とにもかくにも1枚目冒頭の第1番をお聴き下さい。この2枚に収められたバッハ演奏の凄さを最も端的に味わえるのは、やはりこの番号だ。シュタイアーが次々に繰り出す、まさに一糸乱れぬ走句の連続、がっしりと鳴動する低弦に支えられたフライブルクの重量感とのせめぎ合い。聴き手を不思議な感興のうねりへと連れ去るマジカルな気配が濃厚に立ちこめる。全き愉悦が横溢する第3番、親しみある楽想を丁々発止と展開する第6番など、奏でられる音楽自体がとても大きい。緩徐楽章でつくため息も深く、情感の増幅にも事欠かない。シュタイアーが満を持したこの録音、隅から隅まで、本当に愉しみが尽きない。