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【架空のJ-Pop考】第8回 「スペース☆ダンディ」より向井秀徳製“かんちがいロンリーナイト”をSWING-O、マリアンヌ東雲、ミツメ川辺が斬る!

キャラクター・ソング(キャラソン)とは、アニメやゲームなどの劇中の役柄/登場人物として声優が歌った楽曲のこと。このキャラソン市場が拡大を続ける近年、音楽自体も大きな進化を遂げているらしい、どうやらおもしろいことになっているらしい! しかしその音楽には、実際に作品を観たりゲームに親しまない限り触れることはないわけで。でもその扉を開く第一歩をなかなか踏み出せない……何から手をつければ良いのかわからない……という人もいるでしょう。 そんな貴方のために、Mikikiではキャラソンという名の〈架空のJ-Pop〉にフォーカスし、一見アニメ/ゲームとは相容れないフィールドで活躍する 3名のミュージシャンに、TOWERanime新宿のバイヤーと編集部スタッフがセレクトした1曲を自由にレヴューしてもらいます。さまざまな意味で目から鱗な発見があるかもよ!

 


 

【今月のお題】

VARIOUS ARTISTS 「スペース☆ダンディ」Original Soundtrack 2 Boobies Wonderland flying DOG(2014)

「カウボーイビバップ」や「サムライチャンプルー」など音楽と密接な関係性を持ったアニメーション作品を多数手掛けてきた渡辺信一郎監督による「スペース☆ダンディ」(2014年)の劇中曲“かんちがいロンリーナイト”をピックアップ。主人公のダンディ(CV:諏訪部順一)が劇中で結成した宇宙を股に掛ける人気バンド=DROPKIXのオリジナル楽曲(という設定)。80s後半のバンド・ブーム期を彷彿とさせるスタイルと、その時代をビリビリと感じる音楽性――このナンバーを手掛けたのは向井秀徳です。

 

★SWING-O

ふだんゲームをしない、アニメも観ない自分ですが、音楽家/音楽マニア目線で解説を試みようと思うPt2です。

アニメ「スペース☆ダンディ」、これは見てこそいなかったが、存在は知っていた。何せ使われている音楽が自分のいるシーン寄りの面々によるものが多数を占めているからね。身内のプロデューサー・mabanuaやファンク・バンドのMountain Mocha Kilimanjaroが関わっているというトピックが、それを知ったきっかけかな。他にも岡村靖幸西寺郷太からgrooveman SpotLUVRAWまで、ソウル~80s寄りな面々を見てるだけでも音楽監督及びアニメの志向性が明確だし、興味をそそられる(が、まだちゃんと見たことはない)。惜しむらくは、自分にまだ音楽制作のオファーが来てないことか(笑)?

そして今回のお題“かんちがいロンリーナイト”も、その流れから想像される向井秀徳氏によるもの。かつ〈80s〉な空気感満載の楽曲だったね。世代も近いせいだろう、イントロから〈あ、これはこの曲がリファレンス(参考曲)のひとつだ!〉とわかった。

ポリス “Message In A Bottle” (79年) 

これを聴いてからもう一度お題曲を聴き直して思うのは、程よき〈80s UKロック・オマージュ〉。ギターの音色が特に80sのUKロック感がたっぷりだしね。すなわち和物ならばTHE MODS“激しい雨が”(86年)、RED WARRIORSのファースト・アルバム『LESSON 1』(86年)や、ZIGGY“GLORIA”(88年)あたりの雰囲気もある(でもBOφWYじゃない感じ)。この曲が使われた「スペース☆ダンディ」第20話は、〈幻の一発屋バンド、DROPKIXの結成からラスト・ギグまでを描いたドキュメンタリー〉という設定。その〈一発屋バンド〉ってのもなんかUKっぽい気がするし、かつ80sっぽい気もするね。

ZIGGYの88年のシングル“GLORIA”

 

