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ジョニー・グリーンウッドがレディヘ色強い新境地に挑んだP・T・アンダーソン監督「インヒアレント・ヴァイス」スコア

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これまで以上にレディオヘッド色が強い、P・T・アンダーソン監督との3度目のコラボ

 先頃リリースしたライヒ《エレクトリック・カウンターポイント》の見事な演奏が記憶に新しい“現代音楽作曲家”ジョニー・グリーンウッドと、鬼才ポール・トーマス・アンダーソン監督との3度目のコラボ『インヒアレント・ヴァイス』は、ホアキン・フェニックス演じるヤク漬け探偵を主人公にしたコメディ・サスペンス。前作『ザ・マスター』のスコアにおいて、管楽器のパートが異様に薄過ぎた弱点を反省したのか、今回のグリーンウッドは得意のペンデレツキ風弦楽合奏を控えめにしつつ、代わりにコーラングレをはじめとする木管でテーマをしっとりと鳴らす新境地に挑んでみせた。加えて、出演者のひとりでハープ奏者のジョアンナ・ニューサムのモノローグをレディオヘッドの未発表曲に被せた《Spooks》やら、グリーンウッドのギター・ソロとオケの共演曲《The Golden Fang》やら、グリーンウッドお得意のオンド・マルトノとオケの共演曲《Adrian Prussia》やら、果てはアコギ、教会オルガン、ハーモニカをグリーンウッドがひとりで弾いた《Amethyst》まで投入し、これまでで最もレディオヘッド色の強いスコアとなっている。

JONNY GREENWOOD Inherent Vice Nonesuch(2014)

 

 本編後半に登場するフィリップ・グラスもしくはジョン・アダムズ風のミニマル・サスペンス曲も含め、既存の映画音楽の作り方と一線を画そうとするアンダーソン監督とグリーンウッドの実験精神は大いに買うが、この手の題材に関しては、ちとアプローチがインテリ過ぎたか。結果として、エルヴィスを凌ぐホアキン・フェニックスの極太モミアゲほどアクが強くなく、線の細いアンダースコアに徹したところは、大きく評価が分かれるだろう。むしろ強烈な印象を残すのは、オープニングタイトルで流れてくるクラウト・ロックの雄、CANの《Vitamin C》。こういう文脈で聴くと、完全にレディオヘッドの《Idioteque》の先祖としか思えないんですが。アルバム中盤で唐突に現れる坂本九《上を向いて歩こう》は、エンドロールでカラオケだけが流れてくる。

 

MOVIE INFORMATION

映画「インヒアレント・ヴァイス」

監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:トマス・ピンチョン「LA ヴァイス」(新潮社)
音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:ホアキン・フェニックス/ジョシュ・ブローリンオーウェン・
ウィルソン
リース・ウィザースプーンベニチオ・デル・トロ/他
配給:ワーナー・ブラザース映画
◎4/18(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田ほか全国公開

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