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――ほかにはどんな工夫をしているんですか? 例えば、ニア・フェルダーのギターとか、ジャズっぽくないフレーズも多いですよね。

「僕の曲はカウンター・ポイント的な感じで、ハーモニーとかは複雑になっているんです。メロディーがシンプルなぶん、テンションは使ったり、そういうのはしていますね。基本的には僕が書いた曲があって、それが彼らが彼らの解釈で演奏して結果的にどう聞こえるのかは、そうなったときにそれでいいみたいな。そういう曲なんだってことだと思ってやっています」

――かなり演奏者に委ねているんですね。面白い音色が入っていたりするんですけど、その辺はどうなんですか?

「僕はニアの普段の演奏を聴いているので、彼には普段通りのことをして欲しいって言ってましたね。基本的にやってほしいところは最初から楽譜に書いておいて、あとは自由にしてほしいという感じです。カチッと決めたところも、好きにやっていいところも譜面に書いて、結果それが聴こえなかったらいいのかなと思ってます。ウェイン・ショーターもめちゃくちゃ長い譜面を使ってたって聞くんですけど、譜面を使っているように聴こえなくて、その場でやっているように聴こえるんです。それが一番いいのかなと思ってます。彼らとのレコーディングはサクサク進むんですよね。その場その場のひらめきや瞬発力が勝っているかなと思う時も多いですね」

※ウェイン・ショーター(WAYNE SHORTER)
33年生まれ、ニュージャージー州出身のサックス奏者。アート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズやマイルス・デイヴィス・クインテット、ジョー・ザヴィヌル(ピアノ/キーボード)と結成したウェザー・リポートといったスーパー・グループを渡り歩き、バンド・リーダーとしてもジャズ史に残る傑作を多数リリースしたレジェンド。楽器の音色、インプロヴィゼーション、作曲などさまざまな面においてミステリアスかつ唯一無二の個性を持ち、ダニーロ・ペレス(ピアノ)、ジョン・パティトゥッチ(ベース)、ブライアン・ブレイド(ドラムス)を擁する自己のカルテットを中心にいまもなお活躍を続ける。2013年にはライヴ盤『Without a Net』で43年ぶりにブルー・ノートに復帰。ロバート・グラスパー(ピアノ)やノラ・ジョーンズ(ヴォーカル)らのレーベル・メイトとなった。

――ちなみにジャズを始めたのはいつですか?

「ジャズ研ですね。上智大学ジャズ研究会で、ピアノストのモリタマナミが同期なんです。彼女は中退して僕より早くバークリーに行ったんですけど。僕は卒業して、そのままNYにいって、向こうで再会して一緒に演奏したりしてました」

※モリタマナミ(森田真奈美/Manami Morita)
84年生まれ、埼玉出身のジャズ・ピアニスト。2006年にバークリー音楽大学に入学し、在学中から各地のコンペで入賞。卒業後に発表した自主制作アルバム『Colors』(2009年)が異例のヒットを記録、2011年にはオリジナル曲がテレビ朝日〈報道ステーション〉のオープニング・テーマに抜擢され、さらに注目を集める。現在もNYのブルー・ノートやロックウッド・ミュージック・ホールなどに出演、国内外で精力的な活躍を続ける。

――そのころはどんなジャズが好きだったんですか?

「ウェイン・ショーターのカルテットの『Footprints Live!』を聴いて、コンポジションっぽい曲の流れで、展開があって、ダイナミクスがあるサウンドが好きになって、そこから、そのメンバーを調べたら、ブライアン・ブレイドやダニーロ・ペレスだったので、その辺の人たちを聴いていって、徐々にはまっていきました」

※ブライアン・ブレイド(BRIAN BLADE)
現代のジャズ界を代表するドラマー。2000年よりウェイン・ショーター(サックス)のカルテットなどで活躍するほか、ジョニ・ミッチェルやボブ・ディラン、エミルー・ハリスなどロック/ポップ系アーティストのレコーディング/ツアーにも数多く参加。比類なき強烈なドラム・プレイで魅せる傍ら、自身のリーダー・バンドであるブライアン・ブレイド・フェロウシップでは全体での穏やかなアンサンブルを重視したアメリカーナ的要素が濃いサウンドを展開。2009年にはダニエル・ラノワらを迎え自らヴォーカルをとるシンガー・ソングライター的作品『Mama Rosa』を発表している。70年生まれ、ルイジアナ州出身。

※ダニーロ・ペレス(DANILO PEREZ)
65年生まれ、パナマ共和国出身のピアニスト。2000年から参加するウェイン・ショーター(サックス)のカルテットで鬼気迫るプレイを聴かせるなど、ジャズ界の第一線で活躍。近年のリーダー作では自身のルーツであるパナマの伝統音楽などを積極的に取り込み、独自のサウンドを追求している。