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メンバーは3人ですけど、僕はもう〈5人のバンド〉だと思ってる

ーー特に前作は井上さんの理想をとことん追求した作品でしたよね。だから、今回の資料で〈自分の子供でもないような気持ち〉と書いてあるのを読んで、すごくびっくりしたんです。

井上「ははは!」

ーーこの人、そんな人だったっけ?って。

井上「いやー、おもしろいもので変わりましたね。それはGotchさんと演った経験が大きいかも。すごく任せてくれるんですよね。そこが良いなぁと思ったので、その影響があるんだと思います。Gotchさんは作品制作のときでもライヴのときでも、こっちのプレイヤビリティーに委ねてくれる。核はGotchさんが持ってるので、それは誰がどうしようとしたって動かないんですよ。でも、ほかの人間は外から花を添えたり色を加えたりできる。自分のバンドもそういう作り方をしたいなって思った」

Gotchの2014年のライヴ・アルバム『Live in Tokyo Tour "Can't Be Forever Young"』収録曲“A Girl in Love”

 

ーーバンドに色を加えるという点では、今回はトロントのサンドロ・ペリがミックスしています。彼の音作りのどんなところに魅力を感じていたのでしょうか?

井上「そもそもはただのファンで、サンドロ・ペリの音楽が好きなんです。彼自身の作品の作り方としては、いちばん新しいやつ(2011年作『Impossible Spaces』)は音の情報量がすごいんですけど、彼はそれをめちゃくちゃ上手に1個の箱に詰めるんですね」

サンドロ・ペリの2011年作『Impossible Spaces』収録曲“Love & Light”

 

井上「今回のアルバムを彼以外の人と一緒に作る場合、もっと生々しいものになるだろうなって気はしてたんです。でも彼に託すことで、ちょっと違うものにしてくれるんじゃないかというイメージがあった。実際もっとこんがらがってた箇所をがっつりカットしてくれたり。楽器も含め」

三船「そうなんだ」

井上「でも、もともと口を出す気は全然なかったしね。サンドロ・ペリが僕らの録った素材でどう料理するか、そうして出来上がったものをいちばん聴きたかったから。音楽的にちゃんと成り立ってるし、どこをカットしたかとかはたぶん気付けへんねん。そこがおもしろいなと思った」

三船「サンドロ・ペリは〈良くない〉って平気で言いますよね。〈ここ良くないから切ろう〉とか。でも、日本の人たちは優しい人が多いから」

井上「そうそう。できるだけ残そうとしてくれるんやけど、サンドロ・ペリは要らんところはガンガン切る」

三船「がんがんエフェクトもかけますよね」

井上「そう、かかってくる。それもまあ良いかって。一瞬〈難聴なんかな〉って思うけど(笑)」

三船「ハハハ(笑)」

井上「この人が聴いたらこうなるんやなって。そこはもう信頼かな。実際良くなってるし」

ーーサンドロ・ペリ本人の作品以外で、おもしろいなって思ったものはありますか?

井上ライアン・ドライヴァーというピアニストがやってる3人組のシルトってバンドがあるんですけど、彼らにめっちゃメロウな“Come Back to the Willow”という曲があって。僕のなかでのベストはそれかな」

シルトの2009年作『Cats Peak』収録曲“Come Back to the Willow”

 

井上「これめっちゃ良いなと思ったら、ミックスのクレジットにサンドロ・ペリってあって、〈やっぱりお前かい!〉と。この人の音に惹かれてるんだなって意識した」

三船「僕らがこの間トロントでライヴをしたとき、サンドロが対バンで出てくれたんですけど、めちゃくちゃイイ奴なんですよね。僕らがライヴを演ってるときに謎にサウンド・ガイをやってくれたり(笑)。なんかライヴ演りやすいなって思ったら、卓にサンドロがいるっていう」

 

井上「へ~、やっぱそうなんや。メールのやりとりでもイイ人っぷりが伝わってくるねんな」

三船「底抜けにナイスガイですよ。そこで彼が〈ヨウスケのミックス、やっと終わったよ〉って言ってたんですよ。〈日本語だから僕は何を歌ってるかわからないけど、違う方法論でサウンドを作るのに興奮したし、彼に会ったらよろしく言っといてくれ〉って」

井上「ほんまにー。嬉しいな。それを聞けて今日は良かったです」

三船「これを伝えなきゃと思って今日は来たんです。そのとき僕はTurntable Filmsが新作をレコーディングしてたって知らなかったから、〈へー、出るんだ〉と。それが、まさか同じハリス・ニューマンにマスタリングされて同じ時期に出るとは思わなかった(笑)」

ーーROTH BART BARONの新しいアルバムは、ほぼモントリオールでの録音なんですよ。

井上「どこが日本といちばん違いました?」

三船「サンドロがばっさりカットするのと同じで、向こうのミュージシャンやエンジニアは曲を聴いたときの自分の直感をすごく大事にするんですよ。だから、一緒に仕事してると曲がとんでもないほうに向かうことが平然と起きるんです。日本の場合だと、原型を瓦解させないように曲を整えてブラッシュアップしつつクリアまで持っていく、みたいな感じですけど、向こうだと突拍子もない方向に行く可能性がありつつ、上手くいけばK点越えを叩き出すかもしれない、その挑戦を厭わないんです」

井上「オーヴァー・プロデュースにもなり得るけど、思ってもいないおもしろい形に変化していくこともある」

三船「音楽的なことを含めて2を言えば10くらいわかってくれるから、僕や井上さんはやりやすいと思いますよ。失敗を恐れないところや、あんまりお金の話にならずにクリエイティヴィティーに徹しているところは、やってて気持ち良いですね」

井上「なるほど。そういうことを知れるのはおもしろいね」

ROTH BART BARONの2015年作『ATOM』のレコーディング・ドキュメンタリー映像〈STUDIO TOUR〉。こちらも360度のパノラマヴュー対応

 

ーー最後にバンドの組織論について教えてください。というのも2~3人という最小単位のバンドでありつつ、信頼できるパーマネントなサポート・メンバーがいて、全員で録音からライヴまでしているっていう点で両バンドは共通していると思うんです。

井上「ロットはずっと2人なの? 2人だけでやろうってなったのか、それとも趣味の合う人がひとりしかおれへんかったのか(笑)」

三船「僕と中原(鉄也)は中学校の同級生で、テニスのペアだったんです。僕が前衛で中原(鉄也)が後衛、いまだにその感じですね。それから再会して〈音楽やろう〉と遊びでやってるうちに、バンドになっていった感じです。いまはサポートあわせて5人です」

井上「わしらもいま5人や」

三船「そっか」

井上「でも、もうチームじゃない? なんかね、メンバーは3人ですけど、僕はもう5人のバンドっていうふうに思ってるんです。じゃあなんでメンバーに迎え入れないのかっていうのは、面倒臭いからってだけ。改めてプロフィールを足したりとかね。〈いろいろ手間かかるし、いまの状態でええんやったらこれでええやん〉って言うとダメ男の付き合い方みたいやけど、間違いなく5人のチームやなとは思ってる」

三船「そうですね。いちばんの理想は、ウィルコの話に戻っちゃいますけど、いまのウィルコのメンバーってジェフが作る曲を勝手に演奏しているだけなんですよ。自分も将来的にはバンドのクオリティーをそこに持って行きたいんです。だからゲストという感じで譜面見ながらプレイするなら同じステージに立ってほしくないと思ってる。〈自分はトランペットだから他のことはやりません〉みたいな感じだと、一緒に音楽は作れない。このバンドに我慢強く付き合ってくれる、いまはそういうふうにやれる人と一緒にやってますね」

井上「なるほど。えーと、そうですね。僕はもっと軽い感じで言ってたんですけど(笑)」

一同(笑)

井上「もし〈これは弾けません〉となっても、〈なんとかひねり出していこうぜ〉って感じ。それぞれの良いところを取っていくというか。その人の良さを注入してもらってる」

三船「やっぱりひとりだと自分の予想を超えていかないんですよね。自分で自分を裏切らなきゃいけない局面っていうのはなかなか難しいから」

井上「人とやるのはそこが魅力ですよね。昔は自分のやりたいこと=バンドでやりたいことやったけど、いまはそのふたつが少し離れてるというのはあるかな。それを楽しめるようになったんです」

Turntable Filmsの2014年のライヴ映像。新作の録音に携わった6人編成でのパフォーマンス

 

★Tutntable Filmsの地元京都で両者の対バンが決定!

ROTH BART BARON TOUR 2015-2016 〈ATOM〉
日時/会場:2015年11月20日(日)/京都 UrBANGUILD
開場/開演:19:00/19:30
出演:Turntable Films / ROTH BART BARON / Awesome City Club
チケット:¥2,500(1D別)
チケット予約は、京都UrBANGUILDにて受付中。

 

★『Small Town Talk』発売記念 インストアライブ&特典会

●タワーレコード京都店
インストアライブ&特典会
開催日時 :2015年12月13日(土)13:00~
場所:タワーレコード京都店 イヴェントスペース
参加方法:観覧フリー
特典会:タワーレコード京都店にて『Small Town Talk』をお買い上げいただいた方全員へCDにサインいたします。

●タワーレコード渋谷店
インストアライヴ&特典会
開催日時 :2015年12月26日(土)21:15~
場所:タワーレコード渋谷店 4Fイヴェントスペース
参加方法:観覧フリー
特典会:ご予約者優先で、タワーレコード渋谷店、新宿店、池袋店にて『Small Town Talk』をお買い上げいただいた方に、先着で〈イヴェント特典引換券〉を1枚差し上げます。イヴェント特典引換券は12月26日(土)インストア終了後にイヴェント会場オリジナル・ステッカーとお引換いたします。


●タワーレコード梅田NU茶屋町店
インストアライヴ&特典会
開催日時 :2016年1月10日(日)13:00~
場所:タワーレコード梅田NU茶屋町店 イヴェントスペース
参加方法:観覧フリー
特典会:ご予約者優先で、タワーレコード梅田NU茶屋町店、梅田大阪マルビル店、難波店、あべのHoop店にて『Small Town Talk』をお買い上げいただいた方に、先着で〈イヴェント特典引換券〉を1枚差し上げます。イヴェント特典引換券は1月10日(日)インストア終了後にイヴェント会場オリジナル・ステッカーとお引換いたします。

各インストア・イヴェントの詳細はTurntable Filmsのオフィシャルサイトへ