INTERVIEW

HER NAME IN BLOODの〈野生スイッチ〉がオン! ライヴ感強めた激烈なメジャー初EPと型に嵌らない自身のサウンドを語る

【特集:日本の重音 2015】Pt.1

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  • 2015.09.07

【Click here for English translation】

LOUDER JAPAN
[ 特集 ]日本の重音 2015

不敵に刻まれるリフ、野獣の如き咆哮、急転直下のブレイクダウン、地鳴りのようなツーバス……滾らずにはいられない要素が満載の重音マップ、2015年度版!

 


 

HER NAME IN BLOOD
野獣スイッチが入った5人はもう止まらない! どこへ行こうと大暴れするぜ!!

 

野獣モードと人間味

 題して『BEAST MODE』。HER NAME IN BLOODのメジャー第1作は、そのタイトルが示す通り、まさに野生モードの生々しい激烈作品だ。

「言ってみれば〈野生スイッチ〉、みたいな。まさしく俺らにピッタリなタイトルだと思う。いままでが地下活動だったってわけじゃないけど、これから表に出ていって野生が放たれる、みたいな意味合いもあって。メジャーに行ってヌルくなるんじゃないかとか、そういった心配をしてた人も少なからずいると思うんですけど、どこに行こうと俺たちは変わらず大暴れするよ、っていう。〈本能を失っちゃいないし、お前らも失うなよ!〉という感じで」(Daiki、ギター)。

HER NAME IN BLOOD BEAST MODE ワーナー(2015)

 こんな言葉にも裏付けられている通り、EPと呼ぶには濃すぎるこの音源に、世間に対する媚びはまるで感じられない。2013年の『THE BEAST EP』や2014年作『HER NAME IN BLOOD』といった近作、そして説得力満点のライヴ・パフォーマンスに魅了されてきた読者の期待を超越した新曲群が、ここには詰め込まれている。

「より広いフィールドで、より大きな展開をめざしたいというのが前々からあって。ただ、だからといってポップ/キャッチーになるとかではなく、むしろそれを逆手に取りたかった。メジャー・デビューというのは、自分たちの理想をより追求できる環境変化だと思ってるし」(Ikepy、ヴォーカル)。

 今作について特筆すべきことのひとつに、ライヴ感の強さというものがある。従来の作品についても、ライヴとのあからさまな温度差があったわけではないが、ここではそれが完全になくなっていると言い切りたい。

【参考動画】HER NAME IN BLOODの〈SCREAM OUT FEST 2014〉でのライヴ映像

 

「レコード会社やマネージメントから、〈ライヴがすごくカッコイイんだから、そのライヴ感ってものをもっと音源でも出すべきだ〉と言われて。そういった意見は嬉しくもあったし、自分たちとしても頷ける部分があったから……。いままでは結構、バチバチに縦に揃ってるグリットにハマってる感じの音にしてたんですけど、今回はちょっと人間らしい要素というのを残していて。例えば仮にリズムが少々ズレてたとしても、カッコ良ければそれを採用、みたいな。そこがウチらの良さでもあるっていうことで」(Daiki)。

 つまり今作での彼らは、野獣モードであると同時に、ヒューマン・モードでもあるということ。機械のようなスマートさではなく、血の通った者ならではの感情の波が伴っているのだ。

 

 もっと捻りたい

 

 ここで改めて、彼らの音楽的な立ち位置について。いわゆるラウド・ロック百花繚乱の現在にあって、彼らの音はその典型とは一線を画すものだし、教科書通りのメタルコアでもない。実際のところ当事者の彼ら自身はそこをどう自己分析しているのだろうか?

「やっぱ基盤はメタルとかだけど、それだけじゃないというのが大きいと思いますね。カッコ良く言うと、〈ハイブリッド〉というか。だから、こういう音でなければいけないっていう定義はあんまりなくて。自分たちで納得できていて、カッコ良ければそれでいいというか」(Ikepy)。

「自分たち的には、例えばメタルコア・バンドとはあんまり思ってないんです。いちばん根っこにあるのはメタルとハードコアだけど、ただそれをそのまんまやるというわけじゃなくて。うちのメンバーは、ホントにオール・ジャンルでいろんな音楽を聴くんですね。それが無意識のうちに勝手にまとまってるというか」(Daiki)。

 実際に聴けばわかるのは、彼らの楽曲が〈型〉に嵌まっていないということ。ラウド・ロックというフィールドにもメタルコアというジャンルにも、いつのまにか楽曲の様式のようなものが出来上がってきている感があるが、このバンドはそうした音楽的飽和状態とは無関係の場所にいるのだ。

「そういう型通りの音楽に自分たち自身がちょっと飽きてるというか、そういうバンドにはなりたくないな、というのがある。〈型を壊す〉というよりは、〈もっと捻りたい〉というのがあるんです。もちろんセオリーみたいなものを守ってる曲というのもあるにはあるけど、聴いてる人たちの〈次、こう来るだろうな〉という予測を常に裏切るようでありたいし、しかもそこがクセになるような感じでありたい」(Daiki)。

 彼らの音楽を構成する要素について、より具体的な分析をしようとすると、今回の取材に応じてくれたIkepyとDaikiからは、パンクやドゥーム・メタル、さらには「本当にオールド・スクールな70年代のハード・ロックから、最新鋭と言われてるものまで」という言葉も出てきた。つまりジャンル的な横の広がりばかりではなく、縦軸の奥行きや深さも伴っているのだ。20代の彼らにとって70年代ロックというのは何世代も前のものであるはずだが、そう指摘すると、次のような答えが返ってきた。

「僕の場合、それは完全に親の影響で(笑)。親に聴かされて、その時自分がカッコイイと思ったものを聴き漁ってるうちにハマってたという感じ。ブラック・サバスとかAC/DCとか、ディープ・パープルキッスもそうですけど。特に俺とIkepyは、そういう古いのもすごく好きで」(Daiki)。

 そんな、カテゴリも時代も超越した彼らの視野は、当然ながら国境すらも飛び越えている。Ikepyは「主にアメリカのバンドに影響を受けてきた自分たちとしては、やっぱりあの国に挑んでみたいという気持ちが強い」と語っているが、実際、今後の国外での活動についても、水面下でさまざまな調整が進んでいるようだ。

「なんかいま、夢が広がりつつある状態です。自分たちが影響を受けてきたバンドに、その人たちにとっての領域で挑むってことは、ファンでありながらライヴァルみたいになるってことじゃないですか。そこで自分らが通用するのかっていう挑戦でもあるし、負けないはずだっていう自信もあるんです」(Daiki)。

「根拠のない自信と言えばそれまでなんだけど、とにかくライヴはこれまでずっとガムシャラにやってきたし、そこには絶対的に自信がある。しかも今回はライヴと音源に温度差がないっていう自信もあるし」(Ikepy)。

 例えば、音は世界基準だけどヴォーカルが聴こえてきた途端に邦楽にしか聴こえなくなる、という例はよくある。が、このバンドの場合はむしろ、顔を見て初めて日本のバンドなのだと気付かされる、という感じですらある。Ikepyは「俺たちに日本っぽさってあるのかな?」と真顔のまま首をひねり、Daikiは「〈コイツらホントに日本人なのか?〉とは思われたい」と言う。そんな彼らがこうして広い世界へと解き放たれたいま、人々の理性は野生によってねじ伏せられることになるのかもしれない。

 

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