沖縄育ちの18歳のブルースがいま、瑞々しいロック・サウンドとして大きく解き放たれる!

 18歳といえば表情にまだあどけなさも残る年頃だが、彼女が歌う歌とその声は、聴き手の胸を熱くさせるほど逞しく、凛々しく、ナチュラルで、豊潤。彼女の名前はAnly(アンリィ)。沖縄本島から船で30分ほどの場所にある伊江島で生まれ育ったシンガー・ソングライターだ。人口4,000人ほどの小さな島にはもちろんCDショップもなく、つい最近までは自宅にインターネット環境もなかったという限られた情報量のなか、彼女は音楽に愛情を注いでいった。

 「父が音楽が好きで、本島に出かけたときに買ってきたCDを自分も聴いていました。エリック・クラプトンZZトップCCR……なんの違和感もなく、小さい頃は、〈これがいまの音楽なのかな〉って思いながら。その影響でブルースとかロックが好きになり、6歳のときにギターを買ってもらったんです。小さい頃から歌手になりたいなって思っていたんですけど、イメージしていたのは、マイクを握って歌う歌手。でも、そこにギターがきたんですね。弾けるようになった小学3年生ぐらいのときから、ギターが〈自分を歌わせてくれるもの〉になっていました。中学2年の頃から、歌詞を書いてメロディーを付ける、っていう練習を黙々とやりはじめたんですけど、そのうちに〈いつかこの曲を誰かに聴かせてみたいな〉っていう気持ちが高まっていって。歌詞は主に、自分自身のなかでの葛藤や夢みたいなものをテーマにして書いていましたね」。

Anly 太陽に笑え ソニー(2015)

 本島の高校に進学してから、那覇のライヴハウスやストリートなどで弾き語りを始めたAnly。そのパフォーマンスが日に日に評判を集め、昨年6月に沖縄で行われたmiwaのアコースティック・ライヴではフロント・アクトとしてステージに立つ。そして今年の夏にリリースしたシングル“Bye-Bye”を経て、このたびメジャー・デビューと相成った。その第1弾となる“太陽に笑え”には、「〈自分自身が決めた道を進んで行くぞ〉って宣言している、私にとってのテーマソング。地元のストリート・ライヴで太陽に向かって歌っているイメージです」という表題曲のほか、イギリスのシンガー・ソングライター、ガブリエル・アプリンが参加したビート・ロック・チューン“Don't give it up!”、「伊江島のことを思って作った曲」という琉球テイストのメロディーラインを忍ばせた“Come back”の3曲を収録。三者三様の形で、自身の音楽的ルーツのありかを楽曲のなかに落とし込んでいる。

 「小さい頃から触れてきたものが自然とメロディーに出ますね。“太陽に笑え”でも、なんとなくブルー・ノート・スケールになっているところがあったりとか。“Come back”は、聴いてくださった方々から〈沖縄の雰囲気があるメロディーですね〉ってよく言われるんですけど、自分では意識していなくて。生まれてから自然に触れてきたものですし、実際に沖縄の人からは〈沖縄っぽい曲〉とは言われないので、おもしろい感想だなあって思いました」。

 また、Anlyの楽曲をよりエンターテインさせているのが、“Bye-Bye”のときからトライしてきたバンドでのセッション・レコーディング。“太陽に笑え”でもサウンド・プロデューサーの根岸孝旨らを中心としたバンドと共に、楽曲にさらなる熱量を注ぎ込んでいる。

「自分がひとりでやっていた楽曲に、いろんな人が咀嚼したものが乗っかってきて、それで想像以上のものが出来たときはすごく感動して、バンドって魅力あるなあって。根岸さんとも考えが合うし、楽しいですね。初めてライヴをやった日から今日まで、いろんなことが目まぐるしくありましたけど、これからまだまだ未知なことがありそうだって思えるし、たくさん音楽を聴いたり、バンドとセッションしたり、そこから違う景色がどんどん見えてくるんじゃないかなあって、自分でもすごくワクワクしてますね」。


Anly
97年生まれ、沖縄は伊江島出身のシンガー・ソングライター。高校入学後から那覇市内で弾き語りライヴを開始し、2014年にはmiwaの全国ツアー〈アコギッシモ〉の沖縄公演のフロント・アクトに起用される。2015年は一部店舗限定の『Sixteen』と初の全国流通盤“Bye-Bye”という2枚のシングルを送り出し、このたびメジャー・デビュー・シングル“太陽に笑え”(ソニー)をリリースしたばかり。