格好つけるのをやめて、ただ、目の前の状況を受け容れよう――言葉も演奏も〈裸身〉をさらけ出した結果、これまで以上のヒューマニティーで迫る〈5人だからこその音〉が完成!

 「忙しくなれば忙しくなるほどお金がなくなる(笑)。音楽を続ける――いまはその一歩目を踏み出しているような感じがしていて。音楽でまだそんなにお金を生んでいないけど、その道を歩いていかなきゃいけないし、ライヴを観に来てくれる人たちからもそうあってほしいと思われているなっていうのがわかるんですよね。今回のアルバムは、そんなことも噛み締めながら曲を書きました」(ヒラオコジョー、ヴォーカル/ギター:以下同)。

ヒラオコジョー・ザ・グループサウンズ 裸身盤 イノベーター(2015)

 2013年秋に『B.C.Eのコンポジション』、昨年暮れに『OU-TOTSU』とコンスタントに作品を発表し、精力的なライヴ活動のほうもレスポンスは上々。ヒラオコジョー・ザ・グループサウンズが織り成す、甘酸っぱくて、切なくて、あったかくて、人懐っこいその歌は、じんわりとではあるけれど、確実に届いているようだ。そんななかで編まれた新しいミニ・アルバム『裸身盤』は、活き活きとしたビートに乗っかった“生瞬”という曲で幕を開ける。

 「いままで速い曲がなかったわけじゃないんですけど、スタジオで合わせる段階であまり消化しきれなかったんです。でも、“生瞬”は何事もなかったかのように曲が出来上がっていって、〈これは何だろうな?〉って。アルバムを作るにあたって、〈悲しいけど笑っていこうよ〉みたいな、いままではなんとなくそういうものを作ろうと思っていたところもあるんですけど、今回はそうじゃなくて、〈ただその状況を受け容れようぜ〉みたいな、そういうモードに自分がなっていたのもあったんじゃないかと思います。なんか、格好つけて格好良い人、格好つけて格好悪くなる人、何もかもさらけ出して格好良い人、いろいろいるよねって話をメンバーとしてて、で、僕らは格好つけても格好良くならない。じゃあ、格好つけるのやめてダサい部分もさらけ出したほうがイイんじゃないかなっていうところで、そういうのを音とかにも詰め込めたと思いますね、今回は」。

 情熱が力強く瞬く“生瞬”を筆頭に、成就できなかった十代の恋に思いを馳せる“恋花火”、「レコーディング中に鳥肌が立った回数がいちばん多かった」というセンティメンタルなラヴソング“最後のバス”、ハートフルな人生応援歌“遠い未来と近い将来”、青春エレキ歌謡風味の情緒的なナンバー“あの日とあの人”、支えてくれる人やファンに対する感謝を込めたロックンロール・チューン“流れ星たち”――今作もソングライティングを一手に引き受けるヒラオコジョーのメロウ・マインドが惜しみなく放たれていると共に、それを巧みにキャッチした演奏で盛り立てるメンバーたちの役者っぷりにも心躍らされる。歌詞のフィーリングもさることながら、5人のメンバーのチームワークからも、これまでに増して〈人間臭さ〉が溢れ出している印象だ。

 「メンバーはみんな、歌詞が好きなんですよ。みんな熟読してアレンジを考えてくれる。歌詞を送らずにデモを送ったりすると、〈歌詞を送ってくれ〉ってすぐ言われるぐらい僕の歌詞が好きなんですよね。だから、5人で作ってるっていう感覚が強い。そもそも、僕より歌が上手い人はたくさんいるし、他のメンバーよりも演奏の上手いやつなんて死ぬほどいるし、誰もすごくないんですよ。そういう部分もさらけ出して、〈裸身〉になっちゃってもいいと思うんですよね。だって、この5人だからこそ出せる音があるっていうのはわかってるわけだから」。