エモを経由した抜群のキャッチーさを持つニューカマー! 4羽の梟が〈居場所〉を見つけたとき、新たなポップの潮流が生まれるかも!?

The Winking Owl Open Up My Heart バップ(2015)

 エモスクリーモをはじめ、2000年代以降のラウド・ロックの流れを汲むサウンドメイク、華やかさと憂いを共存させたメロディーライン、そして、英語詞をナチュラルに使いこなしながら、ポップな表現へと結び付けるヴォーカル――そんな魅力を備える4人組、The Winking Owl。今回、3曲入りのEP『Open Up My Heart』でメジャー・デビューを果たした彼らは、アメリカ留学中にエモ~パンク系のフェス〈ワープド・ツアー〉への出演経験もあるYoma(ギター)と、ルーマニアと日本にルーツを持つLuiza(ヴォーカル)によって2010年に結成。その後「前身バンドの時代からYomaさんの曲を聴いていて。最初はギタリストだったんですけどThe Winking Owlに加入するためにベースを始めました」というRanmalu(ベース)、「地元の三重でイヴェントを企画して、The Winking Owlにも出てもらったことがあります」というKenT(ドラムス)が加入し、現体制となった。「メタリカオジー・オズボーンから始まり、〈メタル〉と名の付く音楽は何でも聴いていた」(Yoma)、「もともとは宇多田ヒカルさんのようなJ-PopやR&Bが好きで。その後、エヴァネッセンスアヴリル・ラヴィーンなどを聴いてましたね」(Luiza)、「高校時代はアレサナセイオシンなどのスクリーモを聴いてました」(Ranmalu)、「入口はメロディック・パンク。中学の頃からメジャーになる前のTOTALFATGOOD4NOTHINGなどのライヴを観に行ってました」(KenT)というリスナー遍歴を持つ4人のサウンドは、US/UKのラウド・ロックを軸にした、独特のハイブリッド感覚に満ちている。

 「バンドを組んだときに考えていたのは〈洋楽的なサウンドで女性ヴォーカル〉ということくらいだったんですけどね。アメリカでやっていたことをそのまま続けたいという気持ちもありました」(Yoma)。

 「Yomaさんの作る曲は洋楽のテイストが強いし、しかもマイナー調が多い。すぐに〈歌いたい〉と思いましたね」(Luiza)。

 今回のタイトル曲“Open Up My Heart”は「疾走感があって、メロディーは爽やか。ライヴを意識して作曲しました」(Yoma)というアッパー・チューン。アグレッシヴに飛び跳ねるリズム・セクションとエッジの立ったギター・サウンド、壮大な雰囲気を感じさせるシンセのアレンジを含め、このバンドの魅力がポップに表現されている。

 「爽やかな曲調を逆手に取って、歌詞では攻撃的なところも出したかったんです。顔がこういう感じだから(笑)、ちょっと汚い言葉を使うことでギャップが出せるんじゃないかな、と」(Luiza)。

 「プロデューサーのruifade)さんを含め、ドラマーが多いレコーディング現場だったんです。ruiさんに〈いいよ〉って言ってもらうと安心できるし、自分としても満足のいくテイクが録れましたね」(KenT)。

 さらにLuizaが初めて作曲を手掛けた切ないサビが印象的なミディアム・チューン“Here For You”と、Yomaいわく「いままででいちばん暗くて重い曲。音楽的なルーツが強く出てると思います」という“Fallen Angel”を収録。〈Ozzfest Japan 2015〉をはじめ大型フェスへも出演するなど、徐々に注目度を上げているThe Winking Owl。「(現在の日本のロック・シーンには)居場所がない」と4人は語るが、ラウド・サウンドとポップネス、洋楽と邦楽を自由に行き来するような彼らの音楽は、そんなシーンに彼らの〈居場所〉――新しい流れを作り出す可能性を秘めていると思う。

「いままではライヴハウス中心の活動だったんですが、良い意味でどこにも属せない感じがあって。まだ始まったばかりですが、自分たちでシーンを作れるようにがんばっていきたいですね」(Ranmalu)。 


BACK PAGES
ここではThe Winking Owlの関連作を紹介します。ライヴ会場などでの配布音源を経て、初の全国流通盤となった4曲入りのCD作品“Deep River”(garimpeiro)をリリースしたのは2011年。2013年にはアコースティック・スタイルによるステージの好評を受けて制作されたコンセプト作『Voyage』(Baby Star)を発表し、ほぼピアノと弦楽器に絞った編成のセルフ・リメイクやフォーキーな新曲で、バンドのメロディアスな面を見せつけます。そして、2014年は5月にアスキング・アレクサンドリアイエローカードらが参加した洋楽カヴァー・コンピの第2弾『Punk Goes 90's Vol.2』(TRIPLE VISION)の日本盤にニルヴァーナ“Heart-Shaped Box”を提供すると、9月にはrui(fade)をプロデューサーに迎えたファースト・アルバム『Supernova』(garimpeiro)を上梓。エモーショナルでありながらキャッチーな歌を強化した作りは、今回のニュー・シングルにも引き継がれました。 *bounce編集部