欧州で盛んになってきたブギー・リヴァイヴァルやモダン・ソウルの評価軸も背景にありつつ、エレクトロ・ファンクをモチーフにした80年代オマージュや疑似ディスコが盛んになり、一方のメインストリームではモダン・ヴィンテージなソウル再生も流行って……というのが2000年代の話。そう思えば、現在騒がれている流れもこの10年ほどを俯瞰で見ればすべて地続きのように思える、という人は多いでしょう。そんなわけで、浅薄な分析よりもいろいろ聴いて楽しむのが正解だと思います!

 

CHARLIE WILSON Forever Charlie RCA(2015)

スヌープR・ケリージャスティンら甥っ子たちのサポートもうまく活用してサヴァイヴし続けるアンクル。本作は時代の空気を投影したように自身の80年代マナーを出し入れし、いつも以上の快活さでソウル/ファンク方丈記をさらりとアピール。血気盛んな“Sugar.Honey.Ice.Tea.”では毎度のドギーな絡みもあります。

 

 

7 DAYS OF FUNK 7 Days Of Funk Stones Throw(2013)

スヌープがライオン化した年の暮れ、スヌーパジラを名乗ってデイム・ファンクとのコラボで発表したモダン・ファンクの一週間。デイムのブギー趣味からメロウでザッピーな成分を抽出し、主役のとろける語り口が映えるレイドバック・チューン中心の内容が心地良し。スティーヴ・アーリントンブーツィー・コリンズといった師匠たちも参加。

 

 

PHARRELL WILLIAMS G I R L I Am Other/Columbia/ソニー(2014)

説明不要なヒット・アルバム。古典のロックンロール的ですらある“Happy”の雰囲気は本作にあってもやや異質なノリにも思えてくるものながら、全体をうっすら統一しているのは洗練された非肉食的なエレガンス。本作以降もあれこれ忙しいファレルだけど、ここにあるスマートなモードを直接的に持ち込めた作品となると、まだ今回の『Bush』ぐらいしか例はなさそうです。

 

 

MARK RONSON Uptown Special Columbia(2015)

氷山の一角に異様に評価が集中するのも極めて現代的な事象なのでしょうが……昨年が“Happy”の年なら、今年を代表する一曲が“Uptown Funk”になるのはもう間違いないでしょう。機を見るに敏なオマージュの巧みなプレゼンぶりは活動当初から変わらないマークの魅力。そういや本作のイントロにもスティーヴィーのハーモニカが。

 

 

MONIQUEA Yes No Maybe MoFunk/Crown City/ディスクユニオン(2014)

G系ラッパーのXL・ミドルトンブギー・ファンク趣味を追求したレーベルの歌姫。初期エレクトロソーラータブーの影響にフォーカスした80年代アプローチに、小生意気なヴォーカルが迫る好曲揃い。デイム・ファンクとも共振するXLらしく、こだわり十分な音作りも時代を余裕で超越してます。気取った“A Certain Way”が特に美味!

 

 

CLIFF DAWSON Turn It Up Clida(2014)

ボードウォークから粋なディスコ・ソウル盤を出していた黄色ニット野郎が、時代の流れを睨んで(?)32年ぶりに投下したセカンド・アルバム。二枚目な歌声とバシバシ弾けるビートから伝わる洒脱な凄みは、円熟味に逃げるつもりなどまるでないカッコ良さです。ルー・カートンデヴィッド“ピック”コンリーらも参加。

 

 

THE TIME The Time Warner Bros.(1981)

ミネアポリス・ファンクの広がりを体現する個性的なキャラクターを数多く輩出した、プリンスの傀儡的なバンド。このデビュー作にはかつてスヌープも直球でカヴァーしたクールな“Cool”を収録。マーク・ロンソン好きにはいろんな意味で推薦したい『Ice Cream Castle』を含め、夏には全作品のリイシューもある模様です。

 

 

TUXEDO Tuxedo Stones Throw(2015)

ちょうどいい塩梅がハマッたのか、日本でもグッド・ミュージック・ラヴァーに大人気の一枚。メイヤー・ホーソーンがブギー趣味で結び付いた盟友ジェイク・ワンタキシードを着込み、ヘタウマ感のエクスキューズも用意しながらディスコ/ファンクへの愛でもってグイグイ押しまくる。ファンシーでメロディアス!

 

 

THEOPHILUS LONDON Vibes Warner Bros.(2014)

リオン・ウェアを模したジャケの前作に続き、メロウネスを軸にしながら80年代への憧憬を漲らせた逸品。そのリオンを招いた潤いのスロウから、プリンス風やディスコ・ラップ、シンセ・ファンク、そしてフォースMD'sデヴ・ハインズを迎えたブラコン調のスロウに至るまで、もう少しモダンに評価されてほしかった感じ。カニエ先生もこういうのをやってほしいです。

 

 

BROOKLYN SOUL BISCUITS Soul Biscuits Plaza(2013)

ブラス・コンストラクションでNYファンク・シーンを牽引し、80年代にはスカイなどディスコの名仕事も多く残す名匠ランディ・ミューラーが新たに始動したパーマネントなバンド・ユニットの初作です。メンバーにはファミリー・スタンドジョー・パブリックで活躍した面々が名を連ねていて、当然のようにブギー文脈で評価できる強力なファンク~ディスコ・トラックが目白押し!

 

 

ONE WAY Who's Foolin' Who MCAユニバーサル(1982)

このタイミングで何度目かの日本盤化が叶っているデトロイト産バンドの代表作。本当なら他のネタ入り盤とかも丸ごとリイシューしてもいいぐらいの流れが来てるとは思うのですが、大ヒットした“Cutie Pie”を含む本作の価値にもちろん揺るぎはなし。この時代特有の、中身と関係ない美女ジャケも最高ですね。

 

 

THE GAP BAND The Gap Band II Mercury(1979)

チャーリー・ウィルソンがリードを務め、最近また何かと話題となっているギャップ・バンド。件の“I Don't Believe You Want To Get Up And Dance(Oops!)”はここに収録されていますが、思い返せばスヌープとチャーリーが初合体した際の一曲も同ナンバーをネタ使いしたものでした。そうでなくても昨今のソウル/ファンク再生の根源にある重要バンドです。

 

 

R.J.'S LATEST ARRIVAL Harmony Golden Boy/ディスクユニオン(1984)

スラム・ヴィレッジアンプ・フィドラーの裏で暗躍してきたデトロイトの裏ボス、RJ・ライスヤングRJの父)のプロジェクト。かつて『Shackles』の名でもCD化されていた隠れ名盤が、このタイミングで復刻されました。ディスコの変容とプリンスの台頭とヒップホップの到来が衝突した時代ならではのエレクトロ・ファンクが並び、“Get It Up”なんかは実にナウです~。