INTERVIEW

彼の不在は問題にならなかった―ニュー・オーダー、最大の試練乗り越えて完璧なNO節鳴らした10年ぶり新作を語る

ニュー・オーダー 『Music Complete』 Pt.1

あなたにも聴こえるだろうか、プラスティックな質感を纏ったたまらなくメランコリックなこのダンス・ミュージックが。最大の試練を乗り越え、完璧なNO節がここに戻ってきた!

アイツの不在は問題じゃない

 ポスト・パンク・リヴァイヴァルの流れのなかで、後続世代に大きな影響を与えたマンチェスター生まれのジョイ・ディヴィジョン。彼らのUS進出を図ったツアーの前日、ヴォーカリストであるイアン・カーティスの自殺によって突然終焉したその活動を、残りのメンバーが引き継ぐ形で、ニュー・オーダーは80年に結成された。以降、2度の解散を経たものの、長らく不動のラインナップでキャリアを重ねてきたが、ギターさながらのメロディックな演奏でバンドの個性を生み出してきたベーシスト、ピーター・フックが2007年に完全に離脱。もはやここまでか……と思われたなか、逆境を新たな創造の糧にバンドは前作『Waiting For The Sirens' Call』から10年ぶりとなるニュー・アルバム『Music Complete』をこのたび発表した。

 「正直に言うと、ピーター不在でライヴをやりはじめた頃は不安もあった。彼も〈俺抜きでバンドを続けるなんて不可能だ〉ってプレスに言いまくっていたし、リスナーが新しいニュー・オーダーにどう反応するかもわからなかったから。でも、いざステージに立ってみると、どの会場でも観客の反応は素晴らしかったよ。そして3年半ライヴを続け、アルバムの制作に取り掛かる頃には、自分たちでも手応えを感じていた。それもあって、彼の不在は作品を作るうえでまったく問題にならなかったね」(バーナード・サムナー、ヴォーカル:以下同)。

NEW ORDER Music Complete Mute/TRAFFIC(2015)

 2011年には子育てのために長らく戦列を離れていたジリアン・ギルバート(キーボード)が復帰。同時に、彼女の代役を務めてきたフィル・カニンガムとベース担当のトム・チャップマンが正式メンバーに加わり、新体制となったニュー・オーダーは、かつて所属したファクトリーと同じ78年にロンドンで設立された老舗のインディペンデント・レーベル、ミュートと契約を交わすことに。

 「ピーターがバンドを辞めて、ニュー・オーダーは生まれ変わったと感じた。だからレーベルも変えるべきだと思ったんだ。オーナーのダニエル・ミラーのことも、ミュートの活動も好きだったし、何よりインディー・レーベルに戻るというアイデアに魅力を感じたんだよ。実際、ダニエルはトニー・ウィルソン(ファクトリーのレーベル・オーナー)のような存在になってくれた。アルバムの制作中もわざわざロンドンからマンチェスターのスタジオまで来てくれて、エグゼクティヴ・プロデューサーの役割を果たしてくれたよ。彼が個人的に深く関わってくれたことが、僕たちの環境に良い作用をもたらしたと感じている」。

 

エレクトロニックな音に戻りたい

 エレクトロニック・ミュージックの発展に大きく貢献してきたニュー・オーダーとミュート。その出会いは、2000年代以降、ギター・ロックに傾倒していたバンドをふたたびエレクトロニック・ミュージックへ向かわせるきっかけとなった。

 「83年に“Blue Monday”を発表して以来、僕らはクラブ・ミュージックにおけるパイオニア的な存在として、常に〈これまで聴いたことのない音〉を期待されてきた。それにクラブ・ミュージックはジャンルが細分化されすぎてしまって、曲を作ろうと思っても、まずどのジャンルに当てはまるかを考えなきゃいけないような気にさせられた。だから、しばらく距離を置いていたんだよね。ただ、ギター主体の作品を作り続けていたおかげで、エレクトロニックなサウンドに戻りたいという気持ちが募ったし、今回久しぶりにシンセサイザーを駆使した作品に取り組めたことは夢みたいだよ」。

 “Singularity”と“Unlearn This Hatred”のプロデュースは同郷でもあるケミカル・ブラザーズトム・ローランズが、“Superheated”のアディショナル・プロデュースはマドンナらを手掛けて名を上げた元レ・リズム・ディジタルズスチュワート・プライスが担当。さらにはラ・ルーエリー・ジャクソンや、グループ名をニュー・オーダー“Crystal”のPVに出てくる架空のバンドから取ったキラーズブランドン・フラワーズ、そして昨年ライヴで共演したイギー・ポップをゲスト・シンガーとしてフィーチャーしている。そんな豪華な内容の『Music Complete』は、エレクトロニック・ミュージックへの回帰を果たしながら過去2作で強化したギター・ロック路線も加味することで、双方を行き来し、その橋渡しをしてきた彼らの集大成的な仕上がりだ。結成から35年目にして、ニュー・オーダーがここまで突き抜けたアルバムを作ることになるとは、誰が想像できただろう?

 「音楽をやっていれば、いつでも新しいことを学び、成長することができる。だからこそ、僕は長くミュージシャンを続けてこられた。学校は大嫌いだったくせに、学ぶことはいまも尽きないんだ。他のミュージシャンの作品を聴いたり、読んだり、実際に自分たちでプレイし、失敗や挫折を糧にして、独学で深められるところに音楽の素晴らしさがあるよね。秋にヨーロッパでライヴを数本やって、来年から本格的なツアーに突入するんだけど、新しいヴィジュアルと新曲を加えたセットで日本にも行きたいと思っているから、その日が来るのを楽しみにしていてほしいな」。 

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