アリス=紗良・オットがオーラヴル・アルナルズと共に繰り広げる〈再構築〉。ポスト・クラシカルの雄と新進気鋭の女流演奏家のタッグと言えばヒラリー・ハーン&ハウシュカの『シルフラ』(2012年)が思い出されるが、アプローチが同じでも今作が決定的に違うのは、これが〈ショパンの作品〉だということ。もはや決定盤の名高い『リスト:超絶技巧練習曲』(2008年)『ショパン:ワルツ全集』(2009年)で証明してきたアリス=紗良のロマンティックなピアニズムが、ここでは全く別の表情を魅せる。楽器や音響を変え、時に削ぎ落とし、創意が加えられた音楽、それでも根幹で光るのは〈ショパンのイデア〉に他ならない。