[緊急ワイド]永遠にマライア・キャリー
天使に休息の日は訪れる? 激動の日々はまだまだ続くのか? それでもひとつ確かなのは、彼女がこれからも歌い続けていくということ。デビューから25年を経て、時代も一巡した。古巣のレーベルに帰ってきたマライア・キャリー、永遠の歌はまたここから響き渡る

 


 

Discography 1990-1999

MARIAH CAREY Mariah Carey Columbia/ソニー(1990)

何とも言えない緊張感を伴ってゆっくり昂揚していくデビュー・シングル“Vision Of Love”から4曲連続で全米#1ヒットを送り出した完璧な処女作。ホイットニー・ヒューストンを手掛けてきたヒットメイカーのナラダ・マイケル・ウォルデンをはじめ、レット・ローレンスらのブラコン時代の情緒を残した手捌きも、都会的な雰囲気を醸造するのに好作用している。演奏陣にはマーカス・ミラーナイル・ロジャーズの名もある。

 

 

MARIAH CAREY Emotions Columbia/ソニー(1991)

エモーションズ“Best Of My Love”のグルーヴを引用したような#1ヒットの表題曲など、数曲のプロデュースに絶頂期のC&Cミュージック・ファクトリーを迎えた2作目。そこでラテンやハウスの艶めかしさも織り込みつつ、一方ではナラダ組のウォルター・アファナシエフと組んだマライア自身のプロデューシングも本格的にスタート。惜しくも2位に終わったスロウ名曲“Can't Let Go”などこちらの実りも多く、またしても名盤に。

 

 

MARIAH CAREY MTV Unplugged Columbia/ソニー(1992)

アファナシエフと共同プロデュースした、MTVの看板企画におけるライヴEP。この時点で#1なセトリという感じながら、圧倒的な歌唱力と親密な空気感には初々しさも滲ませる。2作目でキャロル・キングと共作した“If It's Over”にも光を当てつつ、ハイライトは原曲同様に全米#1を獲得したジャクソン5“I'll Be There”のカヴァー。そこでジャーメイン役を務めたトレイ・ロレンツのほか、コーラス陣には無名時代のケリー・プライスも。

 

 

MARIAH CAREY Music Box Columbia/ソニー(1993)

トミー・モトーラとの結婚直後に登場したサード・アルバム。ジャケのクリーンな雰囲気が示すように2作目の粋な部分がいきなり抜け落ちた面もあるが、セールス枚数では全キャリア中でこれがトップ。メアリーJ・ブライジを手掛けたデイヴ“ジャム”ホールを起用してのヒップホップ・ソウル“Dreamlover”と、大ぶりなバラード“Hero”が#1ソングに。ベイビーフェイスのペンによる簡素なスロウやニルソン“Without You”のカヴァーもハマっている。

 

 

MARIAH CAREY Merry Christmas Columbia(1994)

 日本におけるマライア感に多大な影響を及ぼしたクリスマス・アルバム(日本でのセールスは実に250万枚!)。アファナシエフやランディ・ジャクソンシンディ・ミゼルらこの頃の〈マライア・ファミリー〉に囲まれて賑やかに制作された感じで、定番ソングなどは2010年のクリスマス盤と聴き比べてみるのもおもしろいだろう。なお、この年の成果としてはルーサー・ヴァンドロスのアルバムで声を重ねた“Endless Love”も忘れちゃいけない。

 

 

MARIAH CAREY Daydream Columbia/ソニー(1995)

 引き続きデイヴ・ホールの手による“Fantasy”が#1になったオリジナル4作目だが、昨今ではフィフス・ハーモニーが“Like Mariah”でネタ使いした“Always Be My Baby”のほうが記憶に残る#1ヒットか。同曲を手掛けたジャーメイン・デュプリとの邂逅という意味でも重要で、モダンなR&Bへの傾倒も現れはじめた力作と言えそう。もちろんボーイズIIメンとの“One Sweet Day”は、先日も“Uptown Funk”が届かなかった16週連続#1という最高峰。

 

 

MARIAH CAREY Butterfly Columbia/ソニー(1997)

 モトーラと別居(翌年に離婚)したタイミングも関係あるのか、ヴィジュアルの方向性をガラリと変えた5作目。内容はそれ以上に野心的で、この年を席巻したパフ・ダディによる#1ヒット“Honey”や、ボーン・サグズン・ハーモニーから独特のフロウを授かった“Breakdown”、ミッシー・エリオットのペンによるスロウ“Babydoll”、濃密なプリンスのカヴァー“The Beautiful Ones”など同時代的なR&B/ヒップホップにグッと入り込んだ傑作だ。

 

 

MARIAH CAREY Rainbow Columbia/ソニー(1999)

モトーラの息のかかったアファナシエフの名が消え、ジェイ・Zとの#1ヒット“Heartbreaker”を手掛けたDJクルー&デュロジャム&ルイスTLCで当てたばかりのシェイクスピアらを起用、より気ままにアイデアを転がす様子が楽しい。マスターPスヌープを迎えつつ、先日タキシードもやっていたスヌープ&ネイトのリメイクを爽快に披露したり、フィル・コリンズの〈見つめてほしい〉を爆唱したり、何か凄すぎて大笑いしてしまう痛快作である。