Love City 2015
[ 特集 ]都市インディーの源流

音楽の聴かれ方、表現の仕方が大きく変化した90年代。その幸福な時代を起点に、多様化する〈街の音楽〉など現在の日本のインディー界隈の源流を紐解いてみよう

 


 

ORCHESTRAL POP
世代順で追うと、トクマルシューゴ⇒cero⇒森は生きているあたりが中心と言えるだろうが、各々が周辺アーティストと相互で関与しながら、室内楽的な管弦楽器を含む多くの音を交えていることも昨今の都市ポップの特徴。oono yuukiや蓮沼執太フィルら、本項のラインナップ以外にも続々と。

 

GUIRO Album eight(2007)

バンド自体は4人組ながら、クラリネットやカホン、三味線まで飛び出す編成で精緻に構築される、静けさと透明感を湛えたバンド・アンサンブル。フリーキーな揺らぎが美しいブラジリアン・ジャズに醒めた声音の日本語フォークを乗せた本作は、〈エア・グルーヴ〉としても機能するであろう、瑞々しいAOR集だ。 *土田

 

 

トクマルシューゴ EXIT Pヴァイン(2007)

海外デビューが先行した〈ひとり楽団〉の代名詞が、日本での評価を決定付けた3作目。50種類以上の楽器が活き活きと奏でるシンフォニーは、生命力に満ちたファンタジーを描き出す。近年は自身のバンド・メンバーでもあるユミコらとYankaNoiも結成し、多彩な音と戯れながら異国情緒溢れる歌世界を築いている。 *土田

 

 

1983 SUITE kiti(2015)

oono yuukiをはじめとした数多の〈楽団ポップ〉界隈でも活動する、クラリネットやトランペット、フルートを含む6人組。ジャズやカントリーにMPB的な意匠も柔和に溶かし込みつつ、中心にあるのはあくまで素朴な歌。どことなくYogee New Wavenever young beachらと通じる〈喫茶ロック〉経由のシティー感も。 *土田

 

 

ROTH BART BARON ロットバルトバロンの氷河期(ROTH BART BARON’S“The Ice Age”) felicity(2014)

帰る場所を持たない東京にいるからこそ夢想する、どこでもない異国の広大な風景。そんな夢想的な世界をギターやピアノ、バンジョーやマンドリン、フィドルといった多種多様な楽器で描いてみせる2人組の初作。繊細な響きの北欧ポップやアメリカーナを思わせるアーバン・フォークロアがここに。 *小野田

 

 

森は生きている グッド・ナイト Pヴァイン(2014)

ROTH BART BARONと共に吉田ヨウヘイgroup『Smart Citizen』をバックアップした、東京は武蔵野の5人組バンド。フォークやジャズからエキゾにアンビント現代音楽まで、さまざまな音楽が溶かし込まれた滋味深いスープの匂いが音楽の深い森へと誘う、プログレッシヴかつサイケデリックな2作目。 *小野田

 

王舟 Wang felicity(2014)

アシッド・フォークオルタナ・カントリーギター・ポップに通じる豊かな歌心を紡ぎ出すシンガー・ソングライター。トクマルシューゴ・バンドや片想いQuattroのメンバーがバックを務めた初作は、上海生まれ/日本育ちという彼のバックグラウンドから沸き上がる国籍不明のルーツ・ミュージック集だ。 *小野田

 

Keishi Tanaka Alley Niw!(2015)

Riddim Saunterのヴォーカリストによる2枚目のソロ作。ストリングスやブラスまでをフィーチャーした豊潤なアンサンブルのもと、爽快で洒脱なポップソングを多彩なフォルムで紡いでいる。とりわけ、色濃く滲んだソウルのフィーリングが印象的。タイトなグルーヴに託されたロマンティシズムが美しい。 *澤田

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