今年は初のフェス出演など精力的な活動が目立つ米津玄師の3作目は、そんな動きがそのまま音楽になった外向的な作品。マムフォード・ジャム的なリズムが広大なスケール感を放つ“アンビリーバーズ”や、ヒップホップ風の気怠く太いビートが印象的な“Undercover”をはじめ、打ち込みとさまざまな生楽器を取り入れたサウンドはさらに洗練され、シンプルながら巧妙かつ多彩に。それを米津節とも言える人懐っこいメロディーでまとめ上げ、知的で高品質なポップスとして成立させている。自身が抱える闇を歌いつつ、リスナーを光へと導く表現が多い詞も頼もしく、音との相性も良い。タイトルが想起させる理想郷的な音楽というよりも、非常に冷静で現実的。現代を生きる人間としての強さに満ちている。