【今月のロマンス盤】

Peach sugar snow さよなら惑星 K&Mミュージック(2015)

最近のおすすめは、山梨のローカル・アイドル、Peach sugar snow※1。そもそもは3人組だったんだけど、今年に入ってメンバー2人が卒業してしまって、いま小学6年生のあいな一人で活動しています。当初からウィスパー・ヴォイスで歌うという珍しいグループで、プロデューサーの小林(清美)さんに話を聞いたら、〈優しく歌って〉って指導したらしい。初めてPeach sugar snowのデビュー・シングル(2012年発表“ひとときでも”)の音源を聴いた時は、全然声を張ってないからびっくりした。アイドル・ソングで声張らないんだ……と思って。

※1 地元・山梨の名産品である桃をPRするために結成された

さらに曲も良くて、それを〈アイドル三十六房※2〉でかけたの。南波(一海)さんと〈ウィスパー系だね〉って話をしたら、その番組をプロデューサーの小林さんが観ていたらしいのね。小林さんはウィスパーという意識はなかったんだけど、その時に〈ウィスパーなんだ、そっか、ではウィスパー・アイドルにしよう〉と、そこでコンセプトが決まったそう(笑)。

※2 〈南波一海のアイドル三十六房〉。タワレボで毎月第一木曜日に配信されている、音楽ライター・南波一海と嶺脇によるアイドル発掘番組

先日リリースされた、メンバーがひとりになって初シングル“さよなら惑星”は、ウィスパー・ヴォイスのTOKYO No.1 SOUL SETみたいな、カヒミ・カリィとSOUL SETを混ぜた感じの楽曲。小林さんが作詞した悲しいリリックなんですよ。ポップスとして非常に良い曲だと思いますので、ぜひ! ちなみにメンバーのあいなちゃんはピアノが得意で、ライヴではカヴァーや自身のオリジナル曲を披露しているなかなかの才女です。

 

amiina Canvas/○△□ PLATiCA(2015)

もう1組は、中学生のあみみいなから成るamiinaの『Canvas/○△□』。約1年ぶりの両A面シングルで、“Canvas”のほうは、僕のイメージではコールドプレイオアシスといったイギリスのスタジアム系ロックを思い出す感じ。彼女たちのこれまでのシングルはコーネリアスみたいだったりとか凝ったポップスだったんだけど、今回はストレートな楽曲になっています。バックのトラックと幼い声とのギャップがいいなと思うんですよね。

こういったアイドル・ポップスは、プロデューサーが音楽が好きな人たちで、アイドルを使ってそのサウンドを表現していることが増えている気がする。アイドルはプロデューサー・ミュージックだよね。だけど、それをちゃんと伝えられる魅力的なアイドルがいないとダメだし。

そういったもののひとつで気になっているのが、静岡のご当地アイドル、3776(みななろ)。南波さんからだいぶ前に教えてもらったグループで、最近は掟ポルシェさんが推してる。3776は富士山の標高3776メートルに由来していて、現在メンバーは一人になっちゃったんだけど、いま個人的にすごくおもしろいと思うんだよね。グループだった初期は、XTCコントーションズを演ったような楽曲や、ソニック・ユースみたいなのもあった。ギターもソリッドで変拍子も入っていたりして。リズムが一定じゃないから踊りづらいと思うけど、踊ってる。さらに20分もある長尺曲もあったり……なんかすごいよね。こういうアイドルが静岡から出てくるというのがまたイイんですよ。

【参考動画】3776の2015年4月のライヴ映像