サティの音楽にはフランス近代の色彩感と、無機質な響きが同居する。その厄介な「2つの貌」をどう扱うかで、ピアニストの“質”が否応にも暴かれてしまう。このアルバムでホス・オキニェナは敢えて余分なニュアンスを排し、無機質な表情を際立させる。加えて遅めのテンポ設定。彼はフランス音楽という領域ではなく、近/現代音楽テリトリーの作品として扱う事で、サティ独自の美観や浮遊感を最大限生かすことに成功している。高名な《ジムノペディ》のスローながらも凛とした響きも良いが、《ひからびた胎児》などでのタッチの絶妙さは実に印象深い。このピアニスト、今後の活躍が楽しみだ。

【参考動画】ホス・オキニェナの2013年作『Aita Donostia:Piano Music』収録曲“Ilargitan”