前回、ラテン(の国々)とメタルについて書いていてふと思い出した名前がありまして…ROY Zさんのことです。ROY Zと言えば90年代、鬱々たるシアトルの轟音PANTERA以降の新しいメタルに押されて道を失いかけた大御所達(BRUCE DICKINSONROB HALFORD)に「あなた達は迷わず王道を歩めば良いのです」という教えを説いたプロデューサーとしての功績がまず思い浮かぶところですが、いちミュージシャン、ギタリストとしてかつて率いたTRIBE OF GYPSIESというバンドのユニークな音楽についてはあまり語られないなぁ、なんてことをつらつら考えてしまったのです。

ROY Z自身はメキシコ系の米国人でありまして、TRIBE OF GYPSIESというバンドはラテンのリズムをロック(もっと絞り込んで言えばブルース・ロック)と融合させた独特なサウンドを聴かせる人達でした。BRUCE DICKINSONのソロ(94年の『Balls To Picasso』)にバンドが丸ごと演奏で参加したことが話題となったため、どうしてもメタル界隈で取り沙汰されることが多かったのですが、TRIBE OF GYPSIES自体はもっと広い層に聴かれて然るべきだったと思います。ちょっとタイムリーなところでいえば…

羽生結弦選手がこのアレンジで演技したとしたら…などという妄想はともかく、元曲への愛情に溢れつつ、物凄くオリジナリティーに溢れた解釈ではありませんか。終盤、我慢出来ずに踊り始めてしまうリズムにどうしようもないラテンの血脈を感じてしまうのは僕だけではありますまい。

ブルース・ロックと書いた手前もう1曲カバーを…

言わずと知れたFLEETWOOD MACです。サンバ・ホイッスルを鳴らさなかったのはROY Zのロックに対する拘りだったのでしょうか? PETER GREENへの憧憬という共通点から、後にGARY MOOREをカバーするに至ったのも当然でありましょう。それにしても、このカバーはカッコ良すぎますね。

最後にオリジナルをもう1曲。僕がこのバンドで一番好きな曲は情熱のラテン・テイストではなく、やや厭世的なサイケデリアです。

ぱっと3曲並べただけで、ROY Zの才気は充分に感じていただけると思います。この人をメタルのプロデューサーとしてしか評価出来ないのは余りにも惜しい。願わくば現役ミュージシャンとしての活動を強く望みたいものです。それにはメタルの外に居る聴き手の方々に興味を持っていただくことが要件のような気がして、本日のエントリーと相成りました。

関連する固有名詞がばんばん羅列される辺り、幾らか僕らしい作文になってきました。それぞれについての説明を省略してしまう不親切について、何卒ご容赦ください。