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ブックオフかタワレコぐらいしかCDを買う選択肢がなくて
棚を見ながら探すのがメチャクチャ楽しかった
 

――曲は全部、加藤くんがひとりで書いてるんですか?

加藤「そうですね」

――NOT WONKは楽曲もメロディアスだし構成も練られていて、そこにも驚いたんですよね。

加藤「最初にメロコアがすごく好きだったというのもあって、ポップでキャッチーなものからは離れられないんですよ。そういうのがいまでも好きで、キャッチーな音楽に捕まってしまうし、自分もそういうのをやりたいと思いますね。でも曲の構成は、自分で言うのもなんですけど物凄くベタだと思いますね。前に先輩にも言われたんですけど、日本歌謡的というか。A→B→サビ→A→B……みたいな(笑)。そういうのが好きなんです」

――NOT WONKは一大影響源としてイギリスのメロディック・パンク・バンド、メガ・シティ・フォーを挙げていますよね。改めて、どんなところに魅力を感じているんですか?

加藤「高校3年生のときに初めてファースト『Tranzophobia』を聴いたんですが、その時はタイトなリズムで進んでいくかなりパンク然としたバンドだと思って、かなりハマってました。でもサード(『Sebastopol Rd.』)の再発盤とか、YouTubeで中~後期の曲を聴いてみたら〈自分が知ってたUKメロディックじゃない!〉という印象を受けて。効果的にアコースティック・ギターを使っていたり、それこそネオアコやギター・ポップの要素も入っていることに気付いたんです。ヴォーカルのウィズはライヴでティーンエイジ・ファンクラブのシャツを着てたりしますし。唯一無二という表現はいまさらかなり薄っぺらく聴こえますが、一番の魅力はウィズの声とメロディー・センスだと思います。これだけは本当に替えがきかないです」

メガ・シティ・フォーの92年作『Sebastopol Rd』収録曲“Ticket Collector”

 

――NOT WONKからも、ギター・ポップ的なメロディーの爽やかさが感じられますもんね。ドラムスなどのインディー・ロックも好きだと聞いてますが、そのあたりの音楽とはどうやって出会ったのでしょう?

加藤「確か、ふとブックオフで買ったと思うんですよね。そういえば、雑誌の裏表紙に広告載ってたな……みたいな感じで。それで気に入って、日本だとHOSTESSがこういうバンドをたくさん紹介しているじゃないですか。それでHOSTESSから出ている作品をどんどん買っていくようになって」

――ブックオフにはよく通ってたんですか?

加藤「(苫小牧は)タワレコかブックオフぐらいしかCDを買う選択肢がないんですよね。TSUTAYAにはEXILEしか置いてないし。あとは僕がブログを読んでいたTHE SLEEPING AIDES & RAZORBLADESの白浜くんに、ジャケ買いとかレーベル買いのような文化を教えてもらって。〈ジャケ買いが当たった時の喜びたるや!〉みたいなの、あるじゃないですか。それでブックオフが家から一番近いというのと、棚を見ながら探すのがメチャクチャ楽しくて、高校の時からハマったんです」

THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADESの2015年作『FAVORITE SYNTHETIC』収録曲“MY STRANGE HEADACHE”。THE SLEEPING AIDES & RAZORBLADESは札幌発のパワー・ポップ・バンドで、NOT WONKの先輩にあたる

 

――その当時に知ったもので、他に自分にとって大きかった音楽ってなんですか?

加藤「えっと、クラウド・ナッシングスーパー・チャンクに……あとはマンドゥ・ディアオですかね」

――そういえば前に、吉田ヨウヘイgroupのレコ発に出演していた時、加藤くんがジョア・デ・ヴィーヴァのシャツを着てたのがすごく気になったんですよね。

加藤「エモ好きなんですよ(笑)」

――ジョア・デ・ヴィーヴァはどちらかというと、エモ・リヴァイヴァルな感じじゃないですか。

加藤「そうですね。テクニカルなリヴァイヴァル系はあんまり好きじゃなくて、TTNGは綺麗すぎるけど、ゼア/ゼア/ゼア(Their / They're / There)はカッコイイ……みたいな微妙なラインの話なんですが。あのTシャツは単純に(デザインが)カッコイイと思って買ったのと、エモだとキャップン・ジャズが一番好きで。アメリカン・フットボールはイケてるところもあるけど、キャップン・ジャズはネルシャツをインしてる感じがあるじゃないですか」

――わかる気がします(笑)。

ジョア・デ・ヴィーヴァの2012年作『We're All Better Than This』。エモ・リヴァイヴァルの重要レーベル、カウント・ユア・ラッキー・スターズよりリリース

 

キャップン・ジャズの98年作『Analphabetapolothology』。キンセラ兄弟の出発点となった、エモの古典的名作

 

加藤「そういえば、ブッチャーズにもキャップン・ジャズに近いところがある気がします」 

――北海道のパンクといえばブッチャーズとかeastern youthが真っ先に思い浮かびますけど、やっぱり好きなんですね。

加藤「好きですね。3ピースだし、すごく日本的だと思う」

――3ピースという形態に思い入れはあります?

加藤「やっぱりカッコイイと思います。もちろん、4人でも格好良いバンドはたくさんいますけど、グリーン・デイだって4人じゃない時のほうがいい。なにか美学があるような気がして」

アキム「ドラムもちゃんと見えますしね(笑)」

グリーン・デイの94年作『Dookie』収録曲“Basket Case”

 

――細かい話ですけど、3ピースでパンクをやってて、なんでストラトキャスターを使ってるのか気になったんですよ。

加藤「まともなギターを初めて買ったのが大学1年の時だったんです。それまでは中学生の時に買った12,000円の初心者セットをずっと使ってたんですけど、それもストラトだったんですよ。音が鳴れば何でもいいと思ってたけど、やっぱり〈もっといい音がいいな〉って思ったときに、レスポールはちょっとメロコアっぽいかなと(笑)。それで、見た目は同じストラトだけど、音が変わったというのもカッコイイと思って買ったんです。すごく気に入ってるし、構造が完璧だと思うんですよね」

アキム「自分のギターをしょっちゅう褒めてますよね(笑)」

加藤「機能性に富んでいるというか(笑)。あとは、(グリーン・デイの)ビリー・ジョー・アームストロングがストラトを使っているというのが一番大きいかもしれないですね」

――ビリー・ジョーはハムバッカーを載せてますけど、加藤くんのギターはシングルのままですよね。それって、音のジャキジャキ感も狙ってるのかなと。

加藤「タフな音のほうが昔は好きだったんですけど、別にズンズンしてなくてもいいよなって思うようになってきて。それこそ、クラウド・ナッシングスからの影響もありますね」

クラウド・ナッシングスの2012年作『Attack On Memory』収録曲“Stay Useless”

 

――お話をうかがっていると、リスナーとしての経験が自分たちの音楽性へダイレクトに反映されてるのがよくわかる気がします。

加藤「そうですね。聴いてきた音楽に忠実というか、聴いてないものはやってないというか」

――アルバムの最後に収録された“Never Dye It Blonde”では、ウィーザーっぽいフレーズが聴こえてきたり……。

加藤「〈っぽい〉というか、なんというか(苦笑)」

――もちろん最高ですよ! ロックの歴史も、こんなふうな悪ノリで書き換えられてきた部分も大いにあると思いますしね。あとは素朴な疑問なんですが、NOT WONKはなんであんなにステージングが堂々としているんだろうっていう。

加藤「シーンって言葉はそんなに好きじゃないんですけど、苫小牧にはパンクが好きなバンドが僕らしかいなくて。あとはスクリーモとか4つ打ちとか、Jロックっぽいバンドが雑多にいるんですけど、そのなかにブッキングされて、全然脈絡のないバンドと共演しているのも関係あるかもしれない」

――地方のライヴハウスならではの光景が、バンドの地力を鍛えたわけですね。

加藤「そんななかでも、CDを出したり噂になったり一定のラインを越えたバンドって、みんな演奏が巧いんですよ。そういう人たちと張り合おうと思ったら、ヘタなままだと門前払いになると思って、演奏は巧いに越したことないから練習しようかって」

――パンクは簡単にできそうなイメージもあるけど、だからといってイージーにこなそうとは思ってないというか。

加藤「そうですね。バランス良くできればというか、パンク・バンドはゴチャッとしてるのが一番カッコイイと思うし」

アキム「技術的にというより、音楽的に上手いバンドになりたいですね」

――演奏力もそうですけど、ステージ上でのアクションもとんでもないじゃないですか。 

アキム「前は3人棒立ちでしたよ。気付いたらこういう感じ」

フジ「昔は〈ちゃんと演奏しなきゃ!〉って気持ちが強くて、ぎこちなかったけど」

加藤「あとは高校生の時からマキシマム ザ ホルモンとかが好きだったので、〈バンドは激しく動かないといけない〉って洗脳されてるところがあるのかも(笑)」