなピアノを合わせたミニマルな“rush around in circles”、オリエンタルな香りのするメロディーを軸にさまざまな展開を見せ、壮大なエンディングが何とも言えない余韻を残す“Trophy”まで、曲調はとにかく多種多様。それはメンバー自身すらもゴールの見えない制作を経て、完成されたものだった。

 「今回は壁に向かってボンボンとペンキを投げるみたいな感じで、コイチとデータ上でセッションしたり、とにかく曲をたくさん作ったんです。結果的に残ったものを見て、〈これがSawagiのサウンドか〉って、自分たちでもそこでやっとわかるみたいな感じもありましたね(笑)」(雲丹亀卓人、ベース)。

 2014年、国内でツアーを共にしたショートストローからの招聘を受けて、2015年の1月には南アフリカ・ツアーも決定。言語を超えたインストの魅力を、これから世界にも響かせていってくれることだろう。

 

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ここではSawagiの関連作を紹介します。もともとKARAKURIとして活動していた彼らは、2008年のジブリのカヴァー・コンピ『The Best of Jazzin' for Ghibli』(FARM)に同名義で参加後、2009年にSawagiへバンド名を変更して初のミニ・アルバム『hi hop』を発表。そして、翌2010年にはAira Mitsukiのミニ・アルバム『6 FORCE』(D-topia)で3曲をプロデュースします。さらに2011年にはロウ・フリークエンシー・クラブ『West Coast』(FLAKE)カシオキッズ『Aabenbaringen Over Aaskammen』(Polyvinyl/FLAKE)の日本盤にリミックスを提供して外仕事を重ねると、2012年には初フル作『Punch Games』(SOPHORI FIELD)が登場。ブラックな嗜好を下敷きにした開放的なバンド・アンサンブルは、その先への布石となりました。 *bounce編集部