INTERVIEW

KITTY, DAISY & LEWIS 『Kitty, Daisy & Lewis The Third』 Pt.1

さあさあ、3年半ぶりの帰還だよ! ジャンプ・ブルース、ロカビリー、スカ……50sに恋い焦がれ、アナログ主義を貫けば貫くほどモダンさが増していった3人は、どんな音で私たちをスウィングさせてくれるかな?

KITTY, DAISY & LEWIS 『Kitty, Daisy & Lewis The Third』 Pt.1

ベターな環境で作れたわ!

 約6年半前に当時20歳と18歳と15歳だった3姉弟バンド、キティ・デイジー&ルイスがデビューした際、〈ヴィンテージ風〉ではなく〈ヴィンテージ〉まんまなその音とセンスの良さに、何て早熟なんだ!と驚いたが、その年の〈朝霧JAM〉でライヴを観てさらに驚いた。ギターを弾く大人の男性とウッドベースを弾く大人の女性(それは彼らの両親だった!)に挿まれる形で3人は代わる代わるヴォーカルを取り、1曲ごとに楽器を持ち替えていたのだ。例えばルイスがキーボードを弾いたら、キティはギターを弾いてデイジーがパーカッションに回り、デイジーがアコーディオンを弾いたら、ルイスがバンジョーを弾いてキティはトランペットを吹き……といった具合。何でもないことのように涼しい顔でそうしてプレイし、歌っている若い3人を眺めながら、この子たちは小さい頃から日常的にこうやってさまざまな楽器をオモチャみたいにいじり、あたりまえのように50年代の音楽を聴いて育ったんだなと思ったものだ。

KITTY,DAISY & LEWIS Kitty, Daisy & Lewis The Third Sunday Best/BEAT(2015)

 そんな彼らの2枚目のアルバム『Smoking In Heaven』が出たのは2011年春なので、そこからもう3年半ちょい。時流とは関係なく、マイペースに活動している3人がその間にやった大きなことは、まずこれだ。

 「新しくスタジオを作ったの。自宅にスタジオがあるので前はそこを使っていたんだけど、家からちょっと離れたケンティッシュタウンに、放置されていたボロ屋敷があって、それを手に入れ、3年かけてスタジオとして使えるようにしたのよ。それは完全に自分たちの空間で、もうひとつの自宅みたいな感じかな」。

 いつのまにか結婚もしてすっかり大人っぽくなったデイジー(発言:以下同)によれば、それは16トラックのアナログ・レコーディング・スタジオで、理想の音が作れる場所だそう。

 「そもそも父がカムデンにあるマスタリング・スタジオの共同設立者のひとりだから、古い機材に異常に詳しいのよ。それを受け継いで弟のルイスもアナログ機材に情熱を傾けるようになったわけ。私たちが作っているような音楽は、アナログ機材によってある種のマジックが引き出されたりする。デジタル録音だとその大事な感覚が失われてしまうのよね。で、1枚目と2枚目のアルバムは自宅スタジオの8トラック・マシーンで録音したの。だからやれることとやれないことがあったのね。もちろんあの頃はそれが良かったとも言えるんだけど……でも、新しく作った広いスタジオには16トラック録音の機材があって、以前よりもいろいろなものを持ち込むことができる。ストリングスも入れられるし、もっと良いバッキング・コーラスもやれるし。今回のアルバムで私たちの音楽が進化したのは、つまりベターなスタジオで前より進んだ機材を使ってレコーディングできたという、そのことに尽きるわ」。

 

3コードにはこだわらない

 そのスタジオで作り上げたのがサード・アルバム『Kitty, Daisy & Lewis The Third』。プロデューサーは、以前から3人のファンであることを公言していたミック・ジョーンズだ。

 「もともと母はクラッシュが大好きだったのね。で、私もクラッシュが好きで。父はと言えば、ビッグ・オーディオ・ダイナマイトのシングルをマスタリングしたりしてたの。そんなわけで〈あのミックと一緒に仕事ができるなんてスゴイ!〉って最初は興奮したわ。慣れていくうちに彼の人間的な良さもわかるようになったし、彼がそばにいてくれるだけでポジティヴなエネルギーをもらうことができた。例えば何をしてくれたかって? え~っと、ミックはいつもブルーベリーをスタジオに持ってきててね。〈ブルーベリーは脳の働きに良いんだよ!〉って言って私たちにくれたのよ」。

 もちろんミックがしたのはブルーベリーを配ることだけじゃないだろうが、もともと彼のプロデュースのやり方は放任型であり、今回もあれこれ口を挿まず、バンドのやりたいようにやらせながら可能性を引き出していったのだろう。その結果、膨らんだアイデアがいろいろな音となり、前の2作とは比較にならないほど多彩で賑やかなアルバムに仕上がった。

 「ファースト・アルバムの頃に比べたら私たちの演奏は間違いなく上達したと思うし、機材に関しての知識も増えた。それによってプリプロダクションの段階からいろいろなことができるようになったわ。〈クールなギター・パートをここにちょっと足そう〉とか〈フィドルっぽい音をここに混ぜよう〉とか、そんな感じで、音を重ねるのが上手くなったの。あと、以前の私たちの音楽はブルースをベースにしたところから始まっていたわけだけど、時が経って気がついた。〈私たちはもっとさまざまなタイプの音楽が作れるはずだ〉って。〈いつまでも同じ3コードに留まってないで、もっといろいろなことをやってみよう!〉ってね」。

 トランペッターのエディ“タンタン”ソーントンやトロンボーン奏者のヴィン・ゴードン、それにビッグなストリングス・セクションも招いてグッとカラフルになった飛躍作だが、そのわりにアルバム・タイトルがシンプルなのもこのバンドらしいところだ。

 「王族にちなんだジャケの写真から〈○○三世〉ってイメージで〈The Third〉って付けたんだけど、実際にこれが3枚目だし、私たちは3人組だし……まあ、そんな感じ。アルバム全体を言い表す言葉を考えるのが面倒臭いから、それでいいんじゃないかって思ったのよね」。  

関連アーティスト
pagetop