USオルタナ界の帝王ことスワンズの復活後2作目のアルバム『To Be Kind』の日本盤が、いよいよ本日5月2日にショップに入荷! 今回は、この機会に乗じてバンドの中心人物であるマイケル・ギラがスワンズの復活前にメイン・プロジェクトとしていたバンド、エンジェルス・オブ・ライトの音源を、個人的な所感も交えてサクっと紹介していきたいと思います。

スワンズの存在を知った学生の頃(90年代末)、バンドはすでに活動休止期間に入っていて、「いまの彼らは何をやっているんだろう?」との疑問から辿り着いたのがエンジェルス・オブ・ライトでした。エンジェルスの音には一貫してスワンズのようなラウドさやへヴィーさといった表面的な攻撃性は見られないものの、ゴリゴリのジャンク・ロックに徐々に〈歌心〉が浸透し、最後にはすべてが混然一体となってスケールの大きな世界観を打ち建てたスワンズの歴史を踏まえてこそ染み渡るような……そんな滋味に溢れた音楽性が大きな魅力でした。アラン・ロマックスハリー・スミスの名前さえ浮かぶ現代のフォークロアとしてのフォーク・ミュージック、とでも呼びたくなるような。

チェロやヴァイオリン奏者を含む多くのミュージシャンが参加した99年発表のファースト・アルバム『New Mother』は、エンジェルス流のチェンバー・ポップといった趣きのある名盤。多種多様なアコースティック楽器が繊細に折り重なっていく冒頭の“Praise Your Name”がまず相当な名曲で、タイトルが連呼される荘厳なコーラス部分を歌詞の意味も分からずによく口ずさんでた記憶があります(ダメな学生だな……)。

 

続く2001年作『How I Loved You』でも楽曲志向は変わらず、むしろギラが「これらはすべてラヴソングだ」と語ったことからも分かるように、より普遍的な方向へ開かれたことで当時のレヴューでニック・ケイヴレナード・コーエンも引き合いに出されるほどクラシカルなシンガー・ソングライター然とした楽曲が並びました。8分に渡って展開するオープニング・トラック“Evangeline”がまた秀逸で、クレッシュンドで唄われるコーラスのリフレインがエンジェルスならではのカタルシスを感じさせます。

 

そんな前2作の反動からか、2003年リリースのサード・アルバム『Everything Is Good Here/Please Come Home』では風景が一変。スワンズほど振れ幅の広くないエンジェルスのディスコグラフィーにおいて、最もエクスペリメンタルかつ不穏な空気の作品となっています。スワンズの呪術的なミニマリズムを、エンジェルスの特徴であるアコースティック楽器をメインとした編成で鳴らしてみせたようなアルバムと言えるかも。ギラが見い出した秘蔵っ子、デヴェンドラ・ヴァンハートが参加しているのも大きなポイント。

 

僕が彼らの作品中最も好きなアルバムのうちの一枚が、次の2005年作『The Angels Of Light Sing “Other People”』。この作品が大きな転機となったのは、こちらもギラが発掘した才能、アクロン/ファミリーがこのアルバム以降エンジェルスのバックを務めることになったから。バンドのサウンドもグッと若返って、アクロンの作品(のなかでも特にリリカルなファースト・アルバム)をバックにギラが唄っているような幸福な師弟関係=コラボ感にホクホクしちゃいます。ちなみに両者によるスプリット・アルバムが同年にリリースされますが、個人的なアクロンのベストはその共演盤だったり。

 

そんな〈Other People〉と甲乙付け難いのが、ラスト・アルバムとなった2007年作『We Are Him』。ここでのアクロンはスワンズ流のミニマリズムを模倣するようなサウンドを鳴らしていて、とはいえ若さゆえのタイトなグルーヴが際立つ全作品中で最もフレッシュかつロックな一枚と言えるでしょう。ギラが目を細める姿が目に浮かびます(妄想ですが)。スワンズ『White Light From The Mouth Of Infinity』などのアートワークを手掛けたデリク・トーマスによるジャケットも素晴らしいですね。

ということで、早足……のつもりがけっこうなヴォリュームになってしまいましたが、エンジェルス・オブ・ライトのアルバムを振り返ってみました。ぜひスワンズの新作と合わせてチェックしてみてください!