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アルテミス・クァルテット、ブラームスの神髄に迫った緊密なアンサンブル聴かせる新作はヴィオラ奏者ヴァイグル最後の録音盤

ヴィオラ奏者ヴァイグルの最後の渾身作

(C)Molina Visuals

 

 1989年にリューベック音楽大学の学生によって結成されたアルテミス・カルテットは、96年ミュンヘン国際音楽コンクール、97年プレミオ・パオロ・ボルチアーニ弦楽四重奏国際コンクールで優勝、以来各地で高い評価を得てきた。2012年には第1ヴァイオリンがラトヴィアのヴィネタ・サレイカに変わり、昨年現メンバーによるメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲集がリリースされた。演奏は、ヴァイオリンが抒情的で繊細、ヴィオラとチェロがアグレッシブな演奏を展開し、そのバランスが個性的なアンサンブルを生み出す。常に作品の深奥に迫り、このメンデルスゾーンでも新鮮で革新的な音楽を世に送り出したものだ。

 待望の新譜は、ブラームスの弦楽四重奏曲第1番と第3番。第1番はブラームスならではの厳粛さと渋さが共存し、緻密に練り上げられた弦4本の響きが印象的。とりわけヴィオラとチェロの重厚な味わいが耳に残る。第3番は明朗で自由闊達、親しみやすい旋律に彩られ、ロマンあふれる情緒が全編を貫いている。それらをアルテミス・カルテットはブラームスの神髄に迫る迫力と、巧みな奏法を披露し、ハンガリー的な味わいをも大切に緊密なアンサンブルを聴かせている。

ARTEMIS QUARTET ブラームス:弦楽四重奏曲第1&3番 ERATO/ワーナー(2015)

 しかしこのブラームスは、ヴィオラ奏者フリーデマン・ヴァイグルの最後の録音となった。7月7日、アルテミス・カルテットのメンバーからヴァイグルの訃報が発表されたからだ。享年52。常に右側で長い黒髪を揺らしながら凛とした演奏を響かせていたヴァイグルは、病気のため帰らぬ人となってしまった。

 フリーデマン・ヴァイグルは62年ベルリン生まれ。指揮者セバスティアンは実兄である。6歳でヴァイオリンを始め、ベルリン・ハンス・アイスラー音楽院でヴィオラを学び、国際コンクール入賞を経て1979年にベーターゼン・カルテットを結成。その後、ベルリン・ドイツ交響楽団のヴィオラ奏者を務め、2007年にアルテミス・カルテットのメンバーとなった。各地の音楽院で教鞭も執り、後進の指導にも尽力した。

 昨年のインタヴューでは、ヴィオラのヴァイグルを評して他のメンバーがこう語っていた。「フリーデマンは全員のエンジン役で、あらゆる方向に向けて視野を広く保ち、常に上を目指していくんだよ」と。今回のブラームスでも内声に注意深く耳を傾けると、ヴィオラの知性的で構成力を大切に、ヴァイオリンとチェロの架け橋となるべく巧みなバランスを保つ音色が聴こえてくる。そのヴィオラは、ヴァイグルの渾身の音でもあり、魂の響きでもある。特に第3番の第3楽章は、ブラームスがヴィオラを主役に仕立てている。その愛らしい旋律と情感豊かな響きを心に深く刻みたい。

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