photo by Louise Haywood-Shiefer

 

ブラジル音楽からの影響も! オーガニック&エレクトロニック・サウンドの融合

 2010年代のエレクトロニック・ミュージックにおいて、卓越した鍵盤演奏を含む高度な音楽性、広範な音楽を融合した上で独自性を持つ作曲能力などから、既にカリスマ的な地位を築くフローティング・ポインツ。マンチェスター出身でロンドンを拠点とするサム・シェパードのこのユニットは、2009年からこれまでに数々のシングルやEPをリリースし、またDJやリミックス・ワークなどを通じ、世界中に信奉者を生み出してきた。ところがアルバムはいまだ発表しておらず、長らくファンが切望していたのだが、ようやくここに『エレーニア(Elaenia)』が完成した。

FLOATING POINTS Elaenia BEAT/Pluto(2015)

 彼の初期作品はディープ・ハウスポスト・ダブステップを繋ぐような、フロア向けのダンス・トラック中心だった。しかし、そもそもマンチェスター大聖堂の聖歌隊に所属し、音楽学校でピアノと作曲を学び、ジャズ、クラシック、現代音楽の素養があったシェパードにとって、それはほんの通過点だった。次第により深みのある実験的な作品も作り、それが結実したのが実質的なファースト・アルバムと言えるEP大作『Shadows』(2011年)だ。エレクトリック・ジャズ的な『Shadows』に対し、オーガニックでクラシックからの影響を感じさせるのが13人編成のフローティング・ポインツ・アンサンブルでの『Post Suite / Almost In Profile』(2010年)で、『エレーニア』はその両者の世界を融合し、発展させたものと言える。すなわち自然と人工物、オーガニック・サウンドとエレクトロニック・サウンドの融合が『エレーニア』なのだ。

 南米に生息する鳥の名前から名付けた『エレーニア』だが、その南米のブラジル音楽は近年のシェパードが影響を受けるもののひとつだ。3部構成の大作《Silhouettes》は、フェンダー・ローズに加えてストリングスとコーラスが印象的で、シェパードの聖歌隊での経験と同時に、ノルデスチやミナス・サウンドのようなブラジル音楽からの影響も感じさせる。一方、《Argenté》《Elaenia》《Thin Air》の流れにはアンビエントなテイストがあり、ダイナミックなジャズ・ロック風ドラムにサイケな風味を漂わせた《Peroration Six》と、シェパードの中の多彩な音楽性が顔を覗かせる。こうした豊潤な要素を持ちつつ、アルバム全体を幻想的で神秘的、そして美しいトーンで統一させていくのが、シェパードの作曲家/プロデューサーとしての能力の髙さだ。なお、ジャケットのアートワークはシェパード自ら製作したハーモノグラフを使い、音楽と同期させた光線で描いたドローイング・アートとなっている。このように、アルバム全体がサウンドとアートのコラボとなっている点も特筆すべきことだ。