〈一発屋バンド〉ってだけでなぜ80sっぽいかって? だって、最近は一発屋バンドって減ってないかな? 〈一発屋芸人〉こそ数多いけれど、近頃のバンド・シーンには一発屋があまり見当たらない気がする。音楽シーンのいまは、やる側も聴く側も保守的になっているからだろうね。一発目のヒットがあると、大概が長生きしている印象がある。大して新境地を切り拓かなくても、いや、正確には下手に新境地を切り拓かないほうがファンもついてきてくれるという図式。聴く側は新たな刺激よりも安心感を求め、やる側もそんなファンの気持ちを汲んだ安心感の提供を心がける、という図式。そりゃあ一発屋はいなくなるよねぇ……。

……でもそれってロックじゃないよなぁ。

ビバ☆一発屋!!!

 

PROFILE:SWING-O


キーボーディスト/プロデューサー/トラックメイカー。izanamiJAMNUTSでの活動を経てソロでのキャリアをスタート。2008年には48名義でステフ・ポケッツらを招いた『Hello Friends』、翌2009年の『THE REVENGE OF SOUL』と自身のアルバムをリリースするほか、レーベルメイトのmabanuaShingo Suzuki渥美幸裕と共にアートと音楽を融合したソングブックを毎月発表するプロジェクト〈laidbook〉を始め、各所で話題となる。さらに2011年には竹内朋康椎名純平らとソウル・バンドのDezille Brothersを結成して『だしの取り方』を、2013年には金佑龍とのコラボ・ユニット=キムウリョンと45trioでセルフ・タイトル作をリリース。また自身の活動と並行して、CharaZeebraRHYMESTERKREVA福原美穂防弾少年団などなど多数のアーティストへの楽曲提供/プロデュース、さらにサポート・キーボーディストもこなしている。11月3日には自身の未発表リミックス曲を収めた7インチ『SWING-O remix works 1』を発表する。そのほか最新情報はこちらへ。

 11月3日にリリースされるSWING-Oの未発表リミックス盤『SWING-O remix works 1』ダイジェスト音源

 

★マリアンヌ東雲(キノコホテル)

秋が深まってまいりました。右足小指の剥離骨折にも負けず飛んだり跳ねたりそこそこ元気にツアー敢行中のマリアンヌ東雲でございます。

前回に引き続き当企画の趣旨を今ひとつ理解し切れて居ないワタクシですが、編集部からの打切り通告を喰らう事も無く、今回もサクッとゆるっと語らせて頂ければと思って居ります。どうぞ宜しく。

さて今回の「スペース☆ダンディ」。この作品も当然のように存じ上げなかった訳だけど、主題歌や劇中曲に岡村靖幸氏を起用するあたり、挑発的でございますわね。アニメ、ナメんなよって感じ(違うか)。絵もなかなか綺麗。試しに1話見てみたけれど、内容は全く頭に入って来なかったわ。

で、シリーズ中のたった1話の為に制作されたのがこの“かんちがいロンリーナイト”なのだそうで、これは向井秀徳氏によるもの。この方のパロディー・ワークと聞いて思い浮かぶのが映画「少年メリケンサック」なのでございますが、こう云ったパロディー仕事こそ音楽家としての腕の見せ所と申しますか、独自性を追求して行く作業とは全く違うベクトルのセンスや素養を必要とする訳であって、突き詰めて行くと非常に愉快な作業なのではないかと思うのです。否、寧ろ音楽が時代のオリジナリティーを放っていたのは1990年代まで。それ以降はもうパロディーや焼き直し無しに商業音楽は成り立たないのではないかと、日々感じて居るワタクシでございます。

2009年の映画「少年メリケンサック」劇中曲“僕らのネバーマインド号”

 

ひとまず本日いっぱいくらいはサビのフレーズに脳内を占拠させてあげるとしよう。歌詞もこれ以上無いくらいにテキトーで、全く奇を衒って居ないところが好き。

あ、そうそうワタクシそう言えばひとつ思い出した事がございます。この「スペース☆ダンディ」を制作しているボンズって会社のお偉方が確かそこそこ熱心なキノコ胞子(注:キノコホテルの支援者は胞子と呼ばれる)だった筈よ。あいつ最近どうして居るのかしら。いい加減主題歌のお仕事頂けませんでしょうか。お待ちして居るわよ。ではまた、御機嫌よう。

 

PROFILE:マリアンヌ東雲


女性4人組バンド、キノコホテルのすべての楽曲を手掛け、歌と電気オルガンを担当する支配人。都内を中心に活動を続けるなか、2010年に初のオリジナル・アルバム『マリアンヌの憂鬱』を発表。メンバーお揃いのヘアスタイルと、ロックンロールやパンク、ニューウェイヴなどを通過した音楽性で注目を集める。以降、メンバー・チェンジもありながらコンスタントに作品をリリースし、最新作は2014年のフル・アルバム『マリアンヌの呪縛』。またツアーやフェス出演も精力的にこなしており、現在行っている単独独演会〈サロン・ド・キノコ2015秋~夜の禁猟区〉も後半戦。10月31日(土)には大分・COPPER RAVENで、11月3日(火・祝)にはファイナル公演が東京・キネマ倶楽部で行われる。そのほか最新情報はこちらへ。

キノコホテル〈やさぐれ姐御伝説〉

 

★川辺素(ミツメ)

解説みたいなものを頂いたんですが、一度目は読まずに聴きました。頭のリフから既聴感がかなりあり、すごくベタなアレンジが次から次へと出てくるし、サビ後でいきなりヴォーカルのエフェクトが不自然なくらいに変わるので、いわゆるバンド・アレンジってこういう感じだよね?と、バンドとは違う畑の人が適当に作った感じの曲なのかな……と思いました。

と、ここまで失礼を承知で正直に書きましたが、ZAZEN BOYSの向井さんが作曲されたんですね。それを知ってから聴き直すと、頭の中では向井さんの声で再生されるし、節回しやちょっとしたフェイクの入れ方も完全に〈ディス・イズ・向井秀徳〉。歌詞についてはふざけすぎてるのでは……と勝手に心配になりました。

以前より僕は向井さんのファンですし、前述の冒頭のギターなんてまさしく向井さんの音なんですがまったく気づかなかったので、〈自分の耳、本当にアテになんないんだな〉と悲しくなりました(メンバーに聴かせたところ、ギターのまおは一瞬で〈あれ? ナンバガ?〉となっていました)。

思い出せば映画「少年メリケンサック」で向井さんが音楽を担当されていた時も、サントラが凄くおもしろかったので久しぶりに聴こうかなと思います。力が抜けた感じでも個性がバリバリに出ている。流石、向井さん!と思ったのでした……。こういう形での曲提供っておもしろいですね(笑)。

ではまた次回!

 

PROFILE:川辺素(ミツメ)


2009年に結成された4人組、ミツメのヴォーカル/ギター。都内を中心にライヴ活動に励み、2011年に『mitsume』でアルバム・デビュー。2012年作『eye』、2014年作『ささやき』とシングルを挿みながらリリースを重ね、今年5月にはシングル“めまい”を発表。自身のツアーも積極的に行うなか、Alfred Beach Sandalのリリース・ツアーへの参加や、スカートとトリプルファイヤーとの共演イヴェントなどもこなす。また川辺単独では11月11日にリリースされるSpangle call Lilli lineの新作『ghost dead』の収録曲“feel uneasy”にゲスト・ヴォーカルとして参加。そして12月20日(日)には東京・恵比寿LIQUIDROOM/LIQUIDLOFTにて自主イヴェント〈WWMM〉を開催。そのほか最新情報はこちらへ。

ミツメの2015年のシングル“めまい”

 

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