ありがたいことに日本には〈世界的な〉演奏者やグループが多数来日する。しかし中南米系ライターの立場からいわせると、〈世界的な〉とはいえ、英語圏ではない中南米は軽く見られているのか、なかなか認知度が上がらない。

 メキシコのパーカッション・アンサンブル。タンブッコは押しも押されもせぬ世界的なグループだ。結成は1993年。打楽器による作品。さらにラテンアメリカの作曲家による作品を積極的に発表している彼らだが、2011年には外国人としては2人目の国際交流基金賞を受賞するなど、日本とのつながりも深い。その後、彼らは日本の若手作曲家4人をメキシコに招き、共同作業によって作品を仕上げるというプロジェクトを行っている。

 このとき筆者はメキシコシティでのリハーサルから公演までを同行取材したが、なぜ若手を招聘したのかをリカルドに訪ねると、完成されたものではなく、これからの可能性を秘めている才能と、一緒に作品を作り上げたいという答えが返ってきた。こうした、〈攻めの型〉ともいえるスタイルで彼らは4度のグラミー賞ノミネートに輝き、世界中のステージを巡ってきた。

タンブッコらによる〈Pencils〉のパフォーマンス映像

 今回用意されている演目を見てみたい。スティーヴ・ライヒの《木片の音楽》は世界のマスターピースとするなら、メキシコの作曲家エクトル・インファンソンの“あざのできる音楽”は前回の来日でも披露されたタンブッコのマスターピース。ハンガリーのバルナバシュ・ドゥカイによる“オーヴァー・ザ・フェイス・オブ・ザ・ディープ”は、同名アルバムでヴィオラ、コーラス、マリンバなどいろいろなヴァージョンで収録されている作品。まさに眼前の深い霧に包まれたような世界を醸し出すが、タンブッコ版ではどんな仕上がりになるかが楽しみだ。

 さらにリカルドの手によるカリンバとマリンバのための新作もあるという。同じアフリカ・ルーツの楽器だが、情報ではここでいうマリンバは現代のコンサートマリンバとのこと。つまりルーツとモダンのせめぎ合いを感じる作品になるのではという想像が、ますます期待を膨らませてくれる。そのほかのタイトルからも、欧米、そしてラテンアメリカの作品が入り交じるコンサートになりそうだが、常にユーモアのセンスを忘れず、サービス精神に富んだ彼らのことだ、きっと楽しませてくれるに違いない。

 世界中で評価されるタンブッコ。そろそろ日本の聴衆の評価が高まってもいい頃だろう。というわけで、まずは彼らの音楽世界に触れてほしい。

 タンブッコのプロモーション映像

 


LIVE INFORMATION
Music Program TOKYO
プラチナ・シリーズ第1回
タンブッコ~メキシコ発、驚異のパーカッション・アンサンブル~

2015年10月4日(日)東京・上野 東京文化会館 小ホール
開演:15:00

■出演
パーカッション・アンサンブル:タンブッコ
リカルド・ガヤルド(芸術監督)
アルフレッド・ブリンガス
ミゲル・ゴンザレス
ラウル・トゥドン

■曲目
G.フィトキン:フック
H.インファンソン:エマトフォニア(あざのできる音楽)
B.デュカイ:オーヴァー・ザ・フェイス・オブ・ザ・ディープ
R.ガヤルド:カリンバとマリンバのための新作(世界初演)
S.ライヒ:木片のための音楽
C.グリフィン:過去の化学作用の持続
J.カミルアガ:ちびっこコンガのための四重奏
A.ブリンガス:バランコ

https://www.t-bunka.jp/

2015年9月26日(土)~2015年10月10日(土)まで全国6箇所ツアー
https://okamura-co.com/