ソウルから左遷で漁港のとある田舎に警察署長として赴任するペ・ドゥナ。都会の喧騒から離れたのどかな風景が、家族に虐待されていると思わしき少女キム・セロンとの出会いを契機として変貌していく様をサスペンス仕立てで描く。田舎の闇が徐々に炙り出されてくるという点では昨今の韓国映画にもよく見られるが、この映画の特筆すべきは、ペ・ドゥナとキム・セイロンの関係を軸に人間の業を浮き彫りにしていくところだろう。脚本の良さ、主演女優二人の素晴らしさは勿論だが、素材の良さを見事に活かしきったチョン・ジュリの手腕に脱帽。孤独な人間の魂が共鳴するラストに安易な涙など不要だ。全身で震えるべし。