COLUMN

表現に枠を課さない笹久保伸の最新作は、高橋悠治の最初期作から近作までを一望のもとに聴かせるギター作品集

表現に枠を課さない笹久保伸の最新作は、高橋悠治の最初期作から近作までを一望のもとに聴かせるギター作品集

 笹久保伸は表現に枠を課さない。自分のやろうとすること、やりたいことを着実にかたちにする。誰の眼にもはいる、目立つというのではない。でも、その心身は動いているし、何かがおこっている。その動きのなか、藤倉大とのおもいがけぬ共作『Manayachana』のような果実も生まれうる。

 新しいアルバムは、『高橋悠治ギター作品集』。

 高橋悠治にはこんなにギターの楽曲があったのか、と驚く。知らないものが多い。知っているタイトルもあるが、べつの楽器のためのものじゃなかったか、とも。

笹久保伸,TIMOTHY HARRIS 道行く人よ、道はない 高橋悠治ギター作品集 ALM Records/コジマ録音(2015)

 ほとんどは2000年代、それも5、6年のうちに作曲。笹久保伸のペルー滞在は2004~2007年で、以後、秩父を拠点としてこの列島各地で活動をしている。作曲者とギタリストとの出会いによって、これらは書かれている。笹久保伸はアート活動「秩父前衛派」をおこなっているところから、2つの楽曲が秩父とつながりを持っていることも頷ける。

 1970年代後半におなじALM Recordsから佐藤紀雄のアルバムがリリースされ、そこに収められていた2人の作曲家は高橋悠治と近藤譲だった。作品を委嘱したりアドヴァイスしたりする演奏家がいることで作曲家は作品を書く。作曲家は、自らが弾くとはかぎらない楽器と、その奏者の心身をとおして、間接的に出会い、その奏者をとおして、発音する。ときに楽器は言うことをきかず、予想外の音となってしまうことも含みつつ。

 減衰する音たちでどううたを紡ぐかを、ピアノ作品での語法と近くありながら異なったギターで試みる作品たち。その1音1音の、また楽器の、奏者のたたずまいが、作曲家自身とこだまをかわす。

【参考動画】2012年に公開された笹久保伸による“John Dowland Returns”

 

LIVE INFORMATION

『高橋悠治 ギター作品集CD発売記念リサイタル
道行く人よ、道はない』
○7/26(日)18:45開場/19:00開演 
会場:東京オペラシティ 近江楽堂

http://shin-sasakubo.com

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