デビューから早10年——ますます息のあったコンビで〈My Way〉を歩み続ける2人が、ハワイの仲間たちと吹かせるフレッシュな風!

 音楽が風を運んでくることがある。音で風景や空気まで伝わることがある——。Def Techのファースト・ミニ・アルバム『Def Tech』に驚かされてから早くも10年。今回のニュー・アルバム『Howzit!?』は、それ以来の驚きだった。英語の歌詞に聴きはじめは〈洋楽?〉と誤解したとしても、いつのまにかスムースに日本語のリリックが配され、曲の意味が染み入ってくる。これまでは曲のテーマに沿ってそれぞれが歌いたいことを自由に歌うことの多い2人だったが、今回は歌詞について新しい試みがあったという。

Def Tech Howzit!? 2VOX/Village Again(2015)

「いままでのように2枚の紙を別々にくっつけるようなやり方ではなくて、呼応させるようになりました。(お互いの歌詞を)しっかりと理解し合って、そのうえで繋がる歌詞」(Micro)。

 そんななか「(完成までに)5年かかりました」(Micro)というのが、日本語の歌詞とウクレレのアルペジオが美しいメロディーを紡ぐ“ふしぎだね?”。

「この5年間、アルバムを作るたびに毎回挑戦するんだけど、どうしても納得のいく歌詞が出来なくて。でも今回は納得のいく形でやっと出来た」(Micro)。

 バイリンガルのスタッフを交えて創作されたリリックが、一段深い刺さり方をしてくる。しかし、心地良さとノリを邪魔しないところは、いままで通りだ。

 また、サウンド面では、ハワイの音楽家によるアコースティック楽器の多用も今作の特徴。ジェイク・シマブクロShenが初めて出会ったのは2008年のことだが、それから温めてきた関係が、彼との共作曲“One Day”に結実した。

ブルース・シマブクロ(ジェイクの弟でウクレレ奏者)の家へバーベキュー・パーティーに行ったとき、ジェイクに(ウクレレを)弾いてもらったんだ。コードを弾いてもらってそれを僕のスマホで録ろうって。一度目の録音は東京からの電話が入ってNG。でも、ちょうどジェイクも弾き直したかったらしいからセーフ。スマホを機内モードにセットしてテイク2。で、結局そのテイク2がこのCDになっちゃった。だから車の音や子供の声はSEじゃなくてほんとにノイズ(笑)。いい雰囲気の楽しいノイズだね」(Shen)。

 本来はスタジオに入ってレコーディングし直すものだろうに、バッチリな演奏と雰囲気、意外なほどキラキラしたウクレレ本来の音ツヤにジェイクも納得。本作への採用が決まったのだという。さらにハワイからはギタリストのアーニー・クルーズJrらが参加している。

「ネットでやり取りをして、さらにギターとドラムやベースを加えるためにもう一度ハワイへ行って、また東京に戻ってミックスをして。音源が完成するまでにハワイと東京を何往復もした(笑)」(Shen)。

 うん、その空気がしっかり詰まってる。また、“Gone Surfin'”などで共作しているフレドロは、ラティーフタージ・ジャクソンとの仕事でも知られるスウェーデン出身のクリエイター。やはりネットでのやり取りと実際のセッションを組み合わせて制作を進めたという。道理で曲ごとにさまざまなフィーリングと広がりを感じさせるわけだ。

 Def Techならではのヴァリエーションと深みで、耳あたりの良さと、エヴァーグリーンな音楽性とを両立させたのは見事。『Def Tech』は若さが故の勢いが魅力の作品だったけれども、『Howzit!?』はそれをさらに上回る若々しさとエネルギーに満ちている。〈デビュー作以来の驚き〉と書いたのはこれが理由である。ハワイの風が吹き抜けるようなサウンドと言葉のボーダレス感は、いまだ経験したことがないものだ。

 

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 ここではDef Techの2人が近年に関わった外仕事を紹介! まずMicroは、DJ DECKSTREAMRahze名義で放った2011年作『Ta.la.la』(Sepera)でドラムンべース調の“Bring The Lights”に客演。2014年には、Cradle瀬戸智樹が新たに立ち上げたTHE CRADLEの初作『FEEL THE MUSIC』(Palette Sound/Village Again)でリード曲“永遠”を歌い、山下智久の最新作『YOU』(ワーナー)には、切なくも心温まるラヴソング“Love & Hug”に詞を寄せました。

 一方のShenは、元ニージャン・ミスティックアワが発表したばかりのジャワイアン作品『Aloha 'N' Irie Presents Stay Ready』(Awa)にゲストで歌唱。また、DJ SOULJAHの2014年作『Be My Guest』(Prime Cuts/illxx)には2人揃って駆け付けました! *bounce編集部