BENI
時が経ってもずっと側にいて、いつでも飾らずにいられる、友達のような歌

 10周年を記念した昨年のベスト盤『BEST All Singles & Cover Hits』をひとつの区切りにして、彼女は明らかに変化してきたように思えます。今年8月にリリースされたシングル“フォエバ”でBENIが歌ったのは、極めてシンプルな親愛と絆の形でした。チャック・ハーモニークロード・ケリー(とエラ・エア!)の共作による素直なメロディーも、馴染みのUTAによる〈恋はあせらず〉風の朗らかなアレンジも彼女自信の発する言葉をストレートに後押しするものでしたし、何より変わらぬ輝きを年齢相応のエレガンスで包み込んだ歌唱の華やかな品格は、歌い手として、表現者として、次のステップへと歩を進める姿を映し出しているようにも思えたのです。

BENI Undress ユニバーサル(2015)

 そんな予感が思い過ごしじゃなかったことは、今回リリースされたニュー・アルバム『Undress』に溢れる色とりどりの感情からも伝わってきます。アトモスフェリックなサウンドに決然とした意志を浮かべる“DO IT RIGHT”(彼女とUTAの共作)、話しかけるような歌声と揺らぎの意匠が心地良いmabanuaとの“DEEP SWEET EASY”、これまたUTAとの“BABY”などR&Bテイストに染まった楽曲のしなやかさは、現在の充実ぶりをさらけ出したかのよう。他にもTHE LOWBROWSの仕立てた躍動感と詞のギャップをハウシーに響かせる“SAYONARA”など、同性(異性も)が経験する多様なシチュエーションを描くことで、“フォエバ”で見せた懐深い人間味をさまざまに提示しているのです。素敵な大人になったBENIの歌は、きっと今後もあなたの側にいることでしょう。 *出嶌孝次

 


【特集】大人の時間と彼女の声
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