今秋も来日してモーツァルトのソナタをまとめて弾きまくる。彼女の精力的な活動ぶりに訳もなくうれしくなる! ディスクが届くたびに今度はアリーナのどんな表現が聴けるのか。再生ボタンを押す愉しみが尽きない、とっておきの奏者のひとりが彼女だ。今回のバッハの協奏曲集も実にのびやか。アンサンブルの中で、まるで彼女の自由な発声を聴くかのような微細なニュアンスでしたためられた筆致は、どこを聴いても飽きがこない。そこにきて最後に置かれたBWV1052で聴かせる、閃くような集中に伴われた情感の昂ぶり!(特に第1楽章!)その縁(へり)のない、一瞬の強靭な美しさが聴き手の耳を捉えて離さない。