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朗読者として平和/反戦/反核を説き続ける吉永小百合、福島の詩を読みながら被災した人々の思いに寄り添う9年ぶりCD

朗読者として平和/反戦/反核を説き続ける吉永小百合、福島の詩を読みながら被災した人々の思いに寄り添う9年ぶりCD

9年ぶりの朗読CD 「忘れない、風化させない、なかったことにしないために」

 その声は凛としてゆらぎがない。やわらかさはあるが地に足がついている。何を読むか、何を伝えるか。自我はいらない、哲学はいる。吉永小百合の朗読は、「ろうどく」であり「ろうどう」でもある。そう、利他心から生まれるいのちがけのライフワークなのだ。

 吉永小百合は、原爆投下と終戦の年に生まれた。映画女優であると同時に、朗読者として、「平和」「反戦」「反核」を説き続けてきた。その声は聴く者の心をしずめ、静けさを呼び、場の気を浄化する。

吉永小百合 第二楽章 福島への思い Victor Entertainment(2015)

 1986年、吉永小百合は、戦争、原爆のあやまちを二度とおこさないための朗読活動を開始した。それは、97年『第二楽章』(広島編)としてCD化され、99年『第二楽章・長崎から』、2006年『第二楽章・沖縄から』と続き、そして、今回、9年ぶりに『第二楽章・福島への思い』をリリースする。

 3・11の東日本大震災後、福島に関する詩を原爆詩の朗読と一緒に読みはじめたという。きっかけになったのは、2011年夏の『東北の底力、心と光』展だった。東北地方の「衣」をテーマに温故知新を考える企画でディレクター・三宅一生から原爆詩朗読を依頼され、福島の詩人・和合亮一の本『詩の礫』『詩ノ黙礼』も託され、ともに朗読した。後日、佐藤紫華子の自費出版詩集『原発難民』が届き、チェルノブイリ事故以前から警鐘を鳴らし続けてきた詩人・南相馬在住の若松丈太郎の詩や“詩の寺子屋”の子どもたちの詩など、さまざまな福島の詩も集まり、CD制作につながった。

【参考音源】吉永小百合が2011年に行った原爆詩の朗読

 

 挿絵は、ジブリ作品の美術で知られる男鹿和雄。音楽は、尺八奏者の藤原道山。福島出身の遠藤千晶が箏で参加し、村澤丈児は、十七絃、三絃を演奏。合唱曲や唱歌「故郷」も収録。今も故郷に戻れない被災した人々の思いに寄り添い、少しでも力になることができれば、という願いが込められている。

 「忘れない、風化させない、なかったことにしないために」。吉永小百合は詩を読み続ける。声なき人の声を伝えるために、祈るように朗読する。そのうつくしい声を嗄らさせない世の中になることを信じたい。

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