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~互いのバンドのミュージック・ビデオを鑑賞しながらトーク・セッション~

avengers in sci-fi “Citizen Song”

斎藤「これは〈Unknown Tokyo〉の1回目(2015年2月に新宿LOFTで開催)ですか?」

木幡「『Unknown Tokyo Blues』(2014年)というアルバムのリリース前に、告知とプロモーションも兼ねた無料ライヴをやって、その時の映像」

――(イントロが)ツェッペリンだ(笑)。

斎藤「(50秒頃)いまのピロピロという音はライヴで使ってます? それとも流してます?」

木幡「これは弾いてる」

斎藤「弾いてるんですか! 太郎さんはカオス(パッド)で?」

木幡「ピッチシフターディレイ(PS-3)。これは昔のエフェクターなので中古じゃないと手に入らない。BOSSから出ているものです」

斎藤「微妙にギターにダブル・エコーのようなものがかかっているのも、ライヴ中使っていますか?」

木幡「LINE6のシンセ系の音」

(じっくりと鑑賞)

斎藤「この曲は音の種類というか、使っている楽器が少ない?」

木幡「そうだね」

斎藤「(3分20秒頃)いまのところは、ライヴではキーボードで音程を取ってるんですか? キーボードで弾きながら、ヴォコーダー・パートを……?」

木幡「ヴォーカル? あれはたぶんオートチューンで、TC-Heliconのやつ」

斎藤「しかしカッコイイ曲ですよね……」

――太郎さんが曲中でこだわったポイントは?

木幡「なんだったかなあ。もともとツェッペリンへのオマージュということで、〈移民の歌〉のリフを丸々使っているんですが」

――人力サンプリング的な。

木幡「〈ケミカル・ブラザーズあたりがツェッペリンをサンプリングして曲を作ったら〉、みたいなイメージで作った曲で。ギターを弾き倒しているほうではあるんですが、これはプレイというよりかはサンプリング素材に近いイメージです。エレクトロニックな要素と、ツェッペリンみたいなレトロというかクラシカルな要素のバランス感。機械的な要素と人間的な要素の融合という」

 
Yasei Collective “radiotooth”

木幡「(50秒頃)ここはエレハモ(エレクトロ・ハーモニクス)?」

斎藤「そうですね」

木幡「ギターの音色自体は変えてないの?」

斎藤「変えてないです。Sonuusというメーカーのギター用MIDIコンバーターを付けて、そこからMIDIの信号で音程を送っています」

木幡「エレハモにMIDIは入るの?」

斎藤「入ります。なのでキーボードでもできるんです」

木幡「曲の前半・後半でシンセ・ベースが生のベースになるってカッコイイよね」

斎藤
「そうなんですよね」

――ところで、ヴォコーダーに関してこだわりはあるんですか?

斎藤「いま使っているものはわりとちょうどいいです。みんなが使っているような、ヴォコーダーらしいヴォコーダーの音でもなく、ちょっと独特の音がするところが好きで使っています。それと、ギターで動かせるヴォコーダーはそんなにないので、これかなと思って使っています」

――木幡さんはいかがですか?

木幡「僕も同じくです。ギターで動かせるヴォコーダーでこんなにコンパクトなものは限られているので、消去法的にそこへ辿り着きました。ギターの音色を変えるとヴォコーダーも変わったりするんですが、そういったいまはしていない使い方も、今後はやってみようかなと思いますね」

斎藤「太郎さんはTC-Heliconのどれを使っていますか?」

木幡
「〈シンセ〉という、紫色のやつ」

斎藤「ヴォイス・ボックスは何に使ってるんでしたっけ?」

木幡「ヴォイス・ボックスは、それこそ宅録みたいな使い方をする時に」

斎藤「なるほど」

木幡「ヴォイス・ボックスはエフェクターも一応通ってるから、エフェクターを変えれば、また歪んだりもする。……ヴォコーダーはほぼあれしかないもんね」

斎藤「そうですね」

木幡「TC-Heliconも一応できるんだけど、本当に数が限られているので。エレハモが潰れたら僕らは失業ですよ(笑)」

斎藤「困っちゃいますよね(笑)」

木幡「機材への依存ってあるよね……たまに怖くならない(笑)?」

斎藤「そうなんですよね」

木幡「突然廃盤になったりもするので、ツアー中に壊れたらどうすんだと(笑)」

――こういった話を共有できたり、あるいは最近気になるプレイヤーはいますか?

木幡「有名な人でも良ければ、セイント・ヴィンセント。去年くらいから聴きはじめたんですけど、あの人のファズがすごくて。ファズの音作りに命を懸けてるみたいな、結構変態ですよね(笑)。曲を聴くというよりかはむしろファズの音色を聴いています。自分と若干近いものは感じていますね」

セイント・ヴィンセントの2014年作『St. Vincent』収録曲“Birth In Reverse ”


――斎藤さんはいかがでしょう?


斎藤
「こういう話は本当に太郎さん以外とはできないです(笑)。僕も同じく有名どころを挙げると、ジェイムズ・ブレイクのギタリスト(エアヘッド)。彼も、ギターをちょっとヘンな音で弾きつつ、サンプラーも叩いたりしていて――なんか〈俺が最初にやってたんだぞ〉みたいな気持ちで見ています(笑)」

エアヘッドが参加しているジェイムズ・ブレイクの2015年のライヴ映像

 

――ハハハ(笑)。ではお互いに、気持ちを共有できる日本国内で数少ない仲間だと。

木幡「エフェクターを使う人がまず、あまりいないよね。派手な使い方をする人もいないし」

斎藤「ギタリストの人はギター本体やアンプはすごく好きですけど、僕にとってそれはそこまで重要なファクターではなくて、〈どれを使えばヘンな音が出るのか〉をどうしても考えてしまう。そこがちょっと違うところですね」

木幡「そのヘンな音を出すのに、ヴィンテージ・ギターはいらないよね(笑)」

一同「ハハハハハ(笑)」

木幡「アンプにこだわったところで、あれはアンプから出てないでしょ?」

斎藤「一応アンプから出していますけど、ギター・アンプでは出していないですね」

木幡「ギター・アンプじゃないんだ」

斎藤「最近はアクティヴ・スピーカーで出しています。ちょっと前はキーボード・アンプで出していて。でもやっぱりギターの音はギター・アンプで出したほうがいいなというのは最終的な結論です」

――その理由は?


斎藤「ギター・シンセや普通のギター以外の音は、アクティヴ・スピーカーが理想です。ギター・アンプじゃなくて、ライン系のスピーカーで出すのが一番気持ちいい。純粋なギターの音色は、本当はギター・アンプで出すのが気持ちいいんですが、回線やそのあたりの利便性を考えると、現状はシンセ系の音が多いので、アクティヴですべて出しているんです。アベンズはそのあたりすごくこだわってますよね? ギター・アンプを一人2、3台使っていたような」

木幡「昔は使っていたけど、最近はファズをラインへ直で送るのが好きです。シンセ系の音もそうだけど、ギター・アンプで出すと曇ってしまうというか、いわゆるギターの空気感になってしまう。飛び道具じゃないけど、ちょっと違った質感を出したいと思ったら、アクティヴ・スピーカーのほうがギターみたいなクセが出ないし、ギターと距離感が変わるので、おもしろい音になりますね」

――アベンズが先駆けとなって、ヤセイも追随して……こういったプレイヤーがもっと増えていくとおもしろいですね。

木幡「俺が先駆けというのも……なんだかおこがましい話です。海外のバンドのフェス映像を見ると、〈この音はギターで出してたんだ〉という意外なものがあったりしますよね。ベーシックなバンドでも、思っているより実験的だったりだとか。日本だとギターはギターで音を出すという感覚が強いのかなという気がします。あまり実験的なプレイが受け入れられないのかもしれません。海外だとそもそもの前提が日本と違うというか、ギタリストがエフェクターを使ってヘンな音を出すのがある程度までは普通で、大きなフェスにもそういったバンドが出ていたりします。日本のギタリストは少し古典的というか、保守的な人が多いイメージはありますね」

――ギタリスト信仰のようなものは根強いのかもしれないですね。


木幡「ライヴハウスのレヴェルだといるんだと思うんです。フェスも規模が大きくなっていったり、オーヴァーグラウンドになってくると淘汰されてしまう」

――ギターもある種の道具だとポジティヴな意味で捉えて、そこからより自由でクリエイティヴな発想をする、という考え方が広がってもおかしくないですよね。

斎藤「そうですね」

木幡「本当はそうあって然るべきで、これが普通なんだという意識でやってはいます。最近はそうでもなくなってきましたが、以前はオリジナルの曲を作るんだったら何か個性的なことをしなきゃいけないという考えに囚われていたところはありました。でもやっぱりギターは歪ませてソロを弾いたほうが気持ちいいですからね(笑)」

――でも、そうやってある程度自分のスタイルを確立したからこそ、一周してツェッペリンをやってもいいかと(笑)。

木幡「そうですね」

斎藤「もうちょっとみんな実験的に、いろいろ試していってもいいんじゃないかなと思います。僕みたいにアンプ・シミュレーターで作ったギターの音をアクティヴ・スピーカーから出して、それをマイクで拾うなんて人は全然いない。近年の傾向として、アンプ・シミュレーターを使うギタリストが増えてきているのに、それをやっている人がいないんです。ギター・アンプで出すのとアクティヴ・スピーカーで出すのとではどちらがいい音かというのはまた別の話ですが、アンプ・シミュレーターをライヴで使うなら、自分のアクティヴ・スピーカーを持つ人が増えてきてもおかしくないはずなのになぁと僕は思います。みんなもう少し考え方を変えてみたり、いろいろ試したりしてみれば、おもしろいバンドや新しい音楽ももっと生まれてくるんじゃないかな」

――これからはヤセイがお手本というか、体現することでその道を示していく存在になってほしいですね。


斎藤「でも……あまりわかってもらえないんですよね。ギターじゃない音でメロディーを弾いていても、聴いただけだとギターで弾いた音だとわかってもらえないんです。以前、『Conditioner』(2013年)というミニ・アルバムを出した時に、全部ギター・シンセの音でメロディーを弾いてたんですが、雑誌に載ったディスク・レヴューではやっぱりギター・シンセの音だとわかってもらえていなくて(笑)」

一同「ハハハハハ(笑)」

斎藤「一言も触れられていなくて(笑)。まあそうだよな……と思いつつ」

――うーん……難しい(笑)。まあそこはYouTubeの時代でもあるし、映像などでアピールをするということで。

斎藤「とにかく観てもらわないと(笑)」

 

Yasei Collectiveニュー・シングル“radiotooth” リリース・パーティー

日程:2016年1月30日(土)
会場:東京・代官山UNIT
開場/開演:16:30/17:00
チケット:前売3,000円/当日4,000円
ライヴ:Yasei Collective/FULLAROMOR
DJ:社長SOIL & "PIMP" SESSIONS)、仰木亮彦在日ファンク
オープニング・アクト:沖メイZa FeeDo
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