COLUMN

映画「ギターマダガスカル」 インド洋に浮かぶ〈奇跡の島〉マダガスカルの暮らしに息づく音楽のルーツを辿るロードムービー

アフリカ大陸の南東部インド洋に浮かぶ“奇跡の島”で進化を遂げてきたマダガスカルの音楽のルーツを辿るロードムービー

(C)FLYING IMAGE

 

 素晴らしい音楽映画だ。いや「音楽」という但し書きがなくても、これは素晴らしい映画だ。

 インド洋の巨大な島国マダガスカルの音楽は80年代末のワールド・ミュージックのブームで紹介されて以来、ユニークなアフリカ音楽の一つとしてそれなりに認知されてきた。アコーディオン奏者のレジス・ギザヴォや、この映画にも登場する超絶ギタリストのデ・ガリのように、国際的に活躍している人たちもいる。

 しかしこの映画に登場するミュージシャンや音楽のほとんどは国際的にはまだあまり知られていない。撮影されているのは、観光写真でおなじみのバオバブの巨木やキツネザルとはちがって、赤土の町や灌木の村や田園の何気ない場所と、そこで展開される人々の暮らしであり、その中に息づいている音楽や踊りや儀式の光景だ。

 伝統的な儀式の演奏とちがって、都市ではポップス化も進んでいるが、そうした音楽ですら伝統と無縁ではない。その素晴らしい様子を記録にとどめたいという思いにかられて、監督はこの映画を撮ったのだろう。その視点を凝縮するような映像が、冒頭に登場する。小舟で漁に出た漁師が、釣り糸をやおら弦楽器のカボシに持ちかえて、今日は魚がとれないと、もう一人の舟人に向かってうたいはじめるのだ。

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 以下、どの場面の人々もミュージシャンも光景も実に見応えがある。

 自らのグループ、ハズライと共に、つれない女の子についてのポップな歌をうたう島中部の首都アンタナナリヴの人気歌手トミノは、伝統的な太鼓ハズライの革が破れたので、修理するため、わざわざ南部のマシアナカまで旅に出る。それはその太鼓が伝統的な儀式に由来するもので、単に革をはりかえればすむ、という次元の楽器ではないからだ。

 著名人のデ・ガリですら、伝統的なファマディハナの儀式が行なわれる町までやってきて、神様をたたえる歌の演奏に加わる。ファマディハナは、墓に眠る先祖の遺骸を包む布をとりかえる儀式で、遠い昔、インド洋を渡ってこの島にやってきたマレー系の人々が持ってきたものと推測されている。 

 この儀式のために村人が山に登る映像は圧巻だ。「寒いといけないから」と言って遺骸に布を巻く人々の心は、いまも祖先と共に暮らしている。この映像を見ると、その少し前にテタが南部の町で墓参する様子が挿入されていた理由も納得できる。パリを拠点にしてレゲエもやるミュージシャンのミカでさえ「人は死んでも魂はそこにいる」と語る。そんな人々の「思い」がマダガスカルの音楽の優しさの背景にはある。伝統的な儀式をとらえたものでは、アコーディオンとカボシの演奏で亡くなった王様の魂を呼ぶサカラヴァ人の映像も忘れがたい。何度でもくり返し見たくなる映画だ。

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映画『ギターマダガスカル』
監督・脚本:亀井岳  撮影監督:古木洋平  編集:橋本健太郎
出演:トミノ/ババ/テタ/デ・ガリ/ミカ/他
配給:FLYING IMAGE (2014年 日本 106分)
◎6/20(土)新宿K's cinemaにてレイトショー 横浜・大阪・京都・神戸上映決定!
ほか全国順次公開予定
http://www.guitarmadagascar.com

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