You Can't Judge One
〈ロックンロールを取り戻せ!〉を合言葉に、年季の入ったロック親爺も、新しもの好きのミーハー女子もまとめて取り込んで、世間を大いに騒がせたストライプス。でも、本番はこれから! 柔軟な感性で音楽性の幅を広げた2年ぶりのアルバムが、4人の少年をさらなる勝利へと導く!

THE STRYPES Little Victories Virgin EMI/ユニバーサル(2015)

まだこんなポテンシャルを秘めていたとは!

 〈恐るべき子供たち〉――これはアイルランド出身のアッシュが10代でデビューした時に付けられたコピーだが、四半世紀を経てアイルランドはまた規格外の10代バンドを送り出した。センセーションを巻き起こしながら2013年にデビューし、ファースト・アルバム『Snapshot』で世界的なブレイクを果たしたストライプス。自分たちが生まれるよりも遥か昔の音楽であるリズム&ブルースに心酔し、それを迷いも衒いもなく2010年代にアップデートしてみせる姿は、驚異であり脅威であった。50年以上に及ぶロックの歴史に、時代の壁を超えてまったく同列で触れられる世代だからこそできた芸当だろう。だが、ストライプスのポテンシャルは、まだまだそんなものではなかった。

 今回登場した2作目『Little Victories』で、彼らは成長とか進化の斜め上を行くほどの飛躍を遂げている。ハード・ロックにブリット・ポップ、そしてヒップホップまでを血肉化した、圧倒的なスケールのサウンドを鳴らしているのだ。個人的には、レッド・ツェッペリンばりのキレッキレなギター・リフと、オアシスさえも彷彿とさせる泣きメロがツボ。ともあれ、もはやストライプスをカヴァー・バンドなどと見なす向きはなくなるだろう。快哉。『Little Victories』という名の大きな勝利である。 *鈴木

 

キャーキャー騒ぎたくなる!

 何しろまだ平均年齢18歳。ゆえに、(16歳当時の演奏力とブルース・ロックへの深い理解も驚異だったけど)ずいぶん成長したなあ……と、このセカンド・アルバム『Little Victories』に少々の上から目線で感慨深いものを感じる諸兄も、いらっしゃることだろう。が、むしろ聴けば聴くほど私は下から目線でキャーキャー言いたくなる! 音楽的な幅を広げ、ハモンド・オルガンやパーカッションなど新たな楽器も導入し、しかもさらに演奏力の腕を上げているストライプス。その現在地点のカッコイイことといったら!

 百戦錬磨のロックスターのように、この4人の若者は泰然と、あたりまえの顔をして、次のフェイズに足を進めた。変わらず生音の迫力と熱にこだわりつつ、おそらくリスナーとして、デビュー後はヒップホップやエレクトロなどにも興味を持ったであろう様子が、ビートの組み立て方や曲の展開から聴き取れる。アイルランドを離れ、世界をツアーして知った価値観や音楽をめきめき吸収しただけでなく、鮮やかにアウトプットしているのが良い。恋の歌やバラードも年齢を重ねて堂に入ってきた。加えて、この音が放つ純度の高いキラキラ感は、楽しくレコーディングした証拠! ああ、何て眩しい一枚か。ああ、私があと25歳若かったら! *妹沢