中川家礼二が鉄道を愛してやまない理由

 自分の鉄道会社で自分の列車を走らせる、という野望を叶えるべく、お笑い芸人・中川家の大きいほうで、弟で、鉄道マニアの礼二が〈中川電鉄〉という架空の会社の社長になり、実際に鉄道会社を訪れ視察する番組「それゆけ 中川電鉄」。テレビ放送されていた「中川家礼二の鉄学の時間」に続いてスタートしたこの番組の全編がDVDとなり6巻同時発売された。

中川家礼二 『それゆけ中川電鉄1』 よしもとアール・アンド・シー(2015)

 鉄道愛があふれ出てしまい、本業でもその想いを発揮し楽しませてくれている礼二を案内するとなると、迎えるほうの緊張感も気持ちも違うだろう。鉄道会社の協力的な歓迎ムードが見ていて気持ちいい。報道以外でカメラが入るのも珍しいのではないかと思われる巨大ターミナル阪急梅田駅にも潜入している。現場の人たちの鉄道愛も、日本の鉄道が世界に誇れる要素の1つであるように思う。

 テレビでもよく見かけるあまりにクオリティの高い礼二の車掌アナウンスのものまねは、このシリーズでもお約束。元運転手という案内役の社員よりもそれらしい車両アナウンスを披露したり、各鉄道会社のヘルメットをかぶり車両基地を視察したり、最初の挨拶のくだりで名刺交換をする場面などは、中川家のコントを見ているようで得した気分になる。ただそれだけの場面なのだが、ギャグを強要されない場所に解放されただひたすらにロケ(視察)を楽しむ礼二を、いつのまにか笑って見ている。3巻に収録の第10話目では、鉄道会社ではなく、長野の鉄道好きの主人が経営する一風変わった民宿を訪れるのだが、特急列車あずさ号の1両を購入し、飾るだけじゃなく生きてる車両として改造し維持された、凝った内装に感動した礼二のいつもより力の入ったアナウンスが聞ける。

 日頃当たり前のように存在している鉄道だが、時間に正確な運行や快適な走行、安全性は日本が世界に誇るもの。わかってはいるのだが、なかなかそれを実感して乗車することはそうない。ふと、なんで彼や多くの人がこんなに鉄道を好きなのかと考えた時に、同時に鉄道の素晴らしさを知る。電車や踏切りの待ち時間も、心なしか穏やかな気持ちになるだろう。