運命的な出会いから宿命的な出会いに

 玉置浩二が『悲しみにさよなら』などのヒット曲をフル・オーケストラとの共演で熱唱する『billboard classicsプレミアム・シンフォニック・コンサート』が熱烈なアンコールの声に応えて、12月8日に東京国際フォーラムホールAにて2015年のファイナル公演を行うことになった。指揮者であり、同コンサート・シリーズの音楽監修を務める大友直人氏との出会いが新たな挑戦の入口になったわけだが、1年を通して取り組んできた結果、「運命的な出会いから宿命的な出会いになったというか。自己流でやっている自分と、音楽をきちんと学んできたクラッシックのみなさんとの共演は、宿命としか思えないように変わって来た」という心境に至るまでになった。

 長年歌い続けてきた自作曲が編曲家の手によって、フル・オーケストラ用にアレンジされて、新たな生命を注ぎ込まれた。そのアレンジは、決して歌い手に寛容なものではなく、あくまでも作品の魅力をより高めるためのものであり、パフォーマーに高度な歌唱力、テクニックを求めるものであった。フェイクの才能を称賛されるシンガーが歌を自在に変幻させていく自由を侵されているのではないか。楽譜に縛られるような窮屈さを感じているのではないか。2月8日の初日にそんな印象を受けたが、バンドとオーケストラで全く隔たりはないと言う。

 「バンドではアンサンブルの構成がギターやベースになるだけで、“じゃぁ、やろうか”と演奏を始める際には僕がスターターになるわけだけれど、始まってしまえば、曲の進行役は僕ではなく、バンドが担うことになる。それがBillboard classicsに関しては、フル・オーケストラという大きな船の舵を取るのが指揮者の大友先生になるというわけ。僕は、観客のみなさんに“この船に乗りませんか”とアナウンスして、その船に乗ることで見える景色、サンセットだったり、夜の空だったり、それをお見せできるような歌を歌わないといけない。なので、舵を握っている場合じゃない(笑)。歌に専念しなくてはいけないし、専念することが出来るのがオーケストラとの共演だと思う。ポップスをやっている人の多くは、オーケストラと共演すると、“リズムがずれる”と思っているようだけれど、僕はいい意味で“リズムが揺れる”というか、テンポが遅くなったり、早くなったりするのはむしろ音楽的で、それを感じ合いながら、合わせていくことこそが音楽的だと思っている」

 ポップスとの違いがあくなき探求心に火をつけたという感じだが、実際にこのコンサートをライフワークとして長く取り組んでいきたいと明言している。

 「自分が今まで作ってきた曲、プロとして発表してきた曲は、まだまだある。提供してきた楽曲もたくさんある。そういう作品をなるべくやりたいし、童謡を歌ってみたいという思いもある。『浜辺の歌』や『ふるさと』、『小さい秋みつけた』から安全地帯の『あの頃へ』につなげて歌うとか。編曲家の山下康介さんや萩森英明くんのきれいなアレンジがあってさ。ベートーベンの田園から玉置浩二の田園へ展開させる、なんてことを考えたりもしている。あまり知られていない自分の歌を歌って、“こんないい歌があるんだ”と知ってもらいたいしね。そう考えると、10年や20年は出来るよね(笑)」

 具体的に来年1月24日のオーチャードホールを皮切りに札幌、名古屋、大阪、福岡をまわる、『Billboard classicsプレミアム・シンフォニック・コンサート―カーテン・コール』ツアーの日程がすでに発表されており、また新たなレパートリーを聴かせてくれるはずだが、彼が言うような隠れた名曲発掘シリーズがあってもいいだろう。いずれにしても『Billboard classicsプレミアム・シンフォニック・コンサート』は、ベテランの域に達した玉置浩二の挑戦する姿に惚れこむ舞台になっていくと思う。

 その評判は、海外にも伝わっており、11月13日には香港で最大規模を誇るアジア・ワールド・アリーナにて開催されることが決定。同会場は、2010年に安全地帯のコンサートが行われた想い出深い場所だ。そこで今回は、ホンコン・シティ・ポップス・オーケストラとの共演で代表曲を熱唱する。再び香港のファンを魅了するのは間違いないだろう。

 

LIVE INFORMATION
2015年12月8日(火)19:00開演
会場:東京国際フォーラム ホールA 
出演:玉置浩二 大友直人(指揮)東京フィルハーモニー交響楽団
billboard-cc.com/classics/2015/10/koji-tamaki-2015thefinal/
※本公演のチケットはすでに完売となっています。