INTERVIEW

ヤング・ファーザーズ、ポップであることに背を向けず多岐に渡ってジャンルを横断したこれまでになくカラフルな新作

【特集:インディー・ポップ百景】 Pt.1

IF YOU'RE READING THIS ITS (NOT) TOO LATE
[ 緊急ワイド ]インディー・ポップ百景
10年代も半ばまで過ぎました。まだそんなこと言ってんの?という声もおありでしょうが、旬も流行も浅薄な理屈も時代のムードも超えた地平で響いてほしい音楽たちは、世界中から毎日のように登場しています!

 


 

YOUNG FATHERS
レフトフィールドなヒップホップだけやってても意味がない

 

 

 ヤング・ファーザーズのニュー・アルバム『White Men Are Black Men Too』は、自分たちにまつわるあらゆる先入観を取り払い、何よりもポップ・ミュージックたることをめざしてきた、このグループの本当の姿があきらかになった傑作だ。

 「俺たちは昔からポップ・ミュージックのファンなんだよね。で、優れたポップ・ミュージックを作るには無駄なものを省いていくべきだと考えている。だから今作のレコーディングは〈もっとはっきりさせよう。曖昧さを省こう〉とお互いに言って、それを意識しながら取り組んだよ。とにかく、できるだけシンプルにするようにね。本当に必要な相応しい音だけが残っているんだ」。

 こうグレアム“G”ヘイスティングス(発言:以下同)が言うように、本作は極めてシンプルで、厳選された音が詰まった一枚だ。ただ同時に、彼らのディスコグラフィー中、ここまで豊かで、多岐に渡るジャンルを横断したカラフルな作品は過去にない。クラウトロックアフロ・ミュージックに影響されたというスリリングなビート感や、エレクトロ的なアレンジ、ソウルのエレガントなメロディーまで、それらを自在にミックスしながら、本人たちの思う正しいポップスの形に集約。そういう意味でのシンプリシティーに貫かれた作品なのだ。アルバム後半のゴスペル・コーラスをフィーチャーした数曲に至っては、〈都市の聖歌〉とでも呼ぶべき普遍性を湛えている。アンダーグラウンド・ヒップホップ・グループというイメージは、もはや彼らのほんの一側面でしかない。

YOUNG FATHERS White Men Are Black Men Too Big Dada/BEAT(2015)

 2008年より地元エジンバラを中心に活動してきたヤング・ファーザーズの、本作での飛躍に繋がる第一ステップとなったのが前作『Dead』だ。同アルバムで昨年のマーキュリー・プライズを受賞し、この3人組はアンダーグラウンドから一気に浮上することとなった。ただし、ここで手にした成功への切符は、当人たちにとって予想外ではなかったという。それも『White Men Are Black Men Too』を聴けば当然で、グループがめざす場所とメジャー・シーンはさほど遠くないからだ。

 「マーキュリー・プライズはヤング・ファーザーズを知ってもらう絶好のチャンスだった。でもアーティスティックな面ではまったく関係がない。俺たちにはオリジナリティーがあって、他にこんなグループがいないことは、ずっと前からわかっていたからね」。

 本作のタイトルはすでにUK本国でも議論の的となっているが、こういうポリティカルな姿勢、挑発や問題提議を厭わないメッセージ性の強さもまた、彼らの大きな武器である。そして自分たちがポップ・アーティストだからこそ、ポリティカルなメッセージを広く、強く、多くの人々に届けることができる――ヤング・ファーザーズはそんな信念に基づき創作活動を繰り広げているようだ。

 「レコード店でちらりとこのタイトルを見て、ふと疑問に思ってもらうだけでもいいんだ。この世界は単純に白黒だけじゃなくて、もっといろいろなことが入り組んでいて、複雑で、みんな各々にいろいろな物語を抱えている。俺たちは聴く人、観る人を混乱させたい。なぜって人生というのは混乱続きなわけだからね。でも俺たちは単に政治的なグループってわけじゃない。あくまでも自分たちのことをポップ・ミュージック・グループだと思っている。ポップであることに背を向けて、アングラで左寄りなヒップホップをやっても意味がないし、自分たちの音楽をできるだけ多くの人に聴いてほしいからね。そうすることで、ポップ・ミュージックの意味自体を広げていけると思うんだ」。

【参考音源】ヤング・ファーザーズの2014年作『Dead』

 

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