INTERVIEW

水曜日のカンパネラ、おもしろいと思うことだけ求めて驀進する3人が新ミニ作『ジパング』で見つけた新たな財宝とは?

水曜日のカンパネラ、おもしろいと思うことだけ求めて驀進する3人が新ミニ作『ジパング』で見つけた新たな財宝とは?

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マルコ・ポーロもマリー・アントワネットも桃太郎も踏み台にして、黄金の国までひとっ飛び! おもしろいと思うことだけを求めて驀進する3人が、『ジパング』で見つけた新たな財宝とは?

今回のテーマは〈チャラい〉

 〈ヤフオク!〉のCMをはじめ数々のメディアに登場し、ポップ・アイコンとしての存在感を強めている水曜日のカンパネラ。そのイメージ作りの大きな部分を担っているコムアイ(ヴォーカル)は、自分たちの置かれている状況についてこう分析する。

 「有名になったって感じはしないですね。例えば、学校で話しかけられて〈応援してます〉って言われても、サインまでは求められない(笑)。でも、仕事はどんどん楽しくなってるし、認知度が高まったおかげで、自分が届けたいことをそのまま表現できるようになってると思う」(コムアイ)。

水曜日のカンパネラ ジパング つばさレコード(2016)

 この言葉は、このたびのミニ・アルバム『ジパング』にそのまま直結するだろう。外部プロデューサーの導入という新基軸を打ち出した前作のEP『トライアスロン』を経て、今作は作詞/作曲とトラックメイクをケンモチヒデフミ(作詞では一部コムアイも)、歌唱をコムアイ、ディレクションをDir.Fという、ミニマムにして原点的な体制で制作が進められた。先行曲“シャクシャイン”はこれまでの水カンのアプローチを踏襲しながらも、その〈日本語のグルーヴ感〉が香具師や啖呵売の口上などから繋がる〈日本語の操り方〉の伝統とその最先端を感じさせる、水カン的ラップ表現のひとつの到達点として磨き上げられたモノだと思うが、“ラー”や“小野妹子”などでは以前にも増して現行のダンス・ミュージック的なサウンドに近接。作品の根本は非常にプログレッシヴで、〈これまでよりも先鋭的な水曜日のカンパネラ〉を多くの部分で提示している。今回のサウンドメイクについて、ケンモチはこう話す。

 「僕のなかで今回のテーマは〈チャラい〉って感じですね。TR-808の乾いたスネアの音だったり、急に三連で入るハイハットの打ち方だったり、クラブ・ ミュージックのトレンドを意識した〈イマっぽい音〉をしっかり採り入れようと。いまの音の感覚や作り方って、僕のような90年代から音を作ってきた人間に とっては、やっぱり違和感を感じる部分があるんですよね。でも、そこにあえて挑戦するのが今回のコンセプトで」(ケンモチ)。

 

〈おもしろいと思うもの〉しか出さない

 そういった最新のトレンドを内包するサウンドと、今回はやや意味性を強めてはいるものの、そもそもがナンセンスなリリック、表現力の高まったコムアイの声は、これまでよりも歪に噛み合っている。具体的に言えば、CMソングとして起用されながらも、高速ジャージー・クラブとでも言うべきサウンドで攻めた“ツィッギー”、エキゾティックなメロディーラインとコムアイのイノセントな歌声の組み合わせによる壮大さから一転、ベース・ミュージック的な展開に流れ込む“西玉夫”など、本作はさまざまな要素をぶつけ合って化学反応を楽しむような、実験性の高い楽曲で占められているのだ。しかし、それらのチャレンジによって生まれ出たサウンドは、これまで以上にポップな色合いを帯びている。

 「パッケージの仕方だったり、女の子が歌ってるってことで、世の中的に受け入れるのが難しい素材でも、〈ポップ〉として受け入れられる部分もあると思うんですよね。そういった部分で判断してくれるぐらい、世の中って良い意味で鈍感だし、同時に〈それが好きか嫌いか〉っていう点でシビアに判断してくれるのも、スリリングでおもしろいし、それがポップスのシーンだと思う。でも、みんなにウケることをやるつもりはまったくないんですよね。だから今回も、水カンの得意なアプローチだったり、いままでの手法に沿ったものはボツにしました。はっきり言うと“桃太郎”っぽい曲があって、それはいままでの水カンのイメージにも合ってるし、ファンに受け入れられるであろう〈良い曲〉だったんですね。でも、一回やったこと、成功したものを再生産するのは、私にとって全然喜びではない。だから、めっちゃ良い曲だし、売れそうだけど……残念!って(笑)。結局〈いまおもしろいと思ってるものを出したい〉としか思ってないんですよね」(コムアイ)。

 その意味でこれから先の水カンの展開も、リスナー側が予想のできない「着替えるように新しい音楽を作る」(コムアイ)スタイルを貫くことになりそうだ。

 「水カンは乗り合いバスだと思うんですよね。僕は音楽が作りたい、コムアイは有名になって(自己)表現がしたい、Dir.Fはこれまでになかったおもしろいものを世の中に届けたい――そういういろんな思惑の元に集まって、それぞれの夢をめざしてる乗り合いバス。いまはそのバスのスピードが、乗ってる人を振り落とすし、バンバン人を撥ねるぐらいの暴走特急になってると思うんですよね(笑)。それがスリリングだし、終点に着いて解散するまではこのスピードでやっていきたいなって」(ケンモチ)。

 「いまはいろんな人が巻き込まれてるし、関わる人も多くなってるから、これから大変そうだなって。でも、私たちは人の意見は聞かないんで(笑)、これからも水曜日のカンパネラのまま行けると思いますね。この先に何が起こるかは自分たちでも想像できないけど、でも、〈自分たちがおもしろいと思うもの〉を作りたいし、それにリスナーもついてきてくれれば嬉しいですね」(コムアイ)。

 

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