レペゼン〈ゆとり教育〉、平成生まれの総勢8人の男たちから成るジャズ/生ヒップホップ・チーム、SANABAGUN.がメジャー・デビューを果たした。アルバム・タイトルは、その名も『メジャー』。ジャズ・ヴォーカリストとして活動していた高岩遼が、2012年11月に代官山Loopで行われた椎名純平のステージにオープニング・アクトとして出演し、ヒップホップ・サイドのアプローチを押し出したライヴを披露した際のメンバーがSANABAGUN.の前身となった。「ガキの頃から自分は黒人だと思っていたんです(笑)」と言う高岩が、ベーシックなジャズ以外の表現を求めるのは至極自然だった。髙橋紘一いわく、「まるで『ONE PIECE』のようにひとりずつ出会っていった、それぞれがフロントマンとしての存在感がある」という8人が集結したのが、2013年初頭。それからほどなくして、SANABAGUN.は渋谷の路上でストリート・ライヴを行うようになり、不敵かつ巧妙なプレイとパフォーマンスをもって道行く人々をオーディエンスにし、チップと手売りの作品で耳目と金を集めていった。

 偉大なジャズマンたちが残してきた敬愛する名フレーズを引用し、ジャズ以外のブラック・ミュージックも消化したオーセンティックなグルーヴを一切漂白せず、セッション性の高い方法論をもって現代に鳴るべき生のヒップホップへと昇華する。音源でもライヴでも〈ハードボイルド〉と〈ユーモア〉を絶妙な緊張と緩和の装置として機能させるから、やたらクセになる。ポピュラリティーを掴むために何も時代の潮流と寝る必要はない。最初からこの音楽は大衆に向かって放つことを想定していたし、メジャー・レーベルとサインを交わすのも彼らにとって想定内の未来だったという。

「俺たちが思い描いているのは、いつかNFLのハーフタイム・ショウでライヴをすることなので。そういう未来を描いているからには、より大衆を巻き込む音楽であるべきだと思ってます。俺たちは〈ストリートから成り上がってきた〉〈ジャズを愛してる〉〈これがリアルなヒップホップだ〉って言ってるけど、忘れちゃいけないのは、それを自分たちで客観視することなんですよね。そうじゃないとすごくダサい曲やパフォーマンスになってしまう。ヘイター的な視点の歌詞も多いですけど、俺も(岩間)俊樹もリアルに思ってることを客観的に話すようなスタンスを意識しているんです。それは、6人の楽器陣のプレイにおいても言えることで。それが緊張感とユーモアの肝になっているのかなと」(高岩)。

SANABAGUN. メジャー CONNECTONE(2015)

『メジャー』は、レコーディング環境こそ豪奢になったが、メジャー・デビュー作だからといって制作における意識の変化は皆無だったという。つまり、本作はインディー流通や路上限定でリリースしてきた作品群と地続きにあるもので、あくまで現在進行形のSANABAGUN.を凝縮した全9発の弾丸というわけだ。

「メジャーに寄せた曲を作ってほしいと言われてもできないんですよ(笑)。どうしたってSANABAGUN.独自の曲になる。世間に擦り寄ってしまったら、俺たちがメジャーでやる意味はないと思うんですよね」(髙橋)。

「世間には擦り寄らないけど、SANABAGUN.の音とパフォーマンスに触れたお客は必ず満足させるという自負がありますから。メンバーは全員コミュニケーション能力が高いし、音楽だけではなく映画やファッションも含めてさまざまなカルチャーへの興味も持っている。そういうマインドもこれからしっかり提示していきたいと思ってます」(高岩)。

 この7月には、高岩と髙橋を中心に「不良たちによる音楽だけに頼らない劇団」(高岩)を標榜するSWINGERZも結成。高岩がヴォーカルを務めるロックンロール・バンド、The Throttleを含めた各方面の同行にも注目しておいたほうがよさそうだ。

 

SANABAGUN.


高岩遼(ヴォーカル)、岩間俊樹(MC)、髙橋紘一(トランペット)、谷本大河(サックス)、隅垣元佐(ギター)、櫻打泰平(キーボード)、小杉隼太(ベース)、澤村一平(ドラムス)から成る8人組のクルー。2013年の結成以降、東京・渋谷周辺の路上でストリート・ライヴを重ねて知名度を上げ、2014年にはファースト・アルバム『Son of a Gun』を上梓する。そうした動きと並行して、メンバーはそれぞれSuchmos、The Throttle、SWINGERZといった別プロジェクトでも活動の範囲を広げていき、2015年8月にはCONNECTONEとの契約を発表。このたびメジャー・デビュー作となるニュー・アルバム『メジャー』(CONNECTONE)をリリースしたばかり